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120カ国を旅した億り人が、タカラトミーで4倍化に成功したワケ
すご腕投資家さんに聞く「銘柄選び」の技 RENEさんの場合-第1回
■RENEさん(ハンドルネーム・50代・男性)のプロフィール:
大手製薬会社に勤務する兼業投資家。日本株、中国・香港株、アメ株への長期投資で、現在は待機資金を含めると4億円の運用資産を持つ。1990年代に日本株投資を始めるも思うような成果を出せなかったところ、2000年頃から中国・アメ株に対象を変えると、順調に成果を上げる。その成功体験を基に日本株もアベノミクス以降に再挑戦した結果、累計元本1000万円は約40倍に拡大、直近の配当収入は700万円におよぶ。「株探アンケート~24年の日本株戦略」の回答者で、投資スタイルは「バリュー重視」、日本株投資の腕前は「上級者」となる。
3日かけてブラジルへ行き、3日かけてアマゾン川で釣りをして、3日かけて日本に帰国する――。
今回登場するRENEさん(ハンドルネーム)は会社勤めをしながらも、これまで120カ国を旅してきた経験の持ち主だ。その目的は、釣り、ゴルフ、食と多岐にわたる。
旺盛な好奇心は株式投資にも表れ、米国や中国といったメジャー国のほか、ボツワナやチリ、ベトナムなどで証券口座を現地で開設してきた。
資産を膨らます原動力となったのが、割安成長株への長期投資だ。グローバル市場を舞台に事業展開する企業の株を長期保有する戦略で、足元の株資産は待機資金を含めて4億円に膨らんでいる。ポートフォリオは、中国株、アメ株、日本株に4分の1ずつ、計4分の3を配分する(下の円グラフ)。
海外旅行の経験を生かしながら、日本株と海外株で資産を増やしてきたRENEさんの取り組みを3回に分けて紹介する。初回は、アベノミクス以降、資産を膨らましてきた日本株投資の取り組みについて見ていく。
■RENEさんの株資産のポートフォリオ
タカラトミー株は4倍近く上昇し、時価評価額は7500万円に膨張
RENEさんの日本株資産の拡大に最も貢献している銘柄が、玩具メーカーのタカラトミー<7867>だ。同社は、「トミカ」「プラレール」といった定番の人気玩具を強みに国内外に収益基盤を持つ。売上高の60%超は国内で占められているが、アジアおよび北米を中核に、欧州やオセアニアなどでも収益を上げている。
RENEさんは同社株を2010年代半ばから投資し、約10年間保有。その間に株価は取得単価の約650円から足元では約2350円と、4倍に迫る上昇となっている。RENEさんは3万株を保有しており、時価評価額は約7000万円と、1億円ほどになる日本株資産の約70%を占めている。
■タカラトミーの月足チャート(2013年6月~)
同社に長期投資している主な理由は、
1 国内外で玩具市場が拡大する、
2 同業より時価総額が小さく、株価の上昇余地が大きい、
――という2つの期待からだ。
少子化が、逆にチャンスになると発想
1つ目について、玩具市場に着目したのは、国内で「少子化」が社会問題になっていることを逆説的に捉えたことだ。
RENEさんが銘柄選びをするときは、その国の経済の行方を左右する重要課題を念頭に置く。少子化に目を向けたのは、日本の総人口が頭打ちとなり、2010年代は減少に転じ始めたことがある。
当時のRENEさんの頭に浮かんだのは、政府が少子化対策の一環として子育て世帯への経済的支援を強化していくストーリーだ。親が子ども1人あたりにかけるお金が増えると考えれば、「玩具銘柄は持っておいて損はない」と感じた。
この発想の背景には、フランスが少子化対策として掲げた「シラク3原則」がある。子どもを持つことが負担とならない社会にするための基本方針を掲げたもの。先行事例として国際的に注目を集めてきた経緯から、日本も追随して同じような政策を展開するかもしれないと期待した。
玩具市場は国内外で成長基調
