紀文食品 Research Memo(7):好調な国内が海外の苦戦をカバー
■業績動向
2. セグメント別の業績動向
セグメント別の業績では、海外食品事業が前年同期比で2ケタの減収減益となったが、国内食品事業が増収・大幅増益、食品関連事業が増収・増益となった。好調な国内の事業が海外事業の苦戦をカバーしたことで、連結全体でも増収増益を確保することができた。
(1) 国内食品事業
国内食品事業の売上高は59,171百万円(前年同期比1.2%増)、セグメント利益は2,249百万円(前年同期は191百万円のセグメント損失)となった。売上面では、おでんなどで暖冬の影響が若干生じたものの、健康志向食品として注目される主力の水産練り製品が、価格改定の効果もあって前年同期比4.4%増と期初から引き続き好調に推移した。なかでもすり身を原料とするカニカマは、高たんぱくなヘルシーさが健康志向の強い若者世代にも着目されて市場拡大が続いており、紀文食品<2933>も主力商品「したらば」を中心に前年同期比27.2%増と大きく売上を伸ばした。また、竹輪が同5.9%増、はんぺんが同11.5%増、さつま揚が同2.1%増と、食シーンの提案やSNSを活用したプロモーションなどが奏功して他の水産練り製品も軒並み前年同期を超える売上となったほか、同社独自の製法を用いたキャラクター蒲鉾「すみっコぐらしかまぼこ」や「シナモロール ポムポムプリンかまぼこ」、ワンハンドで食べられるさつま揚げスティックなどスティック状製品が、若い世代の顧客からの支持を得て販売を伸ばした。さらに正月商戦では、日本の伝統行事で文化でもある正月とおせち料理の大切さや慣習を次世代に伝え継ぐプロモーションとして「お正月プロジェクト」を特設ウェブサイトやSNSを通じて展開(2030年までを目標に継続の予定)、この結果、品揃えの優位性を活かして蒲鉾やシェアNo.1の伊達巻、栗きんとんなどを1つのパッケージに納めた利便性の高いセット商品が順調に売上を伸ばした。
このように好業績の一方で、夏の高温による需要減に加え競争環境が厳しくなってきたことで惣菜の売上が低迷、餃子など中華惣菜が前年同期比1.6%減、「糖質0g麺」など麺状製品が同14.2%減となった。中華惣菜は共働き家庭の増加を背景に拡大する冷凍食品との競争、麺状製品は糖質オフがブームとなるなか増加する他の健志向商品との競争が激化した影響が大きかったようだ。また、正月商戦は順調だったものの、様々な業態からの参入が増えて乱売気味となったお重詰めが同3.5%減となった。おでんも暖冬の影響で売上が減少した模様である。一方商事部門は、円安の影響により輸入農産品などが低迷したが、海外での需要拡大を背景に輸出製品が好調に推移した。
利益面では、利益率の低い商事部門の売上高構成上昇による事業ミックスの変化や原材料・エネルギー価格の高止まりはあったが、価格改定の浸透と主原料のすり身価格が落ち着きを取り戻したことで大幅な増益となった。好調なカテゴリーばかりでないなか、マクロ的な状況変化を克服して大幅増益となったことは注目に値しよう。
(2) 海外食品事業
海外食品事業の売上高は8,881百万円(前年同期比11.1%減)、セグメント利益は674百万円(同39.6%減)となった。売上面では、タイ国内向けは営業活動を強化したことにより、特にがんもや厚揚げなどの惣菜類が好調に推移するなど、同5.7%増と回復の足取りが確かとなってきた。しかし他のアジア圏、中国、米国ではインフレ懸念や先行き景況感の悪化見通しなどにより、消費者の生活必需品を優先する節約志向が強まってロープライス商品への購買シフトが見られたため、がんも、厚揚げ、大福など惣菜や農水産物などの仕入商材は堅調に推移したものの、ミドルプライスで主力のカニカマが同10.6%減、「Healthy Noodle(糖質0g麺)」は前年同期に大きく伸びた反動もあって同42.2%減と厳しい状況となった。なお中国は、タイで生産している商品にはサプライチェーンの面での大きな影響はなかったものの、処理水の絡みなどを背景に日本から現地外食店向けの商品展開が厳しくなった。利益面では、カニカマや「Healthy Noodle(糖質0g麺)」など高付加価値な自社製品の売上減少の影響により減益となった。
(3) 食品関連事業
食品関連事業の売上高は14,010百万円(前年同期比5.0%増)、セグメント利益は846百万円(同9.3%増)となった。食品関連事業の大半を占める物流事業において、グループ外の日配品の物量が一部で減少したものの、年末商戦を含め経済活動が活性化したことで外食店舗や百貨店、駅ビル、観光地へ向けた物量が大きく復調、加えて継続的に注力してきた新規顧客の獲得や料金改定の浸透も寄与し、売上高が伸長した。一方、人件費や電力費、燃料など輸送全般の費用増加などマイナス要素はあったものの、増収効果に加え、料金・料率の改定や物流増、配送コース見直しによる配送効率の改善、業務の見直しによる業務効率の改善などにより採算が向上し、セグメント利益は売上高の伸びを上回る増益となった。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
《AS》
提供:フィスコ