決算シーズン接近で見直し! 今12月期「増額有望」の躍進期待6銘柄 <株探トップ特集>
―上期決算発表シーズン迫る、上値期待の増額修正“先回り候補”をピックアップ―
12月期決算企業の24年1-6月期決算発表が7月下旬から本格化してくる。決算発表シーズンに向けてマーケットの関心が高まるのが業績予想の修正だ。上方修正が期待される銘柄には、決算発表の接近につれて先回り買いの動きが出る傾向があり、シーズン前のこの時期に進捗率の高い銘柄を見直しておきたいところだ。今回は、24年12月期第1四半期(1-3月)に好調なスタートを切り、通期計画に対する進捗率が高水準で業績上振れする可能性が高いとみられる銘柄を探った。
●第1四半期は増益確保の一方で苦戦も目立つ
24年12月期の第1四半期決算を振り返ると、前年同期と比較可能な532社の経常利益(米国会計基準と国際会計基準は税引き前利益)の合計額は前年同期比で約8%増加した。JT <2914> [東証P]や花王 <4452> [東証P]など値上げ効果で利益を大きく伸ばすものが多かったほか、輸出関連企業は為替の円安基調が続いたことが追い風となった。一方、サービスや卸売などは苦戦を強いられる企業が目立ち、社数ベースでは半数近くが減益または赤字だった。
第1四半期決算では中国や欧州といった海外景気の減速など先行きに対する懸念から、業績が良好でも通期予想を上方修正する動きは限定的だった。上期決算でも業績見通しへの慎重な姿勢は続くとみられるが、こうしたなかで業績上方修正に踏み切る企業は一段の注目を集めそうだ。以下では、12月期決算企業を対象に、(1)第1四半期(1-3月)経常利益の通期計画に対する進捗率が30%を超え、かつ同進捗率が過去5年平均を上回る、(2)第1四半期の経常利益が前年同期と比べ20%以上増加、といった条件を満たす銘柄の中から6社を上方修正先回り候補としてリストアップした。
●TOYOは3年連続で上期決算と同時に上方修正
TOYO TIRE <5105> [東証P]の24年1-3月期業績は経常利益が318億8000万円(前年同期比2.0倍)と四半期ベースで過去最高益を達成した。アジアを中心とした安価なタイヤの流入などで販売量は減少したものの、付加価値の高い重点商品の販売強化に加え、海上輸送費の低下や為替の円安推移など外部環境が好転したことが追い風となった。通期計画に対する進捗率は46.9%に達する。また、第2四半期以降の想定為替レートを1ドル=135円と実勢より25円も円高に設定しているほか、ここ3年連続で上期決算発表と同時に通期業績見通しを上方修正した履歴もあり、上方修正期待は強い。配当の上積み余地もありそうだ。指標面では予想PER9倍前後、PBR0.9倍台で、配当利回りも4%近辺と高く、3拍子揃ったバリュー株としてもマークしたい。
●日機装の第1四半期利益は4倍化、円安の恩恵も
日機装 <6376> [東証P]はエネルギーや化学業界など幅広い分野に展開する特殊ポンプのリーディングカンパニー。また、独創的かつ高度な技術力を強みとし、航空機向けCFRP(炭素繊維強化プラスチック)製カスケードを世界で初めて開発。現在でも世界シェア9割超を握るグローバルニッチトップ企業だ。人工透析装置のパイオニアでもある。1-3月期業績は脱炭素化に向けた需要の活況が続くなか、LNG関連や水素ステーションなどの手持ち案件が進捗したことに加え、値上げや円安効果もプラスに働き、税引き前利益33億1500万円と前年同期比3.8倍に膨らんだ。第1四半期実績の通期計画(91億円)に対する進捗率は36.4%と高水準にあるほか、想定為替レートは1ドル=140円の設定で上振れ余地は大きそうだ。
●恵和は市場回復でニッチトップの強み発揮へ
恵和 <4251> [東証P]はニッチな分野で活躍する高機能フィルムメーカー。光拡散フィルムはハイエンドモデルのノートパソコン、タブレット、車載モニター向けで世界高シェアを有し、米アップル<AAPL>のサプライヤーとしても知られる存在だ。前期は市場低迷と在庫調整の長期化で苦戦を強いられ大幅な減収減益に陥ったが、足もとの1-3月期は経常利益12億7100万円(前年同期比7.8倍)と急回復に転じている。パソコンの世界出荷台数が底打ちをみせるなか、主力の光拡散フィルム「オパルス」、直下型ミニLED液晶ディスプレイ向け複合拡散板「オパスキ」の販売が大幅に増加したほか、為替差損益が改善したことも利益を押し上げた。第1四半期の経常利益は上期計画を超過し、通期計画に対しても進捗率45.7%と高水準で上振れする確度は高そうだ。
●サカタINXは積極的な株主還元姿勢も注目
印刷インキ世界大手のサカタインクス <4633> [東証P]は足もとで業績が急改善している。前期はこれまで利益を圧迫してきた原材料価格が落ち着きをみせてきたことに加え、値上げの浸透やコスト削減なども寄与し、経常利益段階で7期ぶりとなる最高益復帰を果たした。24年12月期は減価償却費の増加などが重荷となって減益予想を示すが、第1四半期は経常利益39億9900万円(前年同期比29.2%増)と対通期計画進捗率が3割を超える好スタートを切った。アジアを中心に拡販が進んだうえ、原価低減なども利益拡大につながった。また、決算発表と同時に10億円規模の自社株買いを実施すると発表。中期経営計画で総還元性向50%以上またはDOE2.5%以上を目標に掲げており、PBR1倍以上を目指して株主還元策を強化中にあることも注目ポイントだ。
●建設技研は第1四半期だけで通期計画の7割に到達
建設技術研究所 <9621> [東証P]は道路や河川で豊富な実績を持つ総合建設コンサルタント大手。政府が国土強靱化施策や防災・減災の取り組みを進めるなか、前期まで7期連続の増収増益と安定成長が続く。1-3月期業績は収益性の高い大型案件の完成が前倒しで計上されたこともあって、売上高291億8900万円(前年同期比17.9%増)、経常利益61億400万円(同61.5%増)といずれも四半期ベースの過去最高を記録した。第1四半期経常利益の通期計画85億円に対する進捗率は71.8%に達しており、業績上振れが濃厚とみられる。24年12月期は従業員の負荷軽減や投資強化によって減収減益を見込むが、同社の期初予想は保守的な傾向が強く業績上振れの公算は大きい。台風シーズンを前に水害対策関連としても要注目だ。
●正興電は上期大幅増額で通期上振れも期待
正興電機製作所 <6653> [東証P]は電力や上下水道向け制御装置を主力とするほか、自社データセンターを核としたクラウドサービスなども手掛ける。九州電力 <9508> [東証P]や日立製作所 <6501> [東証P]とのつながりが強く、安定した収益基盤を背景に成長を続けている。1-3月期は電力部門で発電・変電所向け遠隔監視システムや配電機器製品の販売が伸びたことに加え、遊休地の売却に伴う固定資産売却益を計上し、経常利益は9億9700万円(前年同期比53.6%増)と過去最高益を更新した。好調な業績を踏まえ、上期の同利益予想を11億9000万円(従来は8億8000万円)に大幅上方修正したが、通期計画(20億5000万円)は据え置いており、業績上振れに含みを持たせている。
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