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懐疑の中で育つ強気相場、「バズーカ」政策で中国関連株の反騰なるか <株探トップ特集>


―米大統領選受け高まる緊張感、政策対応による中国景気回復シナリオの実現に期待も―

 米大統領選挙の結果、ドナルド・トランプ前大統領の再選が決まった。米議会の上院も下院も共和党が制し、いわゆるトリプル・レッドといわれる圧倒的な勝利である。事前報道では対抗馬であるカマラ・ハリス副大統領がやや優勢であり、直前では支持率が拮抗する異例の状態などと報じられた。このように事前報道と結果が大きくかけ離れるような事態は、2016年の大統領選挙の時も同じである。

●米国の圧力強化で苦境の中国経済

 トランプ氏は16年の大統領選挙で勝利した後、選挙公約として取り上げたことを着実に実行に移してきた。18年には貿易赤字の改善を目指して中国産品の輸入に対し追加関税の賦課を開始。米中間の緊張関係を一段と強めることとなった。今回、再選したトランプ前大統領は選挙公約として、すべての中国製品に対し60%の関税を課すとしている。

 米国はバイデン現政権下でも、中国から輸入する鉄鋼製品や太陽電池、電気自動車(EV)の関税を引き上げている。トランプ氏の再登板により、米国の中国に対する圧力が一段と強まり、中国経済が更なるダメージを被るリスクに市場は身構えつつある。

 そうでなくても中国では景気が芳しくない。実質GDP(国内総生産)成長率は24年7~9月期で前年同期比プラス4.6%にまで減速し、「5%前後」の成長という目標の達成に不透明感が強まってきた。そして、GDPデフレーターは6四半期連続でマイナスとなるなどデフレが定着しつつある。不動産価格の低迷などから今年7月の銀行融資が19年ぶりに減少するなど、バランスシート不況も懸念されている。

●「10兆元対策」公表、更なる具体策に関心向かう

  中国は日本のバブル崩壊を踏襲しつつある──。そんな声がマーケットに広がるなか、中国政府は金融政策や財政政策を総動員しながら、米国の高関税に対抗し、何とか景気を持ち上げようと動き始めている。金融政策面では、新たに主要な政策金利とした7日物リバースレポ金利(金融機関に資金供給する際の短期金利)を引き下げ、住宅ローン金利や企業向けの貸出金利の低下を図った。金融機関から強制的に資金を預かる預金準備率も引き下げ、1兆元(約21兆円)規模の流動性の増加による効果を引き出す構えを示した。低迷する不動産市況を巡っては、融資済みの住宅ローン金利を平均で0.5%引き下げ、年間で1500億元(約3兆1500億円)の利払い負担軽減を狙う。中国当局はローンの頭金の規制緩和や国有企業による住宅在庫買い入れ喚起策なども打ち出している。国有の大手商業銀行6行に対する資本注入にも乗り出した。

 更に、11月8日には全国人民代表大会(全人代)常務委員会において、今後5年間で総額10兆元(約210兆円)を投じて地方政府の債務対策に乗り出すと発表。事前の観測報道に沿った内容だったが、本格的な景気対策を期待したマーケットからは失望の声も上がった。事実、9月下旬以降に大きく盛り上がった上海総合指数は足もとでは頭打ちになっている。とはいえ、一連の経済対策を通じて供給される流動性は、確実にバランスシート不況の悪影響を和らげ、金融危機のリスクを低減させる材料になる。今年12月中旬には中国経済工作会議が、来年の3月には全人代が開かれるとみられており、具体的な財政出動策がアナウンスされるとの期待感も広がりつつある。

 経済協力開発機構(OECD)の景気先行指数をみると、中国は依然として長期トレンドを下回る100以下であるものの、足もとでは下げ止まりの兆候を示しつつある。中国経済は25年の景気回復に向けた準備段階の状況にあるとも言えるだろう。加えて、習近平政権の新たな経済対策が「バズーカ」的との評価が一層強まれば、中国経済に対するマーケットの懐疑的な見方が、強気に傾く可能性が高い。

●中国景気持ち直し見込んだ「仕込み場」到来か

 GDPで米国に次ぐ世界2位の中国と、世界4位の日本は経済面で密接な関係性を持っており、中国では多くの日本企業がビジネスを展開している。9月中間期決算発表シーズンでは中国景気の低迷を受けて、業績予想の下方修正を余儀なくされた上場企業が相次いだ。もっとも、投資信託の先駆者、ジョン・マークス・テンプルトン卿は「強気相場は、悲観の中に生まれ、懐疑の中に育ち、楽観の中で成熟し、幸福感の中で消えていく」との格言を後世に残している。この先、中国景気が持ち直しに向かうのであれば、中国事業で苦しんだ企業の業績も回復基調を鮮明にすることとなるだろう。こうした銘柄についてはある種の「仕込み場」が到来しているととらえることが可能である。

