STIフードHD Research Memo(9):第2四半期の好決算から通期業績の再上方修正を期待
■STIフードホールディングス<2932>の業績動向
2. 2024年12月期の業績見通し
同社は2024年12月期の業績について、売上高35,000百万円(前期比10.1%増)、営業利益2,800百万円(同21.4%増)、経常利益2,800百万円(同20.2%増)、親会社株主に帰属する当期純利益1,800百万円(同15.2%増)と見込んでいる。第2四半期の好調を背景に期初業績予想から、売上高で1,000百万円、営業利益と経常利益で各400百万円、親会社株主に帰属する当期純利益で200百万円、それぞれ上方修正した。下期に入っても好調を継続しているようだが、上期の上振れ分のみを上方修正したようで、以下のとおり通期業績は再度上方修正される可能性が高いと弊社では考えている。
同社は、焼き魚やカップサラダなどのデイリー食品に関して、セブン-イレブンの「食」の強みを軸とした事業戦略のなかでも特徴のある魚惣菜として需要が継続すると見込んでいる。さらに、需要を伸長するために良品製造の徹底、リニューアルや新商品投入のための商品開発に注力するとともに、新工場の立ち上げなどによる生産キャパシティの増強、生産性向上による利益率の改善にも取り組んでいる。この結果、第2四半期が好決算となり、通期業績予想を上方修正した。しかし、通期業績予想から第2四半期業績を差し引いた下期について見ると、売上高は8.0%増だが、営業利益は2.9%増、営業利益率は7.1%に留まる予想となっている。価格改定効果の消滅やセブン-イレブンの低迷継続、関西新工場立ち上げ時の効率低下などを想定したとしても、7~8月も第2四半期の勢いを継続しているうえ、秋需に向けたキャンペーンで同社の「さばの味噌煮」がセブン-イレブンの一押し商品になっていることなどを考慮すると、下期の営業利益率が7%台に下がることは想定しづらい。これが、通期業績が再度上方修正される可能性が高いと考える理由である。
既存商品の拡大と増強投資により中期で2ケタ成長を目指す
3. 中期成長イメージ
コロナ禍と原材料高を乗り越え、2023年12月期、2024年12月期第2四半期と2ケタを超える成長を続けている。中食市場において利便性や健康志向などから魚惣菜へのニーズが拡大していることがベースにあるが、既存商品の改良や新商品の開発、新工場や既存工場での継続的な生産能力の増強によって、中期的な市場の成長を取り込んでいることが大きな要因である。このため、今後も国内セブン-イレブン向けに注力することで2ケタ成長を継続できそうだが、さらに、北米への進出、良品を理解するセブン-イレブン以外の小売との連携、自社やamazonなどECサイトの強化も進めていく考えだ。特に北米セブン-イレブンは、台湾セブン-イレブンと同様、当面は輸出で対応していく。
2025年12月期については、関西工場の本格稼働により約70億円の増収を見込んでいるが、実質立ち上げ初年度のため40億円程度がオンされると予想する。周辺工場から一部商品の生産が関西工場にシフトするだろうが、既存商品の成長や供給効率などを理由に休止していた商品の再投入などが考えられるため、2ケタの売上成長は想定できる。2026年12月期は、関西工場で30億円の売上増、既存商品の成長、新商品のオンに加え、北米セブン-イレブンへの輸出拡大も期待できるため、売上高は引き続き2ケタ成長が予想される。このように2ケタの売上成長を順調に続けていければ、生産効率の改善などにより利益率も向上し、利益も中期的に2ケタを超える成長が期待できる。さらに、長期的な成長には新たな生産拠点が必要となるが、国内セブン-イレブンの成長性や物流の効率性から、関西工場の完成で一定の生産体制の構築は完了と言える。しかし、北米への輸出やセブン-イレブン以外の小売との連携を考えると、状況に合わせて生産能力を強化していくことが必要なため、もちろん国内で新工場建設の可能性もあるが、既存工場の増強投資も打ち手の1つとなるだろう。また、北米セブン-イレブンの成長次第では、北米への進出も検討する必要が生じるかもしれない。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
《EY》
提供:フィスコ