「非日常」から「日常」使いへ、家事代行サービス活躍期待の有望株招喚 <株探トップ特集>
―少子高齢化や女性の社会進出背景に需要が拡大、利用率低く普及余地は大―
家事代行サービス市場が拡大している。少子高齢化や女性の社会進出による共働き世帯の増加など社会構造の変化による家事労働力需要の高まりに加えて、国が「特区」の一環として外国人材の事業従事を進めるなどの後押しをしていることで、参入する企業が増え市場の裾野が広がっていることが背景にある。
コロナ禍を経て出社回帰が進んだこともこの傾向に拍車をかけており、市場は更なる成長が見込まれている。関連企業のビジネスチャンスも拡大しそうだ。
●家事代行サービスは成長産業
家事代行サービスとは、依頼者の自宅に訪問し、要望や生活スタイルに合わせて掃除や洗濯、料理などの日常的な家事を代行するサービスのこと。多くの会社が1時間単位で単価が決まっており、時間単価×時間が利用料として支払われる。
帝国データバンクが2023年3月にまとめた「令和4年度商取引・サービス環境の適正化に係る事業(各種サービス業に係る業界動向調査及び家事支援サービス業の実態把握・活用推進に係る調査)報告書」によると、21年度の家事サービス業の市場規模(推計)は807億円で、12年度から6倍以上に拡大している。
また、野村総合研究所 <4307> [東証P]は「平成29年度商取引適正化・製品安全に係る事業(家事支援サービス業を取り巻く諸課題に係る調査研究)調査報告書」において、25年に少なくとも2200億円弱の市場に拡大すると推計した。コロナ禍などその後の社会情勢の変化を考慮する必要はあるものの、成長産業としてみられていたようだ。
●利用に消極的な日本人?
市場拡大への期待が高い一方、家事代行サービスには、これまでは富裕層など一部が利用するというイメージがあったのではないだろうか。
少し古い調査だが、リンナイ <5947> [東証P]が18年2月に発表した世界5カ国の「共働き」に関する意識調査に、日本における家事代行サービスの利用率の低さが表れている。同調査では、東京のほか、共働き夫婦が少ない韓国、ナニー(教育ベビーシッター)文化が浸透しているアメリカ、共働きが主流のドイツ、ワークライフバランス先進国であるデンマークの5カ国で実施。「共働き」に関する意識調査で家事代行サービスの利用を尋ねたところ、アメリカは家政婦やベビーシッターを「普段利用している」「利用したことがある」と答えた人が85.3%と積極的なのに対し、日本は12.3%と最も低い数字となり、2番目に低い韓国の31.4%も大きく下回った。
日本では特に、他人が家に入ることや家事にお金を払うことへの抵抗感や、家事をしてもらうことへの罪悪感などが強いとされており、それが利用率の低さにつながったようだ。そのため家事代行は一部の富裕層や、産休・育休中のサポートとしての利用にとどまっていた。
●メディアなどで取り上げられ徐々に浸透
しかし近年では、テレビで「伝説の家政婦」と言われる女性が取り上げられるようになったほか、YouTubeやInstagramで家事代行の様子が紹介されるようになるなど、こうした状況に少しずつだが変化も見え始めている。
家事代行マッチングプラットフォーム「タスカジ」を運営するタスカジ(東京都港区)が23年12月から24年1月にかけて実施した「家事代行利用の実態調査」によると、「仕事や育児で、家事に手が回らない」「依頼している家事が苦手なため」といった「恒常的な家庭内の家事の問題」を解決する手段として家事代行サービスを利用する人が過去の調査に比べて増加しているという。家事代行サービスが「非日常」から「日常的に利用できる一般的なサービス」として浸透し始めており、苦手な家事や負担に感じる家事はプロに依頼する方が合理的と割り切った考えから、利用が広がっているようだ。
●国も家事代行サービスを後押し
国は17年3月からいわゆる国家戦略特区の一環として、家事代行を行う外国人を受け入れる事業をスタートさせ、自治体や関係行政機関の管理のもと、家事支援サービス企業が外国人を雇うことができるようにした。対象地域も徐々に拡大しており、それに連れてサービスの利用世帯も増加しているという。
