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「上場廃止にチャンスあり」で、元手を200倍にした技
すご腕投資家さんに聞く「銘柄選び」の技 羽根英樹さんの場合-第1回
■羽根英樹さん(50代・男性)のプロフィール
約30年間で、元本数百万円を200倍に増やした兼業投資家。資産拡大の原動力が、TOB(株式公開買い付け)の期待が高まった銘柄に飛び乗り、モメンタム(騰勢)を狙うイベント・カタリスト投資。この投資法が定着したのは2010年頃で、それより以前に取り組んでいたコモディティ(商品)取引の成功体験から着想を得ている。イベント・カタリスト投資では、どのような材料に株価がポジティブに反応しやすいかを大量の事例から検証し、勝ち技を増やしている。
・「本コラム」の記事一覧を見る
最近、株式市場で注目を集めているテーマと言えば、「生成AI」「データセンター」「半導体」が真っ先に挙がるだろう。しかし、忘れてならないのが、「上場廃止」だ。
2023年に東京証券取引所が上場企業に企業価値向上への取り組みを促し始めたことで、上場維持へのハードルが高くなり、TOB(株式公開買い付け)などに応じる形で上場廃止を選択する企業が増え始めている。
こうしたTOBに以前から注目して、資産を膨らましてきたのが、今回から登場する億り人の羽根英樹さんだ。注目するのは、株価モメンタム(騰勢)。投資効率を上げるため、TOB実施が明るみに出てから株価の上値を追えそうなケースに絞って参戦する。
その具体的な取り組みについて、これから2回に分けて紹介する。1回目は、最近の成功事例について見ていく。
■今年上場廃止となった主な銘柄(予定を含む)
焼津水化のTOB合戦を想定し、先回り買い
最近の成功例は、2023年後半から24年3月にかけてTOB合戦に発展した、天然調味料メーカーの焼津水産化学工業<2812>(現在は上場廃止)がある。
同社をTOBで24年3月下旬に全株式を取得したのは、焼津水化の取引先で、いなば食品系の特別目的会社である「Jump Life」(ジャンプライフ)だった。
しかし、最初にTOBを表明したのは、ジャンプライフではなく国内投資会社のYJホールディングス(YJHD)で、23年8月4日のことだった。
焼津水化は、YJHDのTOBに賛同を示していたのだが、その後、他社が割り込むTOB合戦に発展し、最終的には、いなば食品系のジャンプライフとなる異例の事態になった。
TOB合戦を想定したポイントは2つ
羽根さんが焼津水化の保有に動いたのは、23年9月。YJHDがTOBを表明した同8月から間もない時期だった。同社株は既に材料に反応して急騰していたが、さらなる上値を追えると判断した。
というのは、YJHDのTOB表明後にアクティビストやファンドが同社株の大量保有報告書を提出し、TOB合戦が激しさを増すと見たからだ。
焼津水化株の大量保有に動いたアクティビストは、旧村上ファンド系の南青山不動産。他の旧村上ファンド系を加えると、9月26日時点でその保有比率は10.36%となった。
彼ら以外のアクティビストも大量保有に動き、シンガポールの投資会社の3Dインベストメント・パートナーズの保有比率は同9月19日時点で9.7%となっている。
■焼津水化のチャート(2023年5月~24年6月)
出所:みんかぶ
6%のリターンでも良しとする理由
焼津水化株の取得を、羽根さんが開始したのは23年9月。旧村上ファンド系が大株主として浮上した直後だ(上のチャート)。当時の株価は1200円台になる。
利確は約半年後の24年3月、先のいなば食品系のジャンプライフがTOB価格を1350円から1438円に引き上げたタイミングだ。これによって、今回のリターンは買値の+6%となった。
半年ほどの保有で得たリターンは小幅にとどまったが、本人にとっては、率よりも読みが的中した点で、会心の取引と受け止めている。というのも、羽根さんが重視するモメンタムとは、株価の上昇率の大きさではなく、「株価の上振れが着実に発生する」ことだからだ。
本人が着実な上昇を見極めるうえで取り組んでいるのが、過去の事例の徹底した分析だ。「この材料が出ると、株価がポジティブに反応する」という経験則を磨き上げ、それに則った銘柄に資金を投じることを心がけている。
焼津水化のTOB合戦も、過去の同じような事例から想定した。それは、5年ほど前に複数の米国の著名ファンドなどが参戦したケースだった。
※当該情報は、一般情報の提供を目的としたものであり、有価証券その他の金融商品に関する助言または推奨を行うものではありません。
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取材・文/真弓重孝、高山英聖
イラスト:福島由恵
約30年間で、元本数百万円を200倍に増やした兼業投資家。資産拡大の原動力が、TOB(株式公開買い付け)の期待が高まった銘柄に飛び乗り、モメンタム(騰勢)を狙うイベント・カタリスト投資。この投資法が定着したのは2010年頃で、それより以前に取り組んでいたコモディティ(商品)取引の成功体験から着想を得ている。イベント・カタリスト投資では、どのような材料に株価がポジティブに反応しやすいかを大量の事例から検証し、勝ち技を増やしている。
