【特集】トランプラリー本格始動! 株高本番の防衛・原油関連を緊急リサーチ <株探トップ特集>
トランプラリーの様相を呈する金融市場では、リスク選好ムードが広がり出遅れた中小型株への資金流入も顕著となっている。同盟国の日本においては、防衛や原油開発関連企業への業績押し上げ効果が期待されている。
―出遅れた中小型株への資金流入鮮明、「トリプルレッド」なら政策推進力は増大へ―
13日に米国東部ペンシルベニア州で開かれた集会で、ドナルド・トランプ前大統領の暗殺未遂事件が発生した。被弾した耳を赤く染めながらも立ち上がり、星条旗をバックに右拳を高く振り上げたトランプ氏の姿は、強いリーダーシップを発揮できる人物としての印象を米国民に与えることとなった。11月5日に予定される米大統領選でトランプ氏が大統領に返り咲くとの見方が強まりつつあるなか、金融市場はすでに「トランプラリー」の様相を呈しており、リスク選好ムードのもとで出遅れた中小型株への資金流入も顕著となっている。アメリカファースト型の政策では米国企業が大きな恩恵を受けることとなるものの、原油開発や 防衛関連など同盟国として日本企業の活躍が期待される領域もあり、東京市場においても割安感のある関連銘柄に対し、投資家の関心が高まることとなりそうだ。
●産業界からトランプ氏への献金続々
トランプ陣営に対しては、テスラ<TSLA>創業者のイーロン・マスク氏が資金を提供する方針を明らかにするなど、選挙活動のサポートに向けた産業界の輪が徐々に広がっている。次期大統領が誰になるのかという点に加え、連邦議会選挙を巡る情勢からも目を離すことはできない。現状では上院は民主党議員が多数を占め、下院は共和党議員が過半を握る「ねじれ議会」の状況となっている。上院で民主党が過半を維持するには、共和党との接戦州で議席を落とすことができず、この点で民主党は困難な戦いを強いられる。トランプ氏の大統領選出と上院・下院での多数派獲得という「トリプルレッド(赤は共和党のシンボル色)」が実現すれば、共和党が掲げる政策の推進力が一段と増大することとなる。
共和党がこのほど公表した政策綱領では、中国に対する強硬姿勢とともに、「トランプ減税」の恒久化、不法移民対策としての「国境の壁」の建設推進、米国の自動車産業の再興とEV(電気自動車)義務化の中止、原油や 天然ガスなどのエネルギー生産規制の撤廃などを重点政策として掲げている。巨額の政府債務を抱える米国では歳出削減策が不可欠な状況にあり、米国経済の再建に向けてどこまで強硬に財政拡張路線をとれるかは不透明な部分もある。選挙前の有権者への「リップサービス」の感は否めないものの、防衛力強化によりグローバルでの紛争が沈静化し、米国内での原油増産に伴いエネルギー価格が低下した場合、インフレ対策という重点政策の一つを果たすことが可能になる。
●防衛関連の思惑で三菱重株に浮揚力
トランプラリーのなかで株式市場が注目するのが、まずは防衛関連セクターだ。トランプ氏が米大統領を務めた2017年1月~21年1月は、世界的にみて軍事衝突が沈静化した時期とされる。市場でも「トランプ氏は戦争より平和的な経済繁栄を指向する人物であり、地政学リスクが後退すれば株式市場の懸念材料が一つなくなることとなる」(中堅証券ストラテジスト)との声がある。半面、世界平和を生み出すためには、一定の軍事力が必要との見方は多く、米国が同盟国に対し軍事的な協力姿勢を一段と強く要求するシナリオが存在する。
防衛力強化の流れは日米の協力関係を通じて、三菱重工業 <7011> [東証P]や川崎重工業 <7012> [東証P]、IHI <7013> [東証P]を含む重工大手の防衛関連事業の業績を押し上げる効果をもたらすとの期待は強く、各社の株価に大きな浮揚力が掛かっている。防衛省の調達実績をみると、契約金額(22年度)では三菱電機 <6503> [東証P]やNEC <6701> [東証P]、富士通 <6702> [東証P]、コマツ <6301> [東証P]、日立製作所 <6501> [東証P]、出光興産 <5019> [東証P]、ダイキン工業 <6367> [東証P]、ジーエス・ユアサ コーポレーション <6674> [東証P]などが上位企業に入っている。
