【植木靖男の相場展望】 ─TOPIX型の中小好業績銘柄の浮上に期待
「TOPIX型の中小好業績銘柄の浮上に期待」
●NT倍率低下の示唆するもの
日経平均株価は快進撃を続け、ついに3月4日に悲願の4万円大台に乗せた。昨年10月安値3万0487円を起点とする反騰相場においても、本年2月8日以降の上昇ぶりには目を瞠るものがある。その背景には、米半導体大手エヌビディア<NVDA>の急上昇がある。また、日本人の習性というべきか、一つの方向が定まると一気に同調性が高まる気質もプラスに働いたといえよう。かつて明治維新のとき、薩長土肥の軍勢が朝廷の錦の御旗を押し立てて進軍したのと同じ構図だ。エヌビディアの株価上昇こそ錦の御旗であったのだ。
しかし、3月8日にエヌビディアが反落すると、翌営業日の11日、東京市場は大混乱をきたし、雪崩を打つように急落した。だが、肝心の米国株式市場に大きな崩れはみられない。確かにエヌビディア株の存在は市場にとって大きい。だが、それだけをもって株式市場全体を測るのはリスクが大きい。
日経平均株価とTOPIXの倍率である「NT倍率」に視線を移してみよう。昨年後半にこの倍率は明確に上昇に転じたが、この3月に入ってから明らかに低下している。国内投資家は株式市場の指標として日経平均株価を重視するが、いうまでもなく全般市場を正確に測れるものではない。同指数はかつてその構成銘柄を次々と成長株であるハイテク株と入れ替えた。そのときはそれでよかったのだが、ハイテク株が下げると、指数の下げは実態以上に大きくなってしまう。事実、3月に入ってハイテク株が勢いを失うと、日経平均株価はあっという間に2200円も下げた。NT倍率の低下はハイテク株の下げが影響している。
●足もとの変調は自律反落の範囲内か
では、今後、株価はどう動くのか。日経平均株価をみると、この下げは単なるスピード調整なのか、はたまた本格的な下げ相場に入ったのか大いに悩むところだ。仮に本格的な下げに入ったとするなら、日経平均株価とともにTOPIXも下げる。NT倍率は上にも下にもいかないということになる。
だが、NT倍率が3月以降低下している事実からすれば、日経平均株価がなお下をみるにしても、TOPIXのいわゆるバリュー株(割安株)の浮上に期待できるのではないか。
だとすると、いまの実態株価はまだ本格的な下げ相場に入っていないようにみえる。米国株を先行指標とした場合、日本株だけが本格的な下げ相場に入ったとみるのはいかがなものか。加えて、世界の市場をみると、総じてどの国の株価も堅調だ。つまり、カネ余りなのだ。どの国もウクライナとロシア、イスラエルとハマスなどの紛争が続くなか、防衛費をはじめとする財政支出を拡大している。
だとしたら、しばらくは基調としての大きな下落は起こらないとみる。ただし、戦後、日本株は1月から12月まで年を通して上昇した経験は1968年のみであったと筆者は記憶している。すなわち、年間どこかで大きく下げる時期があることは肝に銘じたい。あの平成バブル相場のとき、途次にあっと驚くようなブラックマンデーがあったことは忘れ得ない事実だ。
さて、こうしたなか、TOPIX銘柄が浮上してきたことに注目したい。電鉄、機械、エネルギー、 不動産、小売株、なかでも中小型の出遅れ好業績銘柄を探したい。個別にみると不動産からは日本空港ビルデング <9706> [東証P]、電鉄から名古屋鉄道 <9048> [東証P]など。このほか、引き続き竹内製作所 <6432> [東証P]など出番待ちの銘柄は多い。NT倍率のトレンドからみればハイテク株は一呼吸ほしいところだろう。
2024年3月15日 記
株探ニュース