rakumo Research Memo(5):SaaS事業の主要KPI指標はいずれも順調な進捗を示唆
■業績動向
2. 主要KPIの達成状況
一般的にrakumo<4060>に代表されるSaaS事業を行う企業の事業状況を把握するには、(1) MRR(Monthly Recurring Revenue:月間経常収益)、(2) チャーンレート(解約率)、(3) ユニットエコノミクス、の3つのKPIに注目するケースが多い。
(1) MRR(Monthly Recurring Revenue:月間経常収益)
サブスクリプション型のビジネスは月単位で契約することが一般的のため、毎月定常的に発生する収益を表すMRRを重要なKPI指標の1つとして活用することが多い。MRRは顧客数と1社あたり月間利用料金の乗数で計算されるが、まず同社の顧客数は順調な増加傾向が続いていることが確認できる。具体的には、2021年12月末時点での2,202社、2022年12月末での2,334社(前年比132社増)に対し、2023年12月末は2,442社(同108社増)と、着実に顧客者数が増加している。また、同社は効果的なユーザー数拡大のために1社あたりの潜在獲得ユーザー数の大きい大企業を中心に営業活動を行っており、顧客社数以上にユーザーのアカウント数を示すユニークユーザー数が増加している。具体的には、2021年12月末時点での44.8万人から2022年12月末には50.2万人へと前期比で12.1%増、そして2023年12月末には56.3万人と同12.2%増となり、ユニークユーザー数では前年と同等の高い伸び率を継続している。1社あたり販売額についても2020年12月期の38,883円、2021年12月期の42,395円、2022年12月期の45,627円に対して、2023年12月期は48,202円とこちらも順調に拡大が続いている。これはクライアントの成長に伴う追加IDの受注や広範囲な製品ラインナップを背景とした追加サービスの獲得などによるものである。
(2) チャーンレート解約率
チャーンレートは既存顧客の離脱状況を示す指標であり、解約率として表されることも多いKPI指標である。同社の解約率の推移をみると、2018年12月期以降、一貫して低い水準での推移となっており、近年は1%未満という極めて低い水準となっている。同社では2021年頃から解約に至る顧客の解約理由に関しての調査を実施し、新規顧客に対しての能動的なサポート体制を強化するなど、解約率の低減するためのカスタマーサクセス施策を実施している。また、業務の基盤ツールとして使用される製品という特性も低解約率につながっているとみられる。2023年12月末は0.57%という過去最低水準の解約率で着地している。
(3) ユニットエコノミクス
SaaSビジネスではユニット単位を顧客に設定することが多いため、顧客・製品・店舗などをユニット単位で経済性、または採算性を測定することが重要となる。ユニットエコノミクスを用いると1顧客あたりの経済性を数値として把握することが可能となる。そのため、もっとコストを投下してでも顧客数を増やすべきか、それとも収益の改善が必要なのかといった経済合理性の判断を行うことができる。ユニットエコノミクスが適正であれば、顧客獲得にかけるコストと顧客獲得後の収益バランスが取れており、事業として健全な状態であるといえる。ユニットエコノミクスはLTV(Life Time Value:顧客生涯価値=顧客の平均単価/解約率)をCAC(Customer Acquisition Cost:顧客獲得単価=顧客獲得コスト/新規顧客獲得数)で除して求められるが、同社は前述した通り平均単価上昇と解約率低下が続いており、高いLTVを実現しているとみられる。CACについては同社が顧客獲得コストを開示していないため正確な数値については不明だが、販管費の増加に対して新規顧客獲得数の増加分が大きいとみられるため、CACも低水準にとどまっているとみられる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 永岡宏樹)
《AS》
提供:フィスコ