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4845 スカラ

東証P
461円
前日比
+3
+0.66%
PTS
456円
22:30 11/22
業績
単位
100株
PER PBR 利回り 信用倍率
23.5 2.02 3.47 3.75
時価総額 81.9億円

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スカラ Research Memo(7):共創型の新規プロジェクトが徐々に成果を見せ始める(1)


■スカラ<4845>の業績動向

2. 事業セグメント別動向
(1) DX事業
DX事業の売上収益は前年同期比21.6%減の2,949百万円、営業損失は128百万円(前年同期は200百万円の利益)となり、Non-GAAP指標での全社費用配賦前営業利益でも同62.5%減の199百万円と大幅減益となった。主要会社別で見ると、スカラコミュニケーションズが売上収益で同16.6%減の1,600百万円、営業損失で140百万円(同72百万円の利益)、エッグが売上収益で同46.9%減の658百万円、営業利益で同62.8%減の65百万円と主要2社が揃って大きく落ち込んだ。

このうち、エッグについてはデジタル田園都市国家構想交付金の案件(フレイル予防事業など)の獲得が進んだものの、前年同期の収益に貢献したGo Toトラベル事業が終了したほか、全国旅行支援事業の縮小、第3四半期に納品予定の自治体案件における開発費用を前倒しで計上したことが減収減益要因となった。ただ、期初段階でこれらのマイナス要因は見込んでおり、会社計画どおりの進捗であった。一方、スカラコミュニケーションズの業績悪化要因は、大手保険会社向けの新規開発案件が顧客事由により中断したことなどにより売上規模が縮小し、収益悪化要因となった。新規顧客の獲得については順調に進んでいるものの、こうしたマイナス要因をカバーするまでには至らなかった。

売上形態別で見ると、「i-シリーズ」などSaaS/ASPサービスによる月額課金収入は新規顧客の獲得により、前年同期比4.3%増の1,362百万円と着実に増加した一方で、従量制売上は同16.1%減の1,070百万円、一時売上は同56.1%減の516百万円とそれぞれ落ち込んだ。

ここ数年、注力している共創案件など大型案件化が期待できるプロジェクトの取り組み状況については以下のとおり。

a) デジタルIDと連携した施設予約システム
スカラコミュニケーションズが提携先のxIDと共同開発した「デジタルIDと連携した施設予約システム」については、2024年6月期第2四半期までに3自治体から受注を獲得しており、このうち京都府の京丹後市では2024年1月より運用が開始された。同システムでは、マイナンバーカードとの連携によるオンラインで施設での利用者登録が可能となるほか、クレジットカードやID決済によるオンライン決済にも対応しており、市民サービスの向上を目的に導入された。同社では2024年6月期末までに37自治体からの受注獲得を目標にしている。1件当たりの平均単価は570万円※となり大半は導入支援の際の一時売上となるが、課金収入なども入るため導入自治体数がさらに拡大すればストック収益として寄与することになる。

※平均単価=(「一時売上」+「当期発生月額売上」)÷「当期売上発生月数」。


b) 畜産DX
畜産DXとして、スカラコミュニケーションズが(株)エリートジェノミクスと共同開発し、2023年1月よりサービス提供を開始した乳牛ゲノム検査結果データ活用システム「eGプラス」が順調に稼働している。同システムは米国最大のゲノム検査会社であるNEOGEN社のシステムと連携しており、乳牛のゲノム検査結果を日本語で閲覧でき、様々な分析ができるスマートフォンアプリとなる。ゲノム分析をすることで乳牛改良を効率的に進めることが可能となり、欧米では広く普及しているが、日本国内では手軽にゲノム検査や分析を行うシステムがなく、同システムを開発することで酪農経営を支援していく。同社は一時売上となる開発料を2023年6月期に計上したほか、検査件数に応じて得られる利用料(500円/件)を売上計上している。2024年6月期第2四半期累計の月平均検査件数は976件で、売上高としては3百万円程度と小さいが今後も横展開が可能と見られ、安定収益源として育つものと期待される。

また、デザミス(株)、三井住友海上火災保険(株)と共同で、牛の遠隔診療や電子カルテ、指示書作成などの機能を備えた総合診療サポートツールとなる「U-メディカルサポート」を開発、2023年1月より提供を開始している。デザミスが開発した牛の行動モニタリングシステム「U-motion(R)※1」を通じて牛の健康状態を把握し、異変を察知してすぐに獣医師が往診できない場合に、酪農家はスマートフォンアプリ「U-メディカルサポート」を使って獣医師とコンタクトし、遠隔診療してもらうことが可能となり、診断遅れによる牛の健康状態の悪化を防ぐ効果が期待されている。また、獣医師にとっても同ツールを利用することで業務負荷が軽減するといったメリットがある。国内で飼育されている乳用牛は約137万頭、このうち約10万頭で「U-motion(R)」が利用されており、デザミスを通じて「U-メディカルサポート」についても順調に導入が進んでいる。「U-メディカルサポート」は、獣医師が支払う月額利用料※2のうち一定比率を同社の売上として計上するため提供開始直後の業績寄与は少ないが、導入施設数の増加や横展開により安定収益源としての貢献が期待される。「U-メディカルサポート」については今後も酪農家同士で情報共有できるチャット機能、獣医師同時のコミュニティとなる掲示板機能など新機能の開発を進めており、更なる普及拡大を目指している。

※1 牛の首に取り付けたセンサーが反芻・動態・横臥・起立などの主要な行動を24時間365日記録することで、牛の健康状態をリアルタイムに把握できるサービス。
※2 月額料金は1アカウント2万円、1事業所で5万円だが、酪農家は無料で利用できる。機能の追加により価格が変更となる可能性もある。ちなみに、畜産に関わる動物の診療施設数は全国で約4,000施設ある。


c)自治体向けフレイル予防事業
エッグが開発、提供するフレイル早期発見システム「ASTERII」がデジタル田園都市国家構想交付金採択事業として2024年6月期第2四半期までに3自治体※1から受注し、下期はさらに3件の受注獲得を目指している。自治体公式LINEを入り口として利用者はマイナンバーを使って個人認証を行い、スマートフォンでフレイル度判定チェックを行うことが可能となる。判定結果は自治体の管理システムに集約され、判定結果に基づき職員が介入指導を行うことでフレイル予防を行う仕組みとなっている。同システムを活用することで要介護支援者の増加が抑制され、健康増進と介護費用の負担軽減の効果が期待されている。1件当たりの平均単価※2は2,345万円となっており、システム導入に関わる「一時売上」の比率が多いものの、月額利用料も計上するビジネスモデルとなっており、導入自治体数が拡大すれば安定収益基盤にとなる。

※1 令和4年度に兵庫県多可町、鳥取県日野町、令和5年度に鳥取県米子市から受注した。
※2 平均単価=(「一時売上」+「当期発生月額売上」)÷「当期売上発生月数」。


なお、同社では新システムとして、フレイル判定データやKDB(国保データベース)、介護基幹システムなどの各種データを自動収集して、AIによる予測分析やフレイルハイリスク者を検知し、自治体職員に自動通知するソリューションを現在開発中で、2024年度内にリリースする予定となっている。超高齢化社会の到来とともに要介護者も増加の一途を辿るなか、社会保障費の軽減を図るソリューションとして普及拡大が期待される。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)

《SO》

 提供:フィスコ

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