またRENEさんは、海外の玩具市場の拡大にも期待している。その根拠は、中国をはじめとするアジアの経済成長だ。玩具を含む、あらゆるモノの需要が伸びると信じている。それは中国旅行で、多くの人々の活気あふれる姿に深い印象を受けたことが基になっている。
さらに海外では、過去にバンダイナムコホールディングス<7832>の「たまごっち」など日本発の商品がヒットし、供給が追いつかなくなることもあった。こうした状況を鑑みて、海外の玩具市場のポテンシャルは大きいと見ている。
玩具市場の拡大は国内外のデータでも示されている。国内市場に関しては、一般社団法人日本玩具協会によると、2022年度の市場規模は9525億円と、調査開始以来、過去最高を記録した。15歳以下の人口は減少の一方の中で、市場は右肩上がりになっている(下のグラフ)。
また世界の市場規模については、今後、着実な成長を予測されている。2021~28年には、年平均で7.3%のペース成長し、28年には2300億ドル(33兆5800億円)を上回るとする調査もある。
■国内の玩具市場規模(5年移動平均)と15歳以下の人口の推移
出所:日本玩具協会 注:玩具市場規模は5年平均
購入時の時価総額は同業のバンナムの約8分の1に注目
では、玩具関連の中で、なぜタカラトミー株なのか。主な理由が、2つ目に挙げた「同業に比べて時価総額が小さい」ことだった。
RENEさんが同社株に投資を始めた2010年代半ば当時、同社の時価総額は700億円程度で、国内最大手のバンナムHDの5190億円に比べると、約8分の1の水準だった(下の表)。
そのタカラトミーの時価総額は足元で約2200億円と、購入時から4倍近くに拡大した。バンナムHDも当時から4倍程度の拡大とその差は縮まっていないが、RENEさんはタカラトミーについてデジタル化対応が出遅れている分、今後の伸びしろは大きいと見ている。
■タカラトミーとバンナムHDの時価総額の比較
出所:QUICK・ファクトセット
デジタル化では、たとえば、同社の製品である現代版ベイゴマ「ベイブレードX」では、スマートフォンアプリと連動させることで、プレー回数などの計測を可能としているほか、ベイブレードのイベント参加などさまざまな活動を通じてポイントが貯まる仕様となっている。
ユーザーは、獲得したポイントを使って、レアなベイブレードが当たるゲームに挑戦することができる。従来にない付加価値をもたらし、商品の競争力が高まると期待される。
稼ぐ力もチェック、現在の目標株価は3000円
見てきたようにRENEさんは、国内外で需要が伸びるテーマを見つけ、時価総額が小さい銘柄に注目するのを基本にしているが、もちろんそれだけで買い出動するわけではない。
過去の業績、特にCF(キャッシュフロー)を確認し、稼ぐ実力が備わっているのかをチェックする。具体的にはフリーCFと営業CFが概ねプラスで推移しているかを見る。
タカラトミーは、2006年3月期に営業CFが赤字になっているが、それ以降は、水準の揺れはあるものの、黒字を維持。フリーCFも13年3月期以降は、条件をクリアしている(下の表)。
現時点でRENEさんは目標株価を3000円に置く。
この目標株価は、過去の平均的な利益成長率に、デジタル化対応、および最近の月面着陸で話題になった「SORA-Q(ソラキュー)」などの新規事業の成長期待を勘案した予想EPS(1株当たり当期純利益)を試算し、それに想定PER(株価収益率)をかけて計算したものだ。
■『株探プレミアム』で確認できるタカラトミーのキャッシュフローの長期推移
赤字決算が続く新興銘柄でも勝負
タカラトミー株の投資は、RENEさんにとってコアの部分になる。これ以外にサテライトとして取り組んでいるのが、海外株投資での成功例を日本株に応用した手法だ。
その手法とは、赤字続きの新興企業を対象とするものだ。現在、購入するかで注目しているのが専門家仲介サービスのビザスク<4490>だ。
※当該情報は、一般情報の提供を目的としたものであり、有価証券その他の金融商品に関する助言または推奨を行うものではありません。
