アンジェス Research Memo(9):オプショナルスクリーニング検査から確定診断検査へ領域を拡大し収益化を目指す
■ACRLの取り組み状況
アンジェス<4563>は現在、希少遺伝性疾患のオプショナルスクリーニング検査を受託しているが、遺伝学的検査※の技術を確立したことにより、確定診断となる遺伝学的検査の受託も開始すべく準備を進めている。前述のとおり、スクリーニング検査で要検査判定が出る確率は0.15%と極めて少ないため、ビジネス面からスクリーニング検査と遺伝学的検査の両方を実施する衛生検査所がなく、医療関係者からは一括して委託できる衛生検査所が強く望まれており、同社はこうした要望に応えるべくACRLでその体制を構築した。遺伝学的検査の対象疾患はスクリーニング検査を実施している9疾患のうち、ライソゾーム病(ムコ多糖症I型/II型/IVA型/VI型、ファブリー病、ポンペ病)、副腎白質ジストロフィー(ALD)の7疾患とそのほかライソゾーム病(ゴーシェ病、ニーマンピック病A/B型、ニーマンピック病C型、クラッベ病)がある。また、同社が販売承認申請中の「ゾキンヴィ」の対象疾患であるHGPS及びPLについても2024年春から対応すべく準備を進めている。
※スクリーニング検査の結果で疾患の疑いがある場合、また、発症した症状から該当の疾患である可能性がある場合に、その病気の原因となる遺伝子変異の有無を確認することで該当の疾患かどうかを確定させる検査(確定検査)。
オプショナルスクリーニング検査手数料収入については、CReARIDの提携医療機関拡大とともに順調に増加しているが、さらに規模を拡大すべく、自治体や医療機関等からの新規受託の取り組みも進めている。国内のオプショナルスクリーニング検査の対象疾患数は最大で9疾患となっているが、自治体によってはすべての疾患に対応していないケースもある。同社は9疾患すべて、または対象から外れている疾患のみの受託も可能で、2024年4月からの新たな受託に備え準備を進めている。現状、検査事業は売上規模が小さいためまだ損失が続いているものの、2024年12月期以降は受託先の拡大並びに遺伝学的検査の受託開始によって収益化が見込まれる。同社は将来的に、希少遺伝性疾患の治療効果をモニタリングするバイオマーカー検査の確立にも取り組むことで、希少遺伝性疾患のスクリーニングから治療に至るまで包括的な検査を実施できる体制の構築を目指している。
なお、公費で実施する新生児マス・スクリーニング検査の対象疾患として、新たに脊髄性筋萎縮症と重症複合免疫症の2つの難病を加えることが国の方針として固まり、準備の整った自治体からスタートすることになった。従来、オプショナルスクリーニング検査の対象疾患だったもので、公費対象となることでこれら2疾患の検査件数が減少する可能性もあるが、検査体制が整っていない自治体から新規に受託できる可能性もある。また、オプショナルスクリーニング検査も対象検査疾患を拡大する方向にあるため、影響は軽微と見られる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
《SI》
提供:フィスコ