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1717 明豊ファシリ

東証S
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PER PBR 利回り 信用倍率
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時価総額 113億円
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明豊ファシリ Research Memo(2):「フェアネス」「透明性」を企業理念として掲げるCM業界のパイオニア(1)


■事業概要

1. コンストラクション・マネジメントとは
コンストラクション・マネジメント(CM)とは、米国において普及した建設生産・管理システムである。具体的にはコンストラクション・マネジャー(CMr)が技術的な中立性を保ちつつ、発注者の代行者または補助者となって発注者側に立ち、基本計画作成や工事発注方式の検討、設計者選定支援、設計マネジメント、施工マネジメント等各種マネジメント業務を通じたコスト管理、工事進捗管理などを行う発注者支援サービスのことを指す。明豊ファシリティワークス<1717>はCM事業(発注者支援事業)を専業とした国内の先駆け的な唯一の東証上場企業である。

同社のサービス契約形態の主流である「ピュアCM方式」とは、同社と発注者がCM業務委託契約(マネジメントフィー契約)を結ぶ方式で、設計や施工会社との契約は発注者が直接行う。同社の売上高に計上されるのはマネジメントフィーのみであり、売上原価としてマネジメントに関わるコスト(主に労務費)などが計上される。

2019年3月期までは売上高の一定割合を「アットリスクCM方式」※で占めていたが、2021年3月期以降はほぼすべてが「ピュアCM方式」の案件に切り替わっている。売上高は2015年3月期をピークに「アットリスク方式」の案件が減少したことにより減収傾向を辿ってきた一方で、利益ベースで成長が続いているのは「ピュアCM方式」の売上が順調に増加してきたことが要因である。今後も「ピュアCM方式」での契約が主流になると見られる。

※「アットリスクCM方式」とは同社が発注者に代わって施工会社と直接、工事請負契約を結ぶ方式で、売上高はマネジメントフィーに工事管理フィー、建設工事の実費額(コスト)が加算されることになる。売上原価にはマネジメントフィーや工事管理フィーにかかる社内コストと、発注者が承認した建設工事の実費額(オープンブック方式)が含まれる。工事実費額が売上高と売上原価に同額で計上されるため、「アットリスクCM方式」の売上総利益率は低くなる。


2. 「明豊のCM」の特徴
同社は経営理念に「フェアネス」と「透明性」を掲げ、プロが供給側に偏在するなかで、発注者側に立つことに徹した発注者支援をメイン業務としている。CM方式の最大のメリットは、一般的な一括請負方式と比較して発注プロセスと工事項目別コストを発注者と可視化されたなかで共有し、複数の選択肢から顧客が納得する最適な方法を選択、実行できることにある。同社は今まで手掛けてきた数多くの事例から得られた実勢コストを社内でデータベース化しており、発注者側に立った適正な費用の査定ができることを強みとしている。

「明豊のCM」方式では基本計画や、建築、電気・空調・情報通信・AV機器などの設備工事、環境評価に至るまであらゆる分野の専門家を社内に配置しており、顧客側に立った適正な基本計画づくりやコスト管理・査定を行っている。このため、過大に見積られた費用があれば発注者へ説明し、発注者が元請け業者に指摘し改善させる。また、顧客が事業の検討を開始した基本構想段階で精緻な予算を作成し、これを顧客の予算の上限(CAP)として管理し予算内での「プロジェクトの早期立ち上げ」に貢献するなど、顧客目標を確実に達成することで信頼を得て、高い継続受注率につなげている。

3. 同社の強み
CM事業者にとって競争力の源泉は人材である。特に大規模プロジェクトに対応するためには、発注者側に立ち、設計要件の整理やコスト管理・精査ができる専門家や工期管理などトータルマネジメントができる人材、大手施工会社や設計事務所などとの交渉において対等に渡り合える経験やノウハウなどを持ち合わせた人材をどれだけ揃えているかが重要である。

同社は、建設会社や施工会社、設計事務所など実際の現場を経験した人材を中途採用により厳選して獲得しており、建設プロジェクトの基本計画策定からコスト見積り・工期管理まですべての工程をカバーするプロフェッショナル集団と言える。CM事業を先駆けて展開してきたことで業界内でのブランド力も向上しており、こうした専門的なスキルを持つ人材を多数揃えていることが同社の強みである。特に、公共分野のプロポーザル方式※1によるCM案件では、評価基準の1つとしてCCMJ(認定コンストラクション・マネジャー)の保有資格者をどの程度配置しているかが含まれており重要指標となっている。同社は2024年4月末時点で96名と直近5年間で1.5倍に増員しており、独立系CM事業会社としては最大規模だ※2。このほかにも、脱炭素化ニーズの高まりによって重要性が増している環境分野に関連した資格となるCASBEE建築評価員※3が49名、LEED AP(LEED認定プロフェッショナル)※4が3名在籍するなど、多数の有資格者が揃っている。

※1 プロポーザル方式とは、発注者が業務の委託先を選定する際に、入札を希望する事業者に対して目的物に対する企画を提案してもらい、そのなかから優れた提案を評価項目別にポイント化し、総合点数が最も高かった事業者を選定する入札方式。
※2 独立系以外も含めると、大手設計会社の子会社である日建設計コンストラクション・マネジメント(株)が209名(2024年3月末)、(株)山下PMCが116名(2024年4月初)とそれぞれ同様のベースで増員しており、同社を含めて3社が業界トップ3と位置付けられている。
※3 CASBEE(建築環境総合性能評価システム)とは、建築物が地球環境・周辺環境にいかに配慮しているか、ランニングコストに無駄がないか、利用者にとって快適かなどの環境性能を客観的に評価するためのシステムで、評価を正しく実施できる者を評価委員として(財)住宅・建築SDGs推進センターが認証している。
※4 LEEDとは、米国グリーンビルディング協会(USGBC)が開発・運用している環境に配慮した建物に与えられる認証システム。LEED認証に関する知識・経験年数によってGreen Associate、AP、Fellowと3種類の資格に分かれている。


同社の成長の原動力となってきたのは、社員一人ひとりが経営理念である「フェアネス」と「透明性」を常に心掛け、高品質なサービスの提供によって、顧客から高い信頼を得てきたことにある。社員数257名(2024年3月末時点)の独立系企業において、新規顧客の開拓、特に大規模案件の開拓は一般的に困難だが、同社は既存顧客のうち9割近くが大手メーカーや金融機関、学校・医療法人、官公庁で占められており、新規顧客もその大半を既存顧客からの紹介によって獲得している。受注金額に占める既存顧客の比率はここ数年、70%台で推移しているが、これは同社のCMサービスを利用した企業から継続してプロジェクトの依頼を受けているためで、顧客からの信頼性の高さの裏付けともなっている。また、LEGOLAND Japan(同)やSAPジャパン(株)、ロシュ・ダイアグノスティックス(株)、タイコエレクトロニクスジャパン(同)など大手外資系企業の日本拠点の案件を多く手掛けていることも特徴の1つである。

一方で、同社は信頼関係の構築に関して、顧客だけでなく利害関係者となる元請けの建設会社とも良好な関係を構築している。最近では、着工後における施工者からの改善提案など発注者側が理解し難い専門的な検討事項についても、同社が間に立って発注者に丁寧に説明することでスムーズに話が進むといった点が高く評価されている。利害関係者からであっても真に顧客の役に立つ提案については真摯に向き合う「フェアネス」「透明性」の経営理念が、顧客に対してだけでなくすべての関係者に対して実践されている証左と言える。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)

《SO》

 提供:フィスコ

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