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最近、株式市場で注目を集めているテーマと言えば、「生成AI」「データセンター」「半導体」が真っ先に挙がるだろう。しかし、忘れてならないのが、「上場廃止」だ。
2023年に東京証券取引所が上場企業に企業価値向上への取り組みを促し始めたことで、上場維持へのハードルが高くなり、TOB(株式公開買い付け)などに応じる形で上場廃止を選択する企業が増え始めている。
こうしたTOBに以前から注目して、資産を膨らましてきたのが、今回から登場する億り人の羽根英樹さんだ。注目するのは、株価モメンタム(騰勢)。投資効率を上げるため、TOB実施が明るみに出てから株価の上値を追えそうなケースに絞って参戦する。
その具体的な取り組みについて、これから2回に分けて紹介する。1回目は、最近の成功事例について見ていく。
■今年上場廃止となった主な銘柄(予定を含む)
銘柄名<コード> | 上場廃止日 | 銘柄名<コード> | 上場廃止日 |
スノーピーク<7816> | 07/09 | T&K<4636> | 04/25 |
JSR<4185> | 06/25 | 東京楽天地<8842> | 04/02 |
ウェルビー<6556> | 06/11 | シミックHD<2309> | 03/28 |
アウトソシン<2427> | 06/06 | 菱洋エレクトロ<8068> | 03/28 |
グローセル<9995> | 05/30 | リョーサン<8140> | 03/28 |
サムティ<3244> | 05/30 | JBR<2453> | 03/25 |
ベネ・ワン<2412> | 05/20 | システム情報<3677> | 02/07 |
ベネッセHD<9783> | 05/17 | ケーヨー<8168> | 01/04 |
出所:日本取引所グループ、注:東証プライム銘柄のみ
焼津水化のTOB合戦を想定し、先回り買い
最近の成功例は、2023年後半から24年3月にかけてTOB合戦に発展した、天然調味料メーカーの焼津水産化学工業<2812>(現在は上場廃止)がある。
同社をTOBで24年3月下旬に全株式を取得したのは、焼津水化の取引先で、いなば食品系の特別目的会社である「Jump Life」(ジャンプライフ)だった。
しかし、最初にTOBを表明したのは、ジャンプライフではなく国内投資会社のYJホールディングス(YJHD)で、23年8月4日のことだった。
焼津水化は、YJHDのTOBに賛同を示していたのだが、その後、他社が割り込むTOB合戦に発展し、最終的には、いなば食品系のジャンプライフとなる異例の事態になった。
TOB合戦を想定したポイントは2つ
羽根さんが焼津水化の保有に動いたのは、23年9月。YJHDがTOBを表明した同8月から間もない時期だった。同社株は既に材料に反応して急騰していたが、さらなる上値を追えると判断した。
というのは、YJHDのTOB表明後にアクティビストやファンドが同社株の大量保有報告書を提出し、TOB合戦が激しさを増すと見たからだ。
焼津水化株の大量保有に動いたアクティビストは、旧村上ファンド系の南青山不動産。他の旧村上ファンド系を加えると、9月26日時点でその保有比率は10.36%となった。
彼ら以外のアクティビストも大量保有に動き、シンガポールの投資会社の3Dインベストメント・パートナーズの保有比率は同9月19日時点で9.7%となっている。
■焼津水化のチャート(2023年5月~24年6月)
出所:みんかぶ
6%のリターンでも良しとする理由
焼津水化株の取得を、羽根さんが開始したのは23年9月。旧村上ファンド系が大株主として浮上した直後だ(上のチャート)。当時の株価は1200円台になる。
利確は約半年後の24年3月、先のいなば食品系のジャンプライフがTOB価格を1350円から1438円に引き上げたタイミングだ。これによって、今回のリターンは買値の+6%となった。
半年ほどの保有で得たリターンは小幅にとどまったが、本人にとっては、率よりも読みが的中した点で、会心の取引と受け止めている。というのも、羽根さんが重視するモメンタムとは、株価の上昇率の大きさではなく、「株価の上振れが着実に発生する」ことだからだ。
本人が着実な上昇を見極めるうえで取り組んでいるのが、過去の事例の徹底した分析だ。「この材料が出ると、株価がポジティブに反応する」という経験則を磨き上げ、それに則った銘柄に資金を投じることを心がけている。
焼津水化のTOB合戦も、過去の同じような事例から想定した。それは、5年ほど前に複数の米国の著名ファンドなどが参戦したケースだった。
※当該情報は、一般情報の提供を目的としたものであり、有価証券その他の金融商品に関する助言または推奨を行うものではありません。
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