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編集・構成/真弓重孝、取材/高山英聖(株探編集部)
イラスト:福島由恵
大手製薬会社に勤務する兼業投資家。日本株、中国・香港株、アメ株への長期投資で、現在は待機資金を含めると4億円の運用資産を持つ。1990年代に日本株投資を始めるも思うような成果を出せなかったところ、2000年頃から中国・アメ株に対象を変えると、順調に成果を上げる。その成功体験を基に日本株もアベノミクス以降に再挑戦した結果、累計元本1000万円は約40倍に拡大、直近の配当収入は700万円におよぶ。「株探アンケート~24年の日本株戦略」の回答者で、投資スタイルは「バリュー重視」、日本株投資の腕前は「上級者」となる。
3日かけてブラジルへ行き、3日かけてアマゾン川で釣りをして、3日かけて日本に帰国する――。
今回登場するRENEさん(ハンドルネーム)は会社勤めをしながらも、これまで120カ国を旅してきた経験の持ち主だ。その目的は、釣り、ゴルフ、食と多岐にわたる。
旺盛な好奇心は株式投資にも表れ、米国や中国といったメジャー国のほか、ボツワナやチリ、ベトナムなどで証券口座を現地で開設してきた。
資産を膨らます原動力となったのが、割安成長株への長期投資だ。グローバル市場を舞台に事業展開する企業の株を長期保有する戦略で、足元の株資産は待機資金を含めて4億円に膨らんでいる。ポートフォリオは、中国株、アメ株、日本株に4分の1ずつ、計4分の3を配分する(下の円グラフ)。
海外旅行の経験を生かしながら、日本株と海外株で資産を増やしてきたRENEさんの取り組みを3回に分けて紹介する。初回は、アベノミクス以降、資産を膨らましてきた日本株投資の取り組みについて見ていく。
■RENEさんの株資産のポートフォリオ
タカラトミー株は4倍近く上昇し、時価評価額は7500万円に膨張
RENEさんの日本株資産の拡大に最も貢献している銘柄が、玩具メーカーのタカラトミー<7867>だ。同社は、「トミカ」「プラレール」といった定番の人気玩具を強みに国内外に収益基盤を持つ。売上高の60%超は国内で占められているが、アジアおよび北米を中核に、欧州やオセアニアなどでも収益を上げている。
RENEさんは同社株を2010年代半ばから投資し、約10年間保有。その間に株価は取得単価の約650円から足元では約2350円と、4倍に迫る上昇となっている。RENEさんは3万株を保有しており、時価評価額は約7000万円と、1億円ほどになる日本株資産の約70%を占めている。
■タカラトミーの月足チャート(2013年6月~)
注:出来高・売買代金の棒グラフの色は当該株価が前期間の株価に比べプラスの時は「赤」、マイナスは「青」、同値は「グレー」。以下同
同社に長期投資している主な理由は、
1 国内外で玩具市場が拡大する、
2 同業より時価総額が小さく、株価の上昇余地が大きい、
――という2つの期待からだ。
少子化が、逆にチャンスになると発想
1つ目について、玩具市場に着目したのは、国内で「少子化」が社会問題になっていることを逆説的に捉えたことだ。
RENEさんが銘柄選びをするときは、その国の経済の行方を左右する重要課題を念頭に置く。少子化に目を向けたのは、日本の総人口が頭打ちとなり、2010年代は減少に転じ始めたことがある。
当時のRENEさんの頭に浮かんだのは、政府が少子化対策の一環として子育て世帯への経済的支援を強化していくストーリーだ。親が子ども1人あたりにかけるお金が増えると考えれば、「玩具銘柄は持っておいて損はない」と感じた。
この発想の背景には、フランスが少子化対策として掲げた「シラク3原則」がある。子どもを持つことが負担とならない社会にするための基本方針を掲げたもの。先行事例として国際的に注目を集めてきた経緯から、日本も追随して同じような政策を展開するかもしれないと期待した。
玩具市場は国内外で成長基調
またRENEさんは、海外の玩具市場の拡大にも期待している。その根拠は、中国をはじめとするアジアの経済成長だ。玩具を含む、あらゆるモノの需要が伸びると信じている。それは中国旅行で、多くの人々の活気あふれる姿に深い印象を受けたことが基になっている。
