【村瀬智一が斬る!深層マーケット】地政学リスクに警戒、決算を手掛かりに個別対応へ
地政学リスクに警戒、決算を手掛かりに個別対応へ
●不安定な動き続くも、押し目狙いのスタンスは維持
新年度入り後、日経平均株価は軟調な推移を続け、今週ついに4万円の大台を割り込んだ。国内機関投資家による益出しの動きが観測されたほか、米国で予想を上回る経済指標の発表や金融当局者によるタカ派発言が相次いだことも重石となった。これまで市場は早期の米利下げを織り込んできただけに、持ち高調整の売りが広がりやすい需給状況だった。とはいえ、国内機関投資家による益出しはピークを通過したとみられるほか、米国の金融政策についても次第に織り込みが進んでいくと考えられるため、押し目狙いのスタンスは維持しておきたいところだ。
日経平均株価(日足)は週末の下落で、ボリンジャーバンドの-2σ水準が意識されてきたほか、一目均衡表では「雲」の上限に接近しており、いったんは目先の底が意識されやすいだろう。一方、イスラエルとイランの対立先鋭化に伴う地政学リスクの高まりが、先行きを見定めづらくさせている。コモディティ価格の上昇がインフレ懸念を想起させることで、市場心理を神経質にさせそうだ。物色の流れとしては、今後本格化する決算発表を手掛かりとした個別対応が中心となろう。
●活躍が期待される「注目5銘柄」
◆KHネオケム <4189> [東証P]
「オキソ反応」をコア技術として、「基礎化学品」「機能性材料」「電子材料」の3領域に展開する化学メーカー。2023年12月期の連結営業利益は前の期比20.2%減の99億4600万円に落ち込んだが、2024年12月期の同利益は前期比18.6%増の118億円に回復する見通し。冷凍機油原料の生産能力を増強し拡販を目指すほか、需要が回復する化粧品原料の海外向け販売を強化する。株価は昨年10月安値とのダブルボトム形成を経て、足もとのリバウンドで13週、26週、52週移動平均線を明確に上放れた。
◆新日本電工 <5563> [東証P]
日本製鉄系の合金鉄最大手。合金鉄はほぼすべての鉄に添加される素材であり、強度や耐食性など鉄の様々な特性を向上させる。2023年12月期の連結営業利益は前の期比46.2%減の47億4100万円で着地。会社側は2024年12月期の業績予想を現段階では開示していないが、市場では業績回復を予想する向きは少なくない。なお、中長期経営計画(2024年~2030年)では、売上高は2023年12月期の764億円から27年12月期には950億円、30年12月期に1100億円以上への拡大を計画している。株価は52週線を突破してリバウンド基調を鮮明にしており、急落前に付けた昨年5月高値の356円が射程に入ってきた。
◆RS Technologies <3445> [東証P]
半導体製造装置向けテスト用ウエハ再生加工を手掛ける。再生ウエハのグローバルシェアは33%で業界トップ。また、中国のパートナーとの合弁を通じ、2018年に市場参入したプライムウエハ(新品のシリコンウエハ)を次の成長エンジンとして重視している。半導体市況の悪影響はあったが、2023年12月期の連結売上高、経常利益は従来予想を上振れて着地した。2024年12月期の売上高は前期比5.8%増の549億円、経常利益は同3.2%増の154億円の見通し。株価は1月23日に付けた3230円をピークに調整していたが、3月中旬のリバウンドで13週、26週、52週移動平均線を上放れてきている。直近の調整では収束をみせる25日、75日、200日線が支持線として意識されよう。調整一巡からの1月高値更新と、さらなるリバウンドに期待したい。
◆フューチャー <4722> [東証P]
ITコンサルティングサービスを提供。2023年12月期の連結営業利益は前の期比12.1%増の137億円で着地した。続く2024年12月期の同利益は前期比5.8%増の145億円の見通し。経営支援・DX(デジタルトランスフォーメーション)などを手掛けるリヴァンプの経営統合効果に加え、品質管理の徹底に人員リソースを配分し、新規受注の獲得に注力する。株価は狭いレンジでの推移が続くが、煮詰まり感が意識されてきている。上値抵抗線として機能する13週線突破からのリバウンドに期待したい。
◆日本カーボン <5302> [東証P]
電気製鋼用の人造黒鉛電極をはじめ、宇宙航空・産業分野向け炭素繊維、結晶シリコン製造などに用いられる高純度黒鉛、リチウムイオン電池の負極材などを手掛ける。2023年12月期の連結営業利益は前の期比37.2%増の65億7300万円で着地。続く2024年12月期の同利益は前期比8.0%増の71億円と4期連続の増益を見込む。Si半導体用途のファインカーボン需要を着実に取り込むとともに、人造黒鉛電極では売価の適正化、原価低減を図り、利益体質の改善を目指す。株価は2月半ばに急伸した後は高値圏での保ち合いが続くが、日柄調整を経て煮詰まり感が意識されてきた。
(2024年4月5日 記)
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