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サインポスト Research Memo(5):イノベーション事業は小売業向けセルフレジや無人決済システムを開発・提供


■事業概要

3. イノベーション事業
サインポスト<3996>のイノベーション事業は、BtoC事業者の生産性を高める製品・技術の開発、TTGをはじめとするオープンイノベーションを通じた事業創造、BtoB向けソリューションの応用など、企業の経営・業務課題や社会課題の解決によって社会の発展に貢献する製品・ソリューションを展開している。

具体的には、独自開発の人工知能「SPAI」による画像認識技術、物体追跡技術をはじめ、マルチ決済技術、重量センサー技術、バーコード認識技術、文字認識技術など同社が保有する要素技術を活用し、小売業向けに自社開発した設置型AI搭載セルフレジ「ワンダーレジ」、書店向けセルフレジ「ワンダーレジ-BOOK」、POS機能付コンパクトセルフレジ「EZレジ」、完全スルー型の無人決済システム「スーパーワンダー」などを展開している。2020年3月には「ワンダーレジ」の普及に向けた取り組みを強化するため、NSD及びNSD先端技術研究所と資本業務提携した。

なお無人決済システム「スーパーワンダー」については、JR大宮駅構内の特設店舗における実証実験(2017年11月)、JR赤羽駅構内の特設店舗における実証実験(2018年10月~12月)を経て、2019年7月にJR東日本スタートアップと合弁でTTGを設立して「スーパーワンダー」の開発・販売を移管した。JR東日本とのオープンイノベーションで迅速な社会実装を推進し、小売業者向けに店舗運営の省人化や利用者の利便性向上を図る製品・ソリューションとして提供する。同社は技術提供など開発面で協業してTTGからロイヤリティ収入を得る。

現在は同社が設置型AI搭載セルフレジ「ワンダーレジ」、書店向けセルフレジ「ワンダーレジ-BOOK」、POS機能付コンパクトセルフレジ「EZレジ」を展開し、TTGが無人決済システム「スーパーワンダー」を展開する形となっている。

設置型AI搭載セルフレジ「ワンダーレジ」は、小売業者が抱える課題、特に店舗運営の効率化や人手不足の解消を目的として2017年3月に発表した。独自開発の人工知能「SPAI」や商品を特定する画像認識技術を活用しているため、商品を「筐体内のレジ台」に置くだけで、複数の商品やバーコードを一括認識して精算できることが特徴だ。利用者は「商品を置く&画面タッチ」だけで、簡単にセルフで買い物ができる。2018年6月に大手企業の社内弁当販売用として3台導入され、実利用を開始した。

「ワンダーレジ」の導入事例としては、JCB高田馬場オフィスのカフェテリア、ナンモダ百貨新冠本店、レゾナックドーム(大分トリニータのホームスタジアム)内の飲食売店「トリズキッチン」西コンコース内店舗、横浜高島屋「Foodies’ Port2」、野村不動産(株)が展開するサービス付小規模オフィス「H1O日本橋室町」「H1O日本橋小舟町」及びサテライト型シェアオフィス「H1T新宿西口」などがある。

書店向けセルフレジ「ワンダーレジ-BOOK」は、書籍販売機能を搭載した「ワンダーレジ」として2021年8月に開発した。利用客が購入する本をレジ台に並べてスタートボタンを押し、画面の案内に従って進むだけで、複数の本を一度に読み取って簡単に購入できるセルフレジである。2021年11月には銀座の老舗書店「教文館」に設置され、実店舗での稼働を開始した。その後、2021年12月にはREXT Holdings(株)が運営する「WonderGOO つくば店」に導入、2023年1月には(株)大垣書店が運営する「大垣書店 イオンモール京都桂川店」に導入(大垣書店としては2店舗目の導入)、2023年9月には(株)明文堂プランナーがフランチャイジーとして運営する「TSUTAYAレイクタウン」に導入されるなど、普及が進展している。さらに順次、新機能を追加して進化させており、2023年6月には防犯タグ解除機能を追加した。

POS機能付コンパクトセルフレジ「EZレジ」は2021年7月に開発した。中小の小売店舗を主ターゲットとして、シンプルな機能に絞り込んで月額9,800円~という低価格を実現し、セルフレジ導入のハードルを大幅に低減させた。(株)グッドライフが運営するミニコンビニ4店舗(ホンダテクニカルカレッジ関西校内売店など)に導入されているほか、2022年3月には(同)AVENDが運営する無人古着屋「SELFURUGI」に、2022年4月には味楽百貨店内のマンガ専門書店「マンガナイトBOOKS」に導入された。さらに2023年4月にはAVENDと業務提携し、「EZレジ」を活用して全国100店舗のフランチャイズ展開を目指している。

無人決済システム「スーパーワンダー」は、レジ作業を必要としない完全スルー型の無人決済システムである。利用者が店舗内で購入する商品を手に取ったり戻したりする都度自動で精算し、決済ゲートを通過する際に交通系ICカードや現金などの支払方法を選択して決済を完了させる。利用者は商品を手に取るだけで精算することが可能になる。会員登録が不要で誰でも使える、利用者に合わせて決済手段を選べる、優れたコストパフォーマンスなどを競合との差別化ポイントとしている。

TTGは、製品名をコンビニ型無人決済システム「TTG-SENSE」、極小店舗向け無人決済店舗システム「TTG-SENSE MICRO」、無人オーダー決済システム「TTG-MONSTAR」、ゲート制御型入退館システム「TTG-GATEWAY」などとして事業展開している。また2024年6月には、より省スペースでの利用を可能にした「TTG-SENSE SHELF」を発売する。商品棚1本から構成可能なため、より幅広い業態での利用が可能となる。

なおTTGは無人決済システムの普及加速・業容拡大に向けて(株)ファミリーマートと資本業務提携(2021年3月)、東芝テック<6588>と資本業務提携(2021年9月)、グローリー<6457>と資本業務提携、KDDI Open Innovation Fund 3号から資金調達(2021年10月)するなど、各社との資本業務提携を強化している。

TTGの導入事例としてはJR高輪ゲートウェイ駅構内、ファミリーマートのサピアタワー/S店、ファミリーマート岩槻駅店、紀ノ國屋の無人決済小型スーパーマーケットKINOKUNIYA Sutto 目白店、ANA FESTA GO 羽田B1フロア店、トモニー中井駅店、千葉新港の三菱商事エネルギー・タツノなどがある。さらに新業態での出店も推進しており、2023年5月には無人の化粧品販売店「ORBIS Smart Stand」としてグランデュオ立川店に導入(2024年4月末時点では合計4店舗に導入)され、2024年4月にはJR東京駅の東海道新幹線16・17番ホームのTOKYO BANANA expressに導入された。ファミリーマートは店舗無人化戦略を積極推進しており、2024年3月にはファミリーマート羽村駅/S店(JR東日本羽村駅)、2024年4月にはファミリーマートJR浮間舟渡駅/S店に導入され、ファミリーマートでの稼働店舗数は37店舗となった。

なお、無人レジや無人店舗決済システムの競合として今後は新規参入企業の出現も予想されるが、無人レジや無人店舗決済システムの関連市場そのものが未開拓の市場であり、同社には設置型AI搭載セルフレジ「ワンダーレジ」、書店向けセルフレジ「ワンダーレジ-BOOK」、POS機能付コンパクトセルフレジ「EZレジ」、完全スルー型の無人決済システム「スーパーワンダー」などの開発で先行している優位性がある。そしてTTGによる導入が加速していることも勘案すれば、当面の市場競合リスクは小さいと弊社では考えている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田雅展)

《SO》

 提供:フィスコ

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