株式市場で防衛関連株と位置付けられてきた中小型の代表銘柄には石川製作所 <6208> [東証S]や豊和工業 <6203> [東証S]、東京計器 <7721> [東証P]がある。過塩素酸アンモニウムの防衛向け需要が拡大しているカーリット <4275> [東証P]や、情報表示システムなどを供給する日本アビオニクス <6946> [東証S]、防毒マスクの重松製作所 <7980> [東証S]は今期の経常利益予想で増益を見込む。日本製鋼所 <5631> [東証P]は防衛関連機器の受注高が大幅増となる見通しだ。PBR(株価純資産倍率)が1倍を下回る銘柄には、カーリットや重松製のほか、旧電電ファミリーの沖電気工業 <6703> [東証P]、救難飛行艇を手掛ける新明和工業 <7224> [東証P]、救助用資材・機材を製品群に持つ帝国繊維 <3302> [東証P]といった銘柄がある。
●シェールオイル・インフラ関連の中小型株も要マーク
原油関連株にも投資家の関心が集まりそうだ。 シェールオイルの増産で原油価格が下落した場合は、石油元売り企業などの株価に下押し圧力が掛かることが見込まれる。しかしながら日揮ホールディングス <1963> [東証P]や千代田化工建設 <6366> [東証S]、東洋エンジニアリング <6330> [東証P]などエンジニアリング各社において、新規の開発プロジェクトへの参画が明らかとなった場合は、株価への上昇圧力が高まることも想定される。
原油・ガス関連での設備投資の恩恵を受けられそうな銘柄もマークされることとなりそうだ。農業向け刈払機や高圧ポンプを手掛ける丸山製作所 <6316> [東証S]は、米国でのシェールガス掘削作業向けにポンプの新製品を投入。クレハ <4023> [東証P]はシェールオイル・ガスの掘削材料で、高強度・生分解性などの特質性を持つPGA(ポリグリコール酸)樹脂を供給する。石油プラント向けの流量計で強みを持つオーバル <7727> [東証S]や、原油や天然ガスの反応・抽出・分離に用いる触媒向けの内部装置「スクリーン・インターナル」を製造するナガオカ <6239> [東証S]、遠距離送水に使用する高耐久性の大口径ホースを取り扱うクリヤマホールディングス <3355> [東証S]にも物色の矛先が向かう可能性がある。
加えて、トランプ陣営は都市再建も公約に掲げている。国境の壁の建設と並行してインフラ再整備の流れが加速すれば、現地に進出する機械メーカーには需要面での追い風が吹くこととなる。道路舗装用ローラーの酒井重工業 <6358> [東証P]、建設用クレーンのタダノ <6395> [東証P]などの北米事業の押し上げ効果に期待が高まるほか、電炉メーカーの共英製鋼 <5440> [東証P]や大和工業 <5444> [東証P]も、現地工場の生産増加が期待できそうだ。ミニショベルの竹内製作所 <6432> [東証P]は今月16日に本社第二工場の火災発生を発表し、押し目を形成した。物的被害は送風機内部にとどまったという。同社の今期の北米での売上高構成比率は58%に上る見通しだ。
もっとも世界のどの国であれ、政治は「一寸先は闇」の世界であるのには変わりがなく、今後バイデン大統領が巻き返し、大統領選に勝利するシナリオが消えてなくなったというわけではない。民主党内ではバイデン氏の撤退論も浮上しており、後継者の名には現副大統領のカマラ・ハリス氏、カリフォルニア州知事のギャビン・ニューサム氏、ミシガン州知事のグレッチェン・ホイットマー氏などが挙がっている。気候変動対策を訴える民主党候補が次期大統領となった場合、EVや洋上風力発電、水素など次世代エネルギーに関連する銘柄に浮揚力が加わりそうだ。
株探ニュース