rakumo Research Memo(3):Google及びSalesforceを機能拡張するSaaSツールが収益源
■事業概要
1. 事業概要
rakumo<4060>はITビジネスソリューション事業の単一セグメントで構成されている。なかでも、サブスクリプション型のビジネスモデルであり、継続成長率の高いSaaSサービスが2023年12月期売上高の91%を占める主力サービスである。世界的なクラウドプレイヤーであるGoogle社及びSalesforce社とのパートナーシップを有し、両社のクラウド上で「Google Workspace版rakumo」「Salesforce版rakumo」を提供している。クライアントはベンチャー企業から大企業まで業種、規模を問わず展開、2023年12月末時点での利用クライアント社数は2,442社へ着実に増加している。
Google Workspace版rakumoではGoogle社が提供するグループウェア「Google Workspace」と連携し、機能拡張したアドオンツールとして提供している。もともとGoogle Workspaceが一般ユーザー向けに提供が開始されたこともあり、rakumoでは企業がGoogle Workspaceを利用する際に不足する機能の補完や、より使いやすい画面の設計、より便利に利用できる機能を有しており、具体的には、共有スケジューラー(rakumoカレンダー)、共有アドレス帳(rakumoコンタクト)、電子稟議システム(rakumoワークフロー)、電子掲示板(rakumoボード)、経費精算システム(rakumoケイヒ)、勤怠管理システム(rakumoキンタイ)の6つのサービスに分類される。同様にSalesforce版rakumoでは共有カレンダーとカレンダー同期サービスを提供している(rakumoソーシャルスケジューラー及びrakumo Sync)。
また、rakumoのサービス価格はプロダクトごとに細分化されており、rakumoカレンダーでは1つのIDにつき月額150円、rakumoコンタクトでは100円、rakumoワークフローでは300円、rakumoボードでは200円、rakumoケイヒでは300円、rakumoキンタイでは300円などとなっている。また、複数のプロダクトをまとめて購入するパッケージプロダクトも取り揃えており、rakumoカレンダー、rakumoコンタクト、rakumoワークフロー、rakumoボードの4つの機能が利用できるrakumo Basicパックは490円と、単品購入合計の750円から割引された価格で購入が可能となっている。同様に全機能が利用できるrakumo Suiteパックも用意されている。昨今、SaaSサービスを手掛ける事業者においても値上げを実施する企業が増えているが、同社においても2024年4月1日より一部製品の利用料金改定を既に発表しており、新規契約に関して4月1日以降は全て新料金体系へ、既存契約については2024年4月1日以降に契約更新のタイミングを迎えたものから順次、新料金体系へ切り替わる形となる。今回、利用料金改定を実施するのはrakumoカレンダー、rakumoコンタクト、rakumoボードの3つの基本製品に加え、それらを含むrakumo Basicパック、rakumo Suiteパックのパッケージプロダクト2つの合計5製品となる。
2. 「rakumo」サービスの特徴
同社ではGoogle社及びSalesforce社という世界的に知名度の高いクラウドプレイヤーと強固なパートナーシップを有しており、これが同社の「rakumo」事業における大きな土台部分となっている。プラットフォームと良好な関係を築くと同時に、彼らの仕様に合わせた製品開発及びメンテナンスが重要となるが、同社の既存のサービスラインナップは、カバー範囲や顧客数が一定規模に達しており、これが参入障壁となることで先行者利益が享受できるかたちとなっている。なお、同社が提供するGoogle向けSaaSサービスは、Google Workspace上で提供される業務支援ツールだが、カレンダーや経費精算などプロダクトのカバー範囲も広く、多種多様な顧客のニーズに対応することも可能となっている。また、製品間のシステム連携により、重複入力や重複対応がなくなり、効率性の向上や作業ミスの低減にもつながる。
3. ビジネスモデル
主要サービスである「rakumo」の収益構造は、サービス料金を顧客企業の使用期間及びユーザー数に応じて定期定額契約(サブスクリプション)として課金することで、継続的な収益(リカーリングレベニュー)を得ることができる「サブスクリプション型リカーリングレベニューモデル」となっている。切り売り型ではなく、継続的なサービス提供が前提である。継続的な収益が積み上がっていくストック型ビジネスとしての安定性がありながら、新規契約数の増加に伴う高い成長も目指すことができるビジネスモデルである。年間契約が主体であり、契約金額を一括前払いで回収しているため、キャッシュ・フロー安定性が高いことも特徴として挙げられる。
また、販売チャネルにも特徴があり、(1) 販売代理店(販売パートナー)との密な連携、(2) 効果的なマーケティング施策によるクライアントからのネット経由からのアプローチ(インバウンド)を主体とした直接販売チャネルにより、効率的に販売促進が可能な仕組みを構築している。さらに、販売パートナーへの卸値が同社の売上高計上額となるため、販売パートナーへのマージンが営業費用として計上されず、SaaSサービスの追加売上高の多くがそのまま粗利として計上される仕組みとなっている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 永岡宏樹)
《AS》
提供:フィスコ