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明日の株式相場に向けて=自民党大敗は「裏金問題」にあらず

 週明け28日の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比691円高の3万8605円と急反発。きょうは市場関係者の誰もが全体指数は波乱含みで下値を探るという見立てであった。自公連立で衆議院定数の過半数を下回る状況に陥ったことで、政局を嫌う海外投資家の売りを浴びることは避けられないと考えるのが当然である。しかし、現実は朝方に日経平均が安く始まったのも束の間、開始後わずか2分でプラス圏に切り返し、その後は問答無用の垂直上昇であっという間に3万8000円台後半へと浮上した。

 ひとつ確かなことは、事前に与党の大苦戦が伝わっていたことから、前週末時点で先物絡みの空売りが高水準に積み上げられていたということ。一方、実需面では前週末に持ち高を減らしはしても、増やすような動きは機関投資家の間ではほぼ皆無に近かったと思われる。結果としてショートカバーを入れたくても、ぶつけてくる売り玉が無いという構図が描かれた。これが想定外の上値を演出した背景にある。

 しかし、相場が反転したといっても今の時間軸で大勢トレンドが変わる道理はない。政権の枠組みが「ご破算で願いましては」の状態で、なおかつ次の体制が皆目分からない段階にあって海外投資家が実需で日本株を買い増すことはない。国民民主党の躍進が、同党と連携を探る自民党の政策に変化を与えるという見方も一部で示されていたが、あまりにも取ってつけたような材料で、実際に玉木代表は連立政権への参加はないと言い切っている。ここで石破首相に倣って前言を翻せば、一夜にして信頼失墜となることは分かり切っている。

 何と言っても、批判の集中砲火を浴びながら、総裁選での約束を破り捨ててまで解散総選挙に踏み切った石破新首相が、自ら言及した「与党で過半数維持」という勝敗ラインすら大きく下回った以上、首相の椅子にしがみつくのは半ば滑稽でもある。市場筋は「(辞意を示さないのは)おそらく、歴代最短内閣の首相として記録されるのは御免被るという思いに尽きるのだろう」(国内投資顧問系ストラテジスト)という指摘があった。ちなみに、このまま首相の座を降りると、1945年の第二次世界大戦終戦直後の東久邇宮内閣の54日間を更新することになる。今回、小泉選対委員長は即刻辞表を提出したが、森山幹事長がもしこれに続いた場合は、石破首相の続投は状況的にほぼ不可能といえたが、示し合わせたかどうかは別として(現時点で)そうならなかったことは、石破氏の「謙虚に他党との政策連携を探る」スタンスで場を持たせる路線に現実味が帯びている。

 しかし、ほぼ全面高様相となるなかも、“ポスト石破”をイメージさせる物色の流れが株式市場にはくっきりと刻まれている。三菱重工業<7011>が冴えなかったほか、川崎重工業<7012>、IHI<7013>、日本製鋼所<5631>といった防衛関連が軒並み安、能美防災<6744>など防災関連も売られた。一方で核融合のテーマに乗る助川電気工業<7711>が一時16.7%高と急騰を演じるなど、高市トレードでスポットライトを浴びた銘柄が変化を察知し、動兆しきりとなった。石破首相の退陣をマーケットは読み始めている。

 きょうの日経平均の急騰劇は需給面では空売りの買い戻しだが、外部環境面では為替の円安加速が好感された。企業の決算発表が本格化するなか、足もとの円安による収益上乗せ効果が株式市場には追い風として意識される。だが、これは短絡的なロジックでもある。今週の日銀金融政策決定会合では「現状維持」がほぼ決定的だが、この円安環境では音無しの構えを続けられるはずもなく、12月以降の決定会合では利上げ局面への移行が明確化する可能性があるからだ。原点に戻って、今回の自民党の敗北は本当に「裏金問題」に対する国民の怒りがもたらしたものか、それも疑問である。強烈な逆風を吹かせたのは、かつて欧米が頭を悩ませたインフレの加速度的な進行、こちらが本丸であるという見方を示す市場関係者は少なくない。この局面で増税案などチラつかせること自体論外で、利上げが必要ならなおのこと、いかに国民の生活を楽にするかを考えるのが政治の責務である。

 あすのスケジュールでは、9月の有効求人倍率、9月の失業率、2年物国債の入札など。また、東証グロース市場にSapeet<269A>が新規上場する。海外では8月の米S&Pコアロジック・ケース・シラー住宅価格指数、9月の米雇用動態調査、10月の米消費者信頼感指数など。なお、海外主要企業の決算発表ではマクドナルド<MCD>、アルファベット<GOOGL>、アドバンスト・マイクロ・デバイシズ<AMD>などに注目度が高い。(銀) 

出所:MINKABU PRESS

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