サクサ Research Memo(1):中堅・中小企業のDX推進のサポーターを目指す。2024年3月期は増収、大幅増益
■要約
サクサ<6675>(旧 サクサホールディングス(株)が2024年7月1日付で純粋持株会社から事業持株会社へ移行して商号変更)は、中小企業を主たる顧客層として、IT機器・通信ネットワーク、AI、IoT、クラウドサービスなどの商品・サービス・サポートを提供している。2030年のありたい姿として「中堅・中小企業のDX推進のサポーター」になることを目指し、事業ポートフォリオ変革を推進している。
1. ビジネスホン、ネットワーク・セキュリティ関連機器等が主力
同社グループが展開しているのは、「サクサブランド事業」「OEM事業」「システム事業」の3事業※で、各事業の主力製品は以下のとおりである。「サクサブランド事業」では、1) サクサブランドのビジネスホン、2) ランサムウェアやサイバー攻撃の脅威から企業を守り安心・安全・快適・便利なオフィス空間を実現するUTM(統合脅威管理アプライアンス)等のネットワーク・セキュリティ関連機器、3) 防犯カメラや通報装置等の防犯設備機器となっている。また、「OEM事業」では、1) OEM のビジネスホン、2) カードリーダライタ等のアミューズメント関連機器、3) OEM の防犯設備機器、4) プリント基板の実装や各種試験検査機の設計・製作等のEMSであり、「システム事業」では、1) システム開発、2) ネットワークビデオレコーダー(NVR)やネットワーク映像管理システム(VMS)等の映像ソリューションとなっている。
※ 同社は売上高の内訳として、従来は分野別売上高及び事業別売上高を開示していたが、2025年3月期より開示方法を変更し、「サクサブランド事業(ビジネスホン、ネットワーク、防犯防災)」「OEM事業(OEMビジネスホン、アミューズメント、OEM防犯防災、EMS、その他)」「システム事業(システムビジネス、映像ソリューション、その他)」及び「M&A・他」とした。
2. 2024年3月期は増収、大幅増益で着地
2024年3月期の連結業績(旧 サクサホールディングス)は、売上高が前期比9.7%増の40,948百万円、営業利益が同38.4%増の3,345百万円、経常利益が同42.7%増の3,406百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が特別利益も寄与して同365.3%増の2,800百万円となった。前回予想(2024年2月9日付で各利益を2回目の上方修正)を上回る水準の大幅増益で着地した。前期までの資材・部品調達難が解消して高水準の受注残高の消化が進展し増収となり、人的資本投資による人件費増加や相模原オフィス移転費用などを吸収した。全社の売上総利益率は同0.5ポイント上昇して33.2%、販管費比率は同1.2ポイント低下して25.0%となった。この結果、営業利益率は同1.7ポイント上昇して8.2%となった。なお特別損失では前期計上の減損損失1,664百万円が一巡した。
3. 2025年3月期は増収も、積極的な成長投資などにより減益予想
2025年3月期の連結業績は、売上高が前期比2.6%増の42,000百万円、営業利益が同37.2%減の2,100百万円、経常利益が同38.3%減の2,100百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同50.0%減の1,400百万円を見込んでいる。M&A(第2四半期より(株)ソアーを子会社化)効果に加え、サクサブランド事業が堅調に推移するが、大幅減益を見込む。しかし、これは積極的な成長投資などが主たる要因であり、ネガティブに捉える必要はないと弊社では考えている。売上高の計画は、サクサブランド事業が同4億円増の140億円、OEM事業が同27億円減の192億円、システム事業が同3億円減の51億円、M&A・他が同35億円増の35億円としている。
4. 2024-2026中期経営計画「共に創る未来」は事業ポートフォリオ変革を推進
同社は2024年5月に2024-2026中期経営計画「共に創る未来」を策定した。前中期経営計画「サクサは変わる。」(2021-2023年)においては、最終年度の2024年3月期に、長期目標値である2026年3月期の売上高400億円、営業利益25億円、ROE6.5%以上を前倒しで達成した一方で、事業ポートフォリオの変革が遅れたことが課題であった。このことを踏まえ、新中期経営計画においては、2030年のありたい姿を「中堅・中小企業のDX推進のサポーター」として変革の方向性を示し、2つのPhase(2024-2026年、2027-2029年)で経営計画を策定・実行することとした。Phase1となる2024-2026中期経営計画は、事業ポートフォリオ変革を実現していくための「充電」期間と位置付け、数値目標として3ヶ年計画の最終年度である2026年度の売上高500億円、営業利益27億円、営業利益率5.4%、ROE8.0%を掲げた。このPhase1の後、Phase2を経て、長期目標として2030年度に売上高750億円、営業利益60億円、営業利益率8.0%、ROE8.0%を目指す。
5. 新中期経営計画の下、成長戦略を遂行し新たな成長ステージへ
同社は、新中期経営計画の下、「モノづくり」と「データ活用サービス」を組み合わせた価値提供によって事業ポートフォリオを変革し、お客様の成長を促す新たな価値を提供していくという成長戦略を遂行する。同社が主たる顧客層としている中小企業に関しては、DX関連の市場開拓余地が大きいことを考慮すれば、事業ポートフォリオ変革加速により新たな成長ステージに向かう可能性が期待される。2024-2026中期経営計画で掲げた各種取組施策の進捗状況に注目したいと弊社では考えている。
■Key Points
・主力事業はビジネスホン、ネットワーク・セキュリティ関連機器等。2030年のありたい姿は「中堅・中小企業のDX推進のサポーター」
・2024年3月期は増収、大幅増益で着地
・2025年3月期は増収も、積極的な成長投資などにより減益予想
・2024-2026中期経営計画により、事業ポートフォリオ変革を加速させ、新たな成長ステージへ
(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田雅展)
《EY》
提供:フィスコ