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3104 富士紡ホールディングス

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富士紡HD Research Memo(6):SiCウエハー用途の研磨材開発のパイオニア


■富士紡ホールディングス<3104>の業績動向

2024年3月期は中核事業である研磨材の受注減により営業利益は前期比42.2%減となったが、一方で、明るい材料として注目されるのが、次世代パワーデバイスとして期待されるSiCウエハー用途向け研磨材がいよいよ本格的に市場投入されたことである。主な最終用途市場は電気自動車(EV)のインバータ向け、再生可能ネルギー発電設備(太陽光発電、風力発電、系統用蓄電地など)のパワーコンディショナー向けなど脱炭素社会の「切り札」として大いに期待されている。同社では、これまでSiCウエハー向け研磨材の研究開発・試作に取り組んできており、今回、欧米や中国等のSiCパワー半導体の有力メーカーに対して、高性能・高品質研磨材(ソフトパッド)を開発し、先行者として高いシェアを確保している。

2. セグメント別業績概要
(1) 研磨材事業
主力の超精密加工用研磨材は、半導体デバイス向けの「CMP用途」が前期比6%の受注減、「シリコンウエハー用途」が同21%の受注減となった。半導体市場の一部用途では2023年6~7月期に需要が底入れし緩やかな回復基調となっている。特に主力市場のCMP用途から受注がいち早く回復している。「ハードディスク用途」も同6%の受注減となったが、データセンター向けハードディスクの更新需要がやっと動き始めている。そして、「液晶ガラス用途」は同18%の受注減となった。テレビやパソコン、スマホなどデジタル機器の需要低迷による液晶パネルメーカーの急激な減産調整の影響を受けた。今後デジタル機器の需要が回復しても研磨材の顕著な受注回復は望めない。一方、「SiCウエハー用途」は同9%の受注増となった。これは2023年10~12月期は振るわなかったが2024年1~3月期には回復してきたためである。今後は、電気自動車(EV)をはじめとする車載向けやデータセンター向けに利用されるSiCパワー半導体分野では、旺盛な需要が継続するものと思われる。

この結果、売上高は前期比11.0%減の13,416百万円となり、営業利益は同61.5%減の1,087百万円(営業利益率8.1%)の減収減益となった。

CMP用途は微細化や高精細化と生成AIなど最先端半導体向け研磨材(ソフトパッド)であり、高付加価値製品として、高収益構造構築のベースとなっている。

(2) 化学工業品事業
一部の機能性材料では、化学業界全体は世界的な需要の減退に加え、半導体やスマホ、5G通信の基地局で使われる電子材料の市況悪化により厳しい事業環境が続いている。受注数量ベースでは不調となり、柳井工場と武生工場の一部製造ラインの稼働率が下がり利益を圧迫した。また、原材料・エネルギー価格高騰による製品コスト上昇部分については、2023年4月から価格転嫁を進めてきたが、年間を通して、本格的な収益改善効果が得られた。この結果、売上高は前期比1.2%増の12,519百万円となり、営業利益は同13.8%減の888百万円(営業利益率7.1%)の増収減益となった。

(3) 生活衣料事業
主力のB.V.D.は、昨年の暖冬の影響で秋冬商品が苦戦した。特に2024年1~3月期は売上高・利益ともに落ち込み、期初計画に届かなかった。B.V.D.のネット販売では、多様化する顧客ニーズや市場動向に応じ、SNS活用などデジタルマーケティングを強化している。一方、大手スーパーの店舗が撤退するなか、量販店販売は、今後益々減少傾向となる。同社はその部分をEC化を高めることでカバーしていきたいと考えている。

この結果、売上高は前期比4.5%減の6,952百万円となり、営業利益は同12.1%減の782百万円(営業利益率11.2%)の減収減益となった。

(4) その他(化成品)事業
化成品部門においては、医療機器用部品の受注が好調で、顧客からのニーズ増大が見込まれるため射出成形機を増設した。金型部門では、EV化シフトを含めた開発案件の端境期のため自動車向け金型は苦戦したが、小型金型事業のIPMがグループ入りしたことにより2024年3月期の安定収益は確保できた。貿易部門では、コロナ特需の反動と主力車種のモデルチェンジによる生産中止の影響で受注が減少した。

この結果、売上高は前期比9.5%増の3,219百万円となり、営業利益は同52.0%減の59百万円(営業利益率1.8%)の増収減益となった。


成長戦略を推進するうえでの健全な財務体質は盤石
3. 財務状況と経営指標
(1) 財務状況
2024年3月期末の財務状況は、資産合計は前期末比1,143百万円増加の62,512百万円となった。これは棚卸資産やその他流動資産が減少したが、受取手形及び売掛金や現金及び預金は増加したためである。また、固定資産は457百万円増加の38,822百万円となった。これは保有株式の時価上昇により投資その他の資産が増加したことなどによる。負債合計は前期末比91百万円増加の18,539百万円となった。流動負債は112百万円減少の11,756百万円、固定負債は203百万円増加の6,782百万円となった。これは、設備関係支払手形などのその他流動負債が増加したことなどによる。純資産合計は前期末比で1,052百万円増加し、43,973百万円となった。これは、剰余金の配当を1,261百万円実施し、自己株式の取得などにより487百万円減少したが、親会社株主に帰属する当期純利益の計上による増加が2,117百万円あったことなどによる。

(2) 経営指標
経営指標においては、有利子負債は1,433百万円と低水準で安定しており、また、財務の健全性指標である流動比率201.5%、自己資本比率70.3%、有利子負債比率3.3%と、財務体質は強固であり、中長期的な成長戦略を推進するうえでの経営基盤は盤石であると言える。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水啓司)

《SO》

 提供:フィスコ

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