さらに海外では、過去にバンダイナムコホールディングス<7832>の「たまごっち」など日本発の商品がヒットし、供給が追いつかなくなることもあった。こうした状況を鑑みて、海外の玩具市場のポテンシャルは大きいと見ている。
玩具市場の拡大は国内外のデータでも示されている。国内市場に関しては、一般社団法人日本玩具協会によると、2022年度の市場規模は9525億円と、調査開始以来、過去最高を記録した。15歳以下の人口は減少の一方の中で、市場は右肩上がりになっている(下のグラフ)。
また世界の市場規模については、今後、着実な成長を予測されている。2021~28年には、年平均で7.3%のペース成長し、28年には2300億ドル(33兆5800億円)を上回るとする調査もある。
■国内の玩具市場規模(5年移動平均)と15歳以下の人口の推移
出所:日本玩具協会 注:玩具市場規模は5年平均
購入時の時価総額は同業のバンナムの約8分の1に注目
では、玩具関連の中で、なぜタカラトミー株なのか。主な理由が、2つ目に挙げた「同業に比べて時価総額が小さい」ことだった。
RENEさんが同社株に投資を始めた2010年代半ば当時、同社の時価総額は700億円程度で、国内最大手のバンナムHDの5190億円に比べると、約8分の1の水準だった(下の表)。
そのタカラトミーの時価総額は足元で約2200億円と、購入時から4倍近くに拡大した。バンナムHDも当時から4倍程度の拡大とその差は縮まっていないが、RENEさんはタカラトミーについてデジタル化対応が出遅れている分、今後の伸びしろは大きいと見ている。
■タカラトミーとバンナムHDの時価総額の比較
出所:QUICK・ファクトセット
デジタル化では、たとえば、同社の製品である現代版ベイゴマ「ベイブレードX」では、スマートフォンアプリと連動させることで、プレー回数などの計測を可能としているほか、ベイブレードのイベント参加などさまざまな活動を通じてポイントが貯まる仕様となっている。
ユーザーは、獲得したポイントを使って、レアなベイブレードが当たるゲームに挑戦することができる。従来にない付加価値をもたらし、商品の競争力が高まると期待される。
稼ぐ力もチェック、現在の目標株価は3000円
見てきたようにRENEさんは、国内外で需要が伸びるテーマを見つけ、時価総額が小さい銘柄に注目するのを基本にしているが、もちろんそれだけで買い出動するわけではない。
過去の業績、特にCF(キャッシュフロー)を確認し、稼ぐ実力が備わっているのかをチェックする。具体的にはフリーCFと営業CFが概ねプラスで推移しているかを見る。
タカラトミーは、2006年3月期に営業CFが赤字になっているが、それ以降は、水準の揺れはあるものの、黒字を維持。フリーCFも13年3月期以降は、条件をクリアしている(下の表)。
現時点でRENEさんは目標株価を3000円に置く。
この目標株価は、過去の平均的な利益成長率に、デジタル化対応、および最近の月面着陸で話題になった「SORA-Q(ソラキュー)」などの新規事業の成長期待を勘案した予想EPS(1株当たり当期純利益)を試算し、それに想定PER(株価収益率)をかけて計算したものだ。
■『株探プレミアム』で確認できるタカラトミーのキャッシュフローの長期推移
赤字決算が続く新興銘柄でも勝負
タカラトミー株の投資は、RENEさんにとってコアの部分になる。これ以外にサテライトとして取り組んでいるのが、海外株投資での成功例を日本株に応用した手法だ。
その手法とは、赤字続きの新興企業を対象とするものだ。現在、購入するかで注目しているのが専門家仲介サービスのビザスク<4490>だ。
※当該情報は、一般情報の提供を目的としたものであり、有価証券その他の金融商品に関する助言または推奨を行うものではありません。
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