どうにもとまらない野菜高騰、ラストリゾート「産直」関連株が走る <株探トップ特集>
―コスト抑え安心・安全な農作物を確保へ、ネットの普及や物流網の整備も後押し―
野菜価格の高騰が止まらない。農林水産省の食品価格動向調査(野菜)によると、3月3日の週の野菜価格(全国平均)は、キャベツが平年比で2.7倍、白菜が同2.3倍と平年を大きく上回った。また、昨年から続くコメの価格上昇も深刻で、政府が備蓄米を放出する事態となっている。
こうした野菜やコメなどの農産物の価格高騰で注目されているのが「産地直売」「産地直送」といった「産直」だ。野菜価格は高騰前の水準には戻らないとの見方もあり、関連する企業の商機は拡大しそうだ。
●食品の高騰が家計を直撃
価格が高騰しているのはもちろん、キャベツや白菜だけではない。前述の食品価格動向調査によると、ネギが平年比67%増、レタスが同60%増、タマネギが同19%増、トマトが同22%増、ニンジンが同40%増、大根が同67%増と調査対象8品目の価格が平年比で全て上昇している。
また、総務省が2月21日に発表した1月の全国消費者物価指数は、生活実感に近い生鮮食品を含めた総合指数が111.2(2020年=100)と前年同月比で4.0%の上昇となり、24年12月の同3.6%を上回り2年ぶりの高い伸び率を記録した。同省によると、生鮮野菜のほか生鮮果物、穀類などの上昇が大きく寄与したという。
●野菜価格高騰は生産コスト上昇など複数の要因が絡み合う
長引く物価高はロシアのウクライナ侵攻に伴うエネルギー・資源価格の高騰、米国の利上げに伴う為替相場の円安進行による輸入価格の上昇など複数の要因が絡み合ったことが要因とされるが、野菜価格の高騰もまたさまざまな要因が絡み合っている。
例えば供給量と関係の深い天候要因をみると、24年の夏は高温が続いたことで多くの野菜の生育に影響を及ぼし、特に葉物野菜や根菜類に深刻な影響を与えたという。また、燃料価格の上昇や物流業界の人手不足も輸送費の増加となって卸価格に転嫁されるほか、「欠品」を避けたい小売業者や食品業界が高値で野菜を購入する需給のミスマッチなども要因とされている。
●「産直」への注目高まる
野菜価格の高騰に対して、消費者サイドも「小分け野菜を選んで1購入あたりの量を減らす」「値引き商品を狙う」「価格が安定している野菜で代用する」などの努力で毎日の食卓を守っているが、総務省が3月11日に発表した1月の消費支出(二人以上の世帯)で野菜や果物など「食料」への支出が実質で前年同月比2.4%減少するなど節約志向は続いている。
こうしたなか、野菜など農作物の購入手段として注目されているのが、卸売市場など通常の流通経路を通さずに消費者が生産者から直接手に入れる「産地直売」や「産地直送」といった産地に直結した「産直」だ。
●ネットの普及や物流網整備が追い風
「産直」は、生産者から消費者へ直接食材が届くため、流通過程での鮮度の低下が最小限に抑えられるほか、中間業者への手数料や流通コストを削減できるといったメリットがある。また、インターネットの普及や物流網の整備で以前に比べて直接取引がしやすくなったことも「産直」のハードルを下げている。
野菜価格の高騰は供給量が増加し、品薄の状態が収まったとしても、コストが高いといった状況は変わらないため高騰前の水準には戻らないとの見方もある。そのため、「産直」への注目は今後も継続するとみられ、関連企業のビジネスチャンスは膨らみそうだ。
●「産直」や農産物の流通に関連する銘柄
そこで今回は、「産直」や農産物の流通に革命を起こした銘柄を紹介したい。
雨風太陽 <5616> [東証G]は、全国の農家・漁師と直接やり取りしながら旬の食材を購入できる産直アプリ「ポケットマルシェ」を運営する。同アプリは、利用する生産者が約8500人、利用するユーザー数が82万人を突破(24年12月期)しており、利用者が順調に拡大。昨年4月に販売手数料を改定したことで収益力も向上している。24年12月期単独営業損益は1億6100万円の赤字と4期連続の赤字となったが、売上高が過去最高となったことで営業利益も前の期から改善。25年12月期は引き続き「ポケットマルシェ」を牽引役に営業利益800万円と黒字転換を見込む。
