明豊ファシリ Research Memo(5):2024年3月期は会社計画を上回る増収増益を達成
■業績動向
1. 2024年3月期の業績概要
明豊ファシリティワークス<1717>の2024年3月期の業績は、売上高で前期比10.6%増の5,266百万円、営業利益で同11.5%増の1,068百万円、経常利益で同11.4%増の1,070百万円、当期純利益で同21.4%増の790百万円といずれも期初計画を上回る増収増益となり、各利益については過去最高を2期連続で更新した。建設資材の高騰や労務費上昇による建設コストの上昇が続き、発注者単独による建設プロジェクトの計画策定や遂行が難しくなるなか、高い専門性をもって発注者支援を行う同社サービスに対する引き合いが既存顧客だけでなく新規顧客からも活発化したことが業績の上振れ要因となった。
売上総利益率が前期比0.6ポイント低下したが、他社との共同提案による一部再委託分を売上高と売上原価に64百万円計上したためで、同要因を除けば概ね前期並みの売上総利益率であった。販管費は、優秀な人材確保を目的とした社員の処遇向上による人件費の増加や、将来の売上安定に寄与するDXのさらなる推進に伴う開発費の増加により、同8.1%増となったものの、売上総利益の増加で吸収する格好となった。なお、当期純利益の増益率が高くなったのは、期初から実施した社員の処遇向上の取り組みにより、賃上げ促進税制の適用要件に該当することになり、61百万円の税額控除が適用されたためだ。
分野別売上粗利益の構成比を見ると、オフィスが前期の17%から20%に、CREMが14%から15%に、DX支援が4%から7%に上昇した一方で、工場・研究所が19%から17%、公共が20%から19%、鉄道・学校他が25%から21%に低下した。鉄道・学校他については金額ベースでも減少したと見られるが、主には継続案件であるJR東日本(東日本旅客鉄道<9020>)の品川開発プロジェクト※がピークアウトしたこと、並びに大学の整備事業についても2024年3月期は売上貢献が少なかったことが要因と見られる。なお、JR東日本については大井町再開発プロジェクトや新宿再開発プロジェクトなど大規模プロジェクトが相次ぐことから、今後は堅調な売上が見込まれる。
※JR高輪ゲートウェイ駅西側に合計4棟の高層ビルと1棟の文化施設を建設し、新たな街区を開発するプロジェクト(2025年開業予定)で、2020年より着工を開始、予定事業費は約5,800億円と現在進行中の建設プロジェクトで最大規模となり、同社にとっても過去最大級のプロジェクトとなる。
公共分野については、構成比が若干低下したもののコロナ禍が収束に向かうなかで予算が建設プロジェクトに振り向けられるようになり、着実に新規案件を受注した。同社が会社ホームページ上で開示した受注実績だけでも2024年3月期は22件となっており、極めて高い勝率で受注しているようだ。傾向としては自治体の庁舎建替えプロジェクトが減少し、逆に少子化を見据えた公立学校の統廃合を目的とした基本計画策定プロジェクトや、公共施設の維持保全に係る支援業務などが増えた印象だ。また、目新しい案件として文部科学省から「グローバル・スタートアップ・キャンパスフラッグシップ拠点(仮称)整備に係る基本計画策定に関する調査・検討事業」を受注した。日本におけるイノベーション創出を強化していく観点から、海外大学と連携しつつ、ディープテック分野に特化した研究機能とスタートアップ・インキュベーション機能を兼ね備えたグローバル・スタートアップ・キャンパスのフラッグシップ拠点を整備するための基本計画策定を目的とした調査・検討事業となる。2024年3月末で納品が完了しており、2025年3月期も次のステップに進むためのCM業務を受注するものと見込まれる。
また、「働き方改革」をテーマとしてオフィス改革に関するコンサルティング業務を経済産業省や外部省などで既に受注しているが、こうした取り組みが他の省庁や独立行政法人などにも広がる兆しが出てきている。具体的には、(国研)新エネルギー・産業技術総合開発機構から「オフィス環境整備計画の立案に係る調査」を新たに受注しており、これまでの蓄積したノウハウが生かされたものと考えられる。このため、今後も他の省庁や独立行政法人などで受注を獲得する可能性は高いと弊社では見ている。また、将来的に省庁の大規模移転などがあった場合にも、難度の高い大規模オフィスの竣工時同時入居プロジェクトを多く手掛けてきた同社にとっては、受注獲得の好機となる。
そのほか、SDGsに対する企業の関心が高まるなかで、2021年夏より開始した脱炭素化支援コンストラクション・マネジメントサービスの引き合いも好調で、2023年4月には脱炭素CM部(10名)を新設、GXソリューションチームを中心とした専門技術者によって、脱炭素化ロードマップ策定や具体的な脱炭素化施策を支援するとともに、ZEBなどの認証取得においても基本計画段階からの顧客の高い環境要求水準に対応している。現在、建設プロジェクトにおいては脱炭素化への取り組みが必須テーマであり、今までよりも高い専門性が求められるため、同社の活躍余地も広がっていると見られる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
《SO》
提供:フィスコ