 マーケットにおいて中国景気の回復の恩恵を受けるとみられている銘柄には、ファナック <6954> [東証P]や安川電機 <6506> [東証P]といったファクトリーオートメーション(FA)関連や、工作機械関連株などがある。海上輸送運賃に上昇圧力が掛かれば、日本郵船 <9101> [東証P]や商船三井 <9104> [東証P]、川崎汽船 <9107> [東証P]など海運大手の業績には追い風となる。3社はともにPBR(株価純資産倍率)が1倍を下回っており、配当利回りは郵船と商船三井が5%台、川崎汽は4%台と高水準だ。

 日本ペイントホールディングス <4612> [東証P]は中国でのエクスポージャーの高い企業として知られている。小売では良品計画 <7453> [東証P]が中国大陸での出店拡大に臨むほか、サイゼリヤ <7581> [東証P]は中国事業が稼ぎ頭となりつつある。もちろん、これらの主要企業だけが、中国景気の回復を満喫するわけではないだろう。中小型株のなかには割安感を強めた銘柄も数多く存在する。

 例えば、中国経済の動向に左右される工業系セクターのうち、プリント配線板の最大手である日本CMK <6958> [東証P]はPER(株価収益率)が9倍前後、PBRは0.4倍台となっている。国内の自動車生産台数の伸び悩みや、中国経済の減速などを背景に11月6日に通期の売上高と営業利益の見通しを下方修正した。サプライチェーンの地政学リスク回避の流れから、タイでの新工場建設に向けて今年2月に公募増資による資金調達を発表したものの、今期の営業利益計画において中国が一定の規模を占めているとあって、中国景気の回復期待で、割安感の修正が起きる可能性がある。

 日本プラスト <7291> [東証S]は自動車用のエアバッグやハンドル、樹脂部品などを手掛け、日産自動車 <7201> [東証P]とホンダ <7267> [東証P]を主要取引先とする。日系自動車メーカーは中国市場で苦戦を強いられており、日本プラストが11月8日に発表した25年3月期第2四半期累計(4~9月)の決算でも、中国事業は減収・セグメント赤字を余儀なくされたが、決算発表のタイミングでは通期の業績予想は据え置いた。営業利益の通期計画に対する進捗率は76%と高水準。今期の業績の上振れシナリオが横たわるなか、中国での生産が回復に向かえば、PBR0.2倍近辺と割安に放置された株価に上昇圧力が掛かりそうだ。

 光源装置などを供給するインターアクション <7725> [東証P]の25年5月期は2ケタの減収減益を計画するものの、10月11日の第1四半期(6~8月)決算発表時に、貸倒引当金の戻し入れ発生とIoT関連事業が国内顧客向けに好調に推移したことなどを踏まえ、業績予想を上方修正した。同事業では海外顧客の投資動向はなお不透明としているが、欧米の顧客とともに中国の顧客の投資意欲が強まった際には、同社の受注状況にプラス効果をもたらす可能性もある。

 ガス給湯器大手のノーリツ <5943> [東証P]が11月12日に発表した24年12月期第3四半期累計(1~9月)の決算は、売上高が前年同期比2.5%減の1411億9300万円、最終利益は政策保有株式の売却の影響もあって同4.1倍の23億4800万円となっている。市況悪化のあおりを受けて中国は2ケタの減収・営業減益で、海外事業では中国依存リスクの低減を図り新市場の開拓を進めているものの、中国でのコンビボイラーと厨房領域は引き続き好調を維持。既存事業の成長にも取り組んでいる。同社にはアクティビストとして知られ、イギリスに本拠を置く投資運用会社ニッポン・アクティブ・バリュー・ファンドとその共同保有者による株式保有割合が5.02%に上ったことが8月に明らかになった。

 消費関連では、ジンズホールディングス <3046> [東証P]の中国事業の売上高は24年8月期において10%を超える。中国事業はこれまでの店舗数・エリア拡大を重視する戦略から転換し、上海や北京といった戦略都市でのドミナント展開を進めつつ赤字店舗の整理にも取り組み、収益力の改善とブランド価値の最大化に向けて舵を切る。一連の経済政策を通じ中国景気の浮揚期待が高まれば、消費の持ち直しを追い風に海外事業の業績が上振れし、25年8月期の連続最高益計画を更に押し上げることになりそうだ。

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