また、経済産業省は23年度補正予算事業として「家事支援サービス福利厚生導入実証事業」を今年3月にスタートさせた。家事代行事業者と福利厚生として家事代行サービスを導入したい企業が連携体として国に申請することで費用の3分の2が補助される。多くの企業がこれを活用し、福利厚生の一環として家事代行サービスを利用できるようにしており、これを契機に利用の裾野の拡大が期待されている。
●家事代行サービス関連企業
関連企業には家事代行サービス事業者は中小企業も多く、上場企業はまだ少ないながら、以下のようなものがある。
パソナグループ <2168> [東証P]は、子会社パソナライフケアが家事代行サービス「家ゴト」を展開している。掃除や料理などの家事だけではなく、ベビー・キッズシッターやシニアサポート、ハウスクリーニングなどを幅広く解決するサービスを提供しているのが特徴。また、国家戦略特区の東京都と神奈川県でフィリピン国籍のハウスキーピング国家資格保持者による家事代行サービス「クラシニティ」も展開している。
ダスキン <4665> [東証P]は、全国の約800店舗で家事代行サービス「メリーメイドサービス」を展開している。高品質なサービスを提供する家事代行事業者を認証する「家事代行サービス認証」を全店舗で取得しているほか、産前産後の家事・掃除プランや、ハイグレードな家事代行サービスである「グランサービス」などのプランが充実しているのも特徴。また、ダスキン加盟店最大手であるナック <9788> [東証P]もあわせて注目したい。
フルキャストホールディングス <4848> [東証P]は、子会社ミニメイド・サービスが、フルオーダーメイド設計の家事代行サービスを提供している。同社は家事代行サービス認証を日本で初めて受けた事業者で、掃除や洗濯、料理のほか、整理収納や高齢者の付き添いまでを行っており、定期/スポット、「女医さんのための家事代行」「お受験ママのための家事代行」などユニークなプランがそろっていることも特徴となっている。
三菱電機 <6503> [東証P]は、23年2月から首都圏を中心としたエリア限定で「くらトク」ブランドによる家事代行サービスを提供している。メーカーであることを生かした家電の上手な使い方のアドバイスなどのほか、プロの料理家、料理研究家、フードコーディネーターたちのレシピを配信するレシピサイト「Nadia」が監修するメニューの提供などが強みで、Webで日時確定や決済までできるのも特徴だ。
ポピンズ <7358> [東証S]は、ベビーシッター事業者として唯一の上場企業。ナニーサービスやベビーシッターを展開しており、ベビーシッター費用の一部を補助するこども家庭庁の「ベビーシッター利用割引券」など国の補助もあって利用者が増加しているという。また、介護保険外の高齢者向け在宅ケアサービスや、首都圏の一部でペットシッターサービスも提供している。
イオン <8267> [東証P]は、グループ会社のアクティアが「カジタク」のブランドでプロのハウスクリーニング、宅配クリーニング、家事代行、整理収納、片付けなどのサービスを提供している。大手企業ならではの安心感や料金体系が特徴で、ハウスクリーニングサービスなどをパッケージ化した商品をイオンなどの店頭でも購入できることも強みとなっている。
センコーグループホールディングス <9069> [東証P]は、17年1月に家事代行などの生活支援サービスを手掛けるイエノナカカンパニーを買収し東京23区及び首都圏の一部地域で家事支援サービスを提供している。今年4月には同じくセンコーグループのARSと合併し、家事代行のほか電気工事・設備交換や緊急駆けつけなどのサービスもワンストップで提供している。
CaSy <9215> [東証G]は、家庭向けには家事代行やハウスクリーニングを、法人向けには福利厚生、オフィス清掃を提供している。独自のマッチングアルゴリズムにより、従来はコーディネーターが行っていた見積りと日程調整のプロセスをDX化し、利用客の依頼の手間とサービスまでの時間の削減に成功したほか、人件費を抑えることで低コスト構造を維持しているのが特徴。また、家事代行事業者向けのシステム「MoNiCa」も提供しており、立ち上げから成長加速までを支援している。
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