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【緊急特集】トランプ氏が大統領選で勝利宣言、米金利上昇・株高シナリオに死角はないか?

─不確実性の後退で買い安心感台頭も、米金利の上昇続けば実体経済に逆風─

 2024年の米大統領選で、トランプ氏が勝利宣言を行った。議会選では上下両院において共和党が多数派を占める「トリプルレッド」を達成する可能性が高まっている。重要イベント通過後の株高ラリーを期待する向きもあるが、財政拡張型の政策遂行に議会がブレーキを掛けにくい状況となれば、米国の金利への上昇圧力が一段と強まり、消費活動や企業の設備投資意欲に悪影響を及ぼす恐れが強まる。基軸通貨のドルの上昇に対し、トランプ氏がどのように接するのかも注目点となる。

●「激戦2州で優勢」でトランプトレード加速

 6日の東京市場で日経平均株価の上昇幅は一時1100円を超えた。大統領選の開票状況に市場参加者の視線が集中するなかで、激戦州のうち、ノースカロライナとジョージアの2州でトランプ氏が優勢だと報じられたのを起爆剤に、「トランプトレード」が勢いづいた。更に、上院の多数派が共和党となる見通しだと伝わると、共和党が下院の過半数を維持してトリプルレッドとなる可能性が意識され、米長期金利は時間外取引で4.4%台に急上昇。ドル円相場は1ドル=154円30銭台まで円安に振れ、日本株は先物主導で買われた。米株価指数先物も大幅高となっている。

 トランプ氏が大統領選で勝利を収めることとなれば、4年ぶりの返り咲きとなる。16年11月の大統領選で勝利した際には、開票速報を受けて保護主義の台頭による世界経済の停滞リスクが意識され、日経平均は急落。しかしその翌日に1100円近く上昇し、ムードは好転した。今回はどうか。24年の大統領選での勝利宣言に対する初期反応は、いまのところは株高となっている。

 16年と20年の大統領選の間では、NYダウとナスダック総合指数はコロナ禍を受けた押し目を20年3月に形成したとはいえ、右肩上がりのトレンドを続けた。日経平均も同様に、16年11月の開票状況が伝わった際の安値1万6251円を底に、18年10月に2万4400円台まで上昇。コロナ禍での急落局面を乗り越え20年11月の大統領選前には2万3000円台まで戻した。

 米長期金利のトレンドはどうか。16年の大統領選前には1.5%を割り込む場面があったが、同年末にかけて上昇。17年は横ばいとなった後、18年に3.2%台まで切り上げた。しかし19年には16年の大統領選前の水準まで低下し、コロナ禍で経済活動の停止を余儀なくされた20年に1%を割り込んだ。ドル円相場をみると、16年の大統領選後にドル高・円安が進行し、同年12月に1ドル=118円60銭台をつけたものの、その後は緩やかなドル安・円高基調となった。主要通貨に対するドル指数をみても、コロナ禍は例外として、大統領選直後の上昇トレンドが長続きすることはなかった。総じて株高・ドル安・米金利安の期間だったと評価できる。

●気になるFRBとトランプ氏の距離感

 24年に入り、米国では主要株価指数が最高値圏で推移し、ソフトランディング期待を前提としたリスク選好ムードが席巻している状況にある。こうしたなかで、政治面での不確実性が消滅した事実そのものは、投資家心理にはプラスに作用することとなるだろう。米CNNが公表する「フィア・アンド・グリード(恐怖と欲望)指数」をみると、足もとでは大統領選前とあって「恐怖」に傾いているが、1カ月前は「強欲」と、5段階の最高位の「超強欲」に次ぐ水準にあった。選挙結果を受けて、再び強欲側に振れそうな気配もある。

 米長期金利はトランプ氏の勝利を見越して水準を切り上げた。しかし、急速な金利上昇は教科書的には株式相場を押し下げる要因となる。実体経済においても、住宅や新車購入時のローン金利が一段と上昇すれば、米国の消費活動を停滞させることとなる。借入や社債発行を見合わせる企業の姿勢が強まり、成長に向けた投資活動が阻害される恐れもある。更に金利高を通じたドル高の放置は、ラストベルトに立地するような製造業の競争力を低下させ、トランプ氏の支持層に失望感を生み出しかねない。

 もちろん、基軸通貨国が発行する信頼性の高い国債の利回りが上昇した際には、年金基金や機関投資家によるイールドハント目的の購入需要が高まることが予想される。一方向的な金利上昇が続くシナリオが実現するかは不透明な面があるのも確かだ。仮に金利が持続的に上昇し、実体経済に悪影響をもたらすのであれば、大衆の不満に応える形で、トランプ氏は米連邦準備制度理事会(FRB)への利下げ圧力を掛け続けることとなるに違いない。その際は、ドル安・円高を通じて日本の輸出株の上値を圧迫することとなるだろう。

●海外勢が日本株を選好する条件は?

 日本株の先行きを見据えるうえで、東京証券取引所がまとめた投資部門別売買状況を確認すると、海外投資家は今年1~6月の間に、現物株を4.3兆円買い越した。その後7~10月第4週までに3.4兆円売り越している。年金基金の売買を反映する信託銀行は、1月から10月第4週までの累計売り越し額は4.4兆円となっている。海外勢の買いの動きがにぶく、年金勢が着々とリバランスの売りを行うなかで、日本株の買い手となっているのが事業法人であり、現物での買い越し額は1月以降の累計で6.1兆円に上る。

 事業法人は上値を買う投資主体ではなく、日本株が水準を切り上げるには、海外投資家が引き続き重要な役割を担っていることには変わりがない。もし、トランプ政権が中国に対し強硬姿勢を強めることとなった場合、アジア地域としての代替投資先として候補に浮上するのが米国の同盟国の日本となる。その際には「アセットアロケーションの観点で海外投資家による日本株の買い越し基調が続く可能性がある」(アイザワ証券・投資顧問部ファンドマネージャーの三井郁男氏)との声もある。

 米国の金利上昇が継続すれば、銀行株やバリュー株が選好されることとなりそうだ。6日の東京市場では、三菱UFJフィナンシャル・グループ<8306>や三井住友フィナンシャルグループ<8316>、みずほフィナンシャルグループ<8411>といったメガバンクが急騰した。ただし、16年の大統領選後の米長期金利の上昇は、その翌年に一服することとなったのは前述の通りである。

 市場の期待と裏腹に、米国金利に低下圧力が掛かるのであれば、中小型株が見直され、グロース系銘柄を中心に物色の流れが強まる可能性もあるだろう。日銀の利上げペースや国内政治情勢など、さまざまな変数がマーケットには存在する。そのなかでも金利動向と、ドルに対するトランプ氏のスタンスに対し、市場参加者はこれまで以上に神経をとがらせて注視する必要に迫られそうだ。

出所:MINKABU PRESS

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