日本電技 Research Memo(5):空調計装はグループで高シェアの一方、産業システムは未開拓
■事業内容
1. 計装の市場
ビル空調は、個別空調とセントラル空調に分けられる。個別空調は、例えば雑居ビルのように1室ずつエアコンを置いて管理する手法で、比較的小さなビルやホテルなどの小部屋を得意とし、ダイキン工業<6367>や日立製作所<6501>といった巨大メーカーが中心プレイヤーである。セントラル空調は、ビル全体の空調を建物の特定箇所で一元管理(中央監視)する方法で、中型~大型のビルやロビーなど様々な大空間を対象とするため、空調機器メーカーとサブコン※、日本電技<1723>のような空調をコントロールする空調計装企業の3者が一体となってバリューチェーンを形成している。空調計装の市場規模は1,600億円以上(同社調べ)と言われ、その6~7割程度をアズビルと同社を含むアズビル特約店が占めている。このため空調計装は、事実上、アズビル製の機器が業界スタンダードとなっている。また、唯一のエンジニアリング部門を有する専業企業というポジションにある同社は、アズビル特約店のなかで自他ともに認める高い技術力を誇っている。
※ サブコン:大型ビルの建設工事の全体をプロデュースするゼネコンから空調や電気、衛生関連設備といった工事を特化して請負う設備業者。
空調計装の市場は、ビルや工場などの建設に伴う新設工事と、その後のメンテナンスやリニューアル工事などの既設工事の2つに大別できる。近年の傾向として、建物個別の仕様・用途に合わせた空調設備の導入が求められるようになってきており、案件それぞれにカスタマイズできる技術力が必要とされる。例えば、病院の空調計装は精度に厳しく、温度管理はもちろん空気清浄と院内感染防止の観点から適切な湿度管理が要求される。特に、手術室には厳しい空調の基準が設けられており、換気差圧を利用して空気の清浄性を高める空調制御などが必要とされる。このほか、研究施設やクリーンルーム、美術館など、空調制御の技術が利用されている施設は世の中に意外と多い。ちなみに、収益性は新設工事に比べると既設工事の方が高く、元請となった場合さらに条件が良くなると言われている。
一方、産業システムは「計装エンジニアリング」の進化形と言え、制御技術を活かしてスマート化するなど工場のDX(デジタルトランスフォーメーション)を進め、工場全体や生産ラインにおける人的作業を自動化・省人化し、効率化やコスト削減を進めている。こうした工場のなかでも、食品・薬品・化学品は他の産業と比較して人手に依存する現場が多いことから、今後の人手不足を考えると自動化・スマート化の余地は大きいと見られている。特に食品メーカーでは、製造業全体のなかで最も従事者数が多いため、メーカーも自動化やスマート化への関心が高い。しかし、自らスマート化するノウハウがないうえ、同社のようなスマート化を進めることができる企業もほとんどないため、市場はまったくの未開拓状態と言える。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
《SO》
提供:フィスコ