農業総合研究所 <3541> [東証G]は、全国の集荷拠点で集荷した新鮮な農産物を都市部のスーパーマーケット内に設置したインショップに最短1日で届ける独自の流通プラットフォーム「農家の直売所」を展開する。また、同社が生産者から直接農産物を買い取り、ブランディングをしてスーパーマーケットに卸す「産直卸事業」も展開している。「農家の直売所」は食品スーパーに設置され、生産者が販売価格や販売先を選択できるので、市場価格を下回る値付けをして出荷する傾向があり、消費者にとってのコストメリットがある。25年8月期第1四半期単独営業利益は6600万円(前年同期比94.1%増)で、通期では同1億1000万円(前期比17.5%増)を見込む。
タカヨシホールディングス <9259> [東証G]は、「地域を結ぶ直売広場」のコンセプトのもと、地域の食の産直プラットフォーム型店舗「わくわく広場」を運営している。野菜や果物ばかりではなく、焼きたてパンや総菜、弁当なども集まる「地域の食のセレクトショップ」となっており、店舗数は187店舗(25年2月末現在)を数える。25年9月期第1四半期連結営業利益は2億700万円(前年同期は単独営業利益2億6500万円)で、通期では同7億3500万円(前期比18.9%減)を見込む。
オイシックス・ラ・大地 <3182> [東証P]は、有機や特別栽培野菜など安全性に配慮した食品・食材の宅配を行っており、主力の「Oisix(オイシックス本店)」の会員数は35万8806人(24年9月末現在)。また、有機農産物宅配サービス「大地を守る会」、有機野菜・無添加食品や環境負荷の少ない日用品などの宅配サービス「らでぃっしゅぼーや」や、全国から旬の逸品を取り寄せる「産直おとりよせ市場」も運営する。25年3月期は連結営業利益70億円(前期比36.1%増)を見込む。
クックパッド <2193> [東証S]は、料理レシピの投稿・検索サービス「クックパッド」を主力としているほか、生鮮食品をアプリで注文し、マンションやコンビニエンスストア、ドラッグストア、駅などに設置された専用冷蔵宅配ボックスで受け取る「クックパッドマート」を運営する。24年12月期連結決算で、営業利益は6億7300万円(前の期27億9900万円の赤字)と4期ぶりに黒字に転換。なお、25年12月期業績予想は未定としている。
このほか、秋川牧園 <1380> [東証S]は、安心・安全を追求した鶏肉、卵、牛乳、野菜などを生産から加工、販売まで一貫して手掛けており、生産子会社による直営生産に加えて、提携農家への飼料提供や技術指導などを展開。また、山口市の本社敷地内の直売所を通じた無農薬野菜や無添加食品の販売や宅配事業も展開する。ショクブン <9969> [東証S]は、地産地消にこだわった安心・安全な食材をはじめ調味料やキッチンペーパーなどの消耗品の宅配を行っており、4月に予定している主力商品の値上げの業績への影響が注目されている。
●産直を支えるソリューションやふるさと納税サイトにも注目
イーサポートリンク <2493> [東証S]は、生鮮流通に特化したソリューションの開発・運営を行っており、生産者から取引先、小売・量販店までの流通情報をトータル管理することで、流通上に発生するムダを最小限に抑え、需要に応じた的確な仕入れ、販売を実現している。24年11月期連結営業利益は1億6300万円(前の期比99.4%増)と大幅増益を達成。25年11月期は同1億8900万円(前期比15.8%増)を見込む。
セラク <6199> [東証S]は、システムインテグレーション(SI)やデジタルトランスフォーメーション(DX)事業を主力としつつ、「農業×IoT」を業界に先駆けて実現した圃場(ほじょう)モニタリングシステム「みどりクラウド」をはじめとしてさまざまな農業向けソリューションを展開している。25年8月期第1四半期連結営業利益は7億6800万円(前年同期比46.4%増)と大幅増益で着地。通期は同25億5000万円(前期比12.1%増)を見込む。
更に、野菜価格高騰を受けて、 ふるさと納税を活用して野菜を確保しようとする消費者が増えていることから、ふるさと納税サイト「ふるなび」を運営するアイモバイル <6535> [東証P]や、ふるさと納税ポータルサイト「ふるさとチョイス」を運営するトラストバンクを子会社に持つチェンジホールディングス <3962> [東証P]も関連銘柄として注目したい。
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