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2884 ヨシムラHD

東証P
1,700円
前日比
-43
-2.47%
PTS
-円
業績
単位
100株
PER PBR 利回り 信用倍率
36.3 4.65 3.54
時価総額 408億円
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日清粉G

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ヨシムラフード Research Memo(3):M&Aと子会社の成長がビジネスの両輪


■事業内容

1. M&Aにおける2つのデューデリジェンス
ヨシムラ・フード・ホールディングス<2884>のビジネスモデルは、M&Aと子会社の成長の両輪で構成されている。同社は、様々な課題を抱える全国の中小食品企業を子会社化してグループを形成・拡大する。一方、持株会社としてグループ全体の戦略の立案・実行と経営管理を行うことで子会社各社の収益改善を図り、子会社のリソースをグループ全体で活用することで各社の成長を促進する。このような、中小食品企業のM&Aとその後の支援が両輪になったビジネスモデルは、他に類を見ない極めてユニークなものと言える。

M&A案件は仲介会社や地方銀行などから紹介されることが多い。最近では、複数案件をまとめた紹介や海外からの紹介が増えているもようである。案件紹介から子会社化まで通常6ヶ月程度かかる。日本の場合、中小の食品企業だと買い手が少なく割安に放置されることが多いため、買収価格が経営改善後ベースでEV/EBITDA倍率2~3倍になることもある。一方、海外ではEV/EBITDA倍率で8~10倍と比較的リーズナブルな価格になることが多い。いずれにしろ、同社の場合、事業内容や改善策、強み、優秀な人材の有無などを独自の方法で厳しく査定することで、割高な価格では買わないという姿勢を堅持している。

M&Aで重要なのがデューデリジェンスである。もちろん財務や法務のデューデリジェンスが重要なのは言うまでもないが、同社を特徴付けているのが「事業のデューデリジェンス」である。同社の事業統括担当が、同社と同社子会社にとってシナジーがあるかないかなど、シャープな「目利き」として厳しく事業を査定する。また、M&A後で重要なのが子会社従業員などステークホルダーとの信頼関係の構築である。この際、同社の「長期的に支援・活性化を図る」という考え方自体が信頼構築の基礎となるが、支援・活性化を進めるのも当の事業統括担当である。彼らが各子会社に直接向き合うことでより強い信頼が得られ、種々の課題解決が進めやすくなる(課題解決の結果、子会社従業員のモチベーションは上がり、信頼関係はますます深まる)。同じ担当者がM&Aの前と後で事業に直接関与するケースは非常に少ないと思われ、この点でも同社のユニークさが表れていると言える。


子会社のその後を支える横串機能
2.中小企業支援プラットフォーム
同社は、持株会社としてグループ全社の経営戦略の立案・実行及び経営管理を行っている。子会社に対しては営業、製造、仕入物流、商品開発、品質管理、経営管理といった横串機能を提供することで、統括・支援をスムーズに進めている(事業統括担当の本質的な役割である)。この際、子会社単位で欠落しているヒト・モノ・カネなど経営資源をグループ内で融通し合うことで、各子会社相互の強みを生かし弱みを補完している。こうした仕組みを同社は「中小企業支援プラットフォーム」と呼んでいる。「中小企業支援プラットフォーム」は、同社が食品の製造・販売に特化して長く支援に取り組んできたノウハウの蓄積により構築された仕組みである。こうした考え方は共感されやすく、かつて(株)産業革新機構(現:(株)INCJ)や日本たばこ産業(2914)、ベンチャーキャピタルなどから同社が出資を受けてこられたのも、子会社の従業員や元オーナー、取引先などからの信頼が厚いのも、「中小企業支援プラットフォーム」の考え方への共感によるものと考えられる。当然、ESG(環境・社会・ガバナンス)投資という観点にもフィットした考え方である。


信頼の積み重ねが成長の原動力
3.社内外の厚い信頼
ちなみに、「中小企業支援プラットフォーム」を実際に動かす事業統括担当は、グループの中で最も食品に精通した人材でなければならない。しかし、もともと持株会社の同社にはそのような人材がいるわけではない。ということは、事業統括担当は子会社から同社に引き上げられたということを示している。実際、6つの横串事業のうちで営業と製造、それに仕入物流の事業統括担当は子会社の出身である(商品開発と品質管理が外部、経営管理が同社)。こうした引き立ては非常に効率的な考え方であるばかりでなく、子会社従業員のモチベーション向上にもつながると考えられる。なかでも事業全体を統括しているのがCOOの北堀孝男(きたほりたかお)氏で、吉村CEOと共同代表を務めるキーマンである。(株)ミズホ(現(株)ヨシムラ・フード)出身で、食品業界50年以上、経営者歴30年以上という大ベテランである。北堀COOが事業全体を統括することで、吉村CEOは増えるM&Aの交渉や経営全般に専念することができる。

同社は長らく食品に特化して中小企業を支援・活性化してきたため、食品業界の市場環境や商習慣、中小食品企業特有のリスクなどを熟知することになった。デューデリジェンスや交渉のノウハウも蓄積してきた。M&Aの前と後で同じ事業統括担当が関与するため支援・活性化の「目利き」でもある。このため、M&A仲介会社や地方銀行・信用金庫・証券会社といった地域の金融機関、税理士やコンサル事務所、弁護士、再生コンサルタントなどからの信頼も厚く、同社が中小食品企業のM&A情報を容易に得ることができる背景にもなっている。また、時節柄事業承継セミナーが増えており、事業承継を具体的に考える経営者も増えてきたと見られる。このため同社の案件は足もとで増加ピッチを速めている。なかでも、後継者難を背景とした案件は急増している模様で、ますます仲間が増えそうだ。案件の急増に対し、同社は今後、人材については、中小企業では採用しづらいハイレベルな外部人材の採用を増やすこと、子会社化については、オーナーシップや経営のノウハウを維持したほうがよい場合は、同社が51%以上所有するのであれば100%所有にこだわらないということなどを考え始めている(SIN HIN FROZEN FOOD PRIVATE LIMITED、LIVIO FROZEN FOOD PTE. LTD.はオーナーが30%の所有を維持)。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)

《RF》

 提供:フィスコ

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