テリロジーHD Research Memo(1):産業や社会のDXに貢献するテクノロジー企業グループ
■要約
テリロジーホールディングス<5133>は、(株)テリロジーが2022年11月1日付で単独移転の方式により設立した持株会社である。ネットワークセキュリティ関連やソリューションサービス関連を中心に展開し、産業や社会のDXに貢献するテクノロジー企業グループである。
1. セキュリティ部門とソリューションサービス部門が拡大基調
同社は事業区分(2024年3月期より区分変更)を、ネットワーク関連製品の販売・保守などを展開するネットワーク部門、ネットワークセキュリティ関連製品の販売・保守などを展開するセキュリティ部門、自社開発ソフトウェアの販売・保守やITサービスなどを展開するソリューションサービス部門としている。売上高で見ると、セキュリティ部門とソリューションサービス部門が需要拡大、新製品拡販、M&Aなどの効果により拡大基調となっている。同社の特徴・強みとしては、創業以来30年以上に及ぶ豊富な実績とノウハウの蓄積、時代の流れを的確に捉える市場対応力、海外新興IT先端企業を発掘する目利き力などに加え、輸入技術とテリロジーグループ独自技術を組み合わせて顧客ニーズに最も適したソリューションを提供できることなどが挙げられる。なお、業績変動要因としては、海外メーカーからの輸入で外貨建ての仕入比率が高いため、為替変動による影響を受ける傾向が強い。この対策として同社は、為替予約や販売価格改定を含めたさまざまな施策を講ずることにより、リスク低減を図る方針としている。
2. 2024年3月期第2四半期累計は円安影響を大幅増収効果で吸収
2024年3月期第2四半期累計の連結業績は売上高が3,009百万円、営業利益が24百万円、経常利益が58百万円、親会社株主に帰属する四半期純利益が20百万円だった。2023年3月期第3四半期より持株会社としての決算に移行しているため、前年同期のテリロジーの連結業績との比較で見ると、売上高はセキュリティ部門とソリューションサービス部門の高成長が牽引して21.6%増収(534百万円増収)となり、各利益は黒字転換(営業利益は67百万円増加、経常利益は98百万円増加、親会社株主に帰属する四半期純利益は101百万円増加)した。受注高は同40.5%増の3,420百万円で、期末受注残高は同22.3%増の2,262百万円となった。利益面では為替の円安進行が仕入価格上昇による売上総利益率悪化要因となり、販管費も人的資本投資などに伴って増加したが、大幅増収効果で吸収した。経常利益と親会社株主に帰属する四半期純利益については、営業外収益でのデリバティブ評価益20百万円、為替予約に伴う為替差益17百万円の計上も寄与した。
3. 2024年3月期通期大幅増益予想を据え置き
2024年3月期通期の連結業績予想は期初計画を据え置いて、売上高が2023年3月期比11.8%増の6,345百万円、営業利益が同107.9%増の240百万円、経常利益が同88.6%増の240百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同261.2%増の168百万円としている。売上面は需要が高水準に推移して2桁増収の計画としている。利益面では、継続的な人的資本投資に伴って人件費が増加するが、大幅増収効果や前期計上した一時的費用の一巡に加え、下期には為替の円安進行一服による売上総利益率低下要因の緩和、価格改定効果などの寄与を見込み、大幅増益予想としている。通期ベースでの為替の前提は1米ドル=140.00円、価格改定は10%程度の値上げを推進する方針としている。上期の利益進捗率は低水準の形だが、セキュリティ関連の事業環境は良好であり、下期の構成比が高い傾向があること、為替がやや円高方向となっていること、上期は進捗が遅れた価格改定効果が下期に進展する可能性があることなどを考慮すれば、通期会社予想の達成は可能だろうと弊社では考えている。
4. 中期経営計画でポートフォリオ拡充・拡大などを推進
同社は「テリロジーグループ新3ヵ年中期経営計画」(2024年3月期~2026年3月期、毎年改定を行うローリング方式)で、目標数値に2024年3月期売上高63億円、営業利益2.4億円、2025年3月期売上高72億円、営業利益3.3億円、2026年3月期売上高82億円、営業利益5.3億円を掲げた。中長期的にはグループ売上高100億円を目指すとしている。さらに、資本コストや株価を意識した経営の実践を図り、中長期的にROE(自己資本利益率)10.0%を目指すとしている。目標達成に向けての基本戦略・重要施策におけるキーメッセージとしては、(1)グループ連携によるストック型事業モデルへの強化・人材育成、(2)グループ・ポートフォリオ事業の更なる拡充・拡大、(3)グローバルな事業展開を掲げている。顧客が抱える情報システムやセキュリティに関わる現場課題の解決にとどまらず、観光DXや環境DXに関わる社会課題解決など、今後の社会にとって「必要不可欠な新たな課題領域」に向けての意欲的な挑戦も推進する方針だ。
5. 持続的な利益成長・利益率向上への取り組みや新たな成長ドライバーに期待
同社グループは、これまで「目利き力と市場対応力」をコアコンピタンスとして、海外先端技術の日本市場への導入・普及に豊富な実績を持っている。ただし業績推移を見ると、売上面はM&Aも寄与して拡大基調であるものの、利益面は持続的な利益成長・利益率向上という点で物足りず、過去の強み・実績が現在の業績に表れていないという印象が否めない。2024年3月期は円安影響を大幅増収効果で吸収する見込みだが、投資家の関心が利益と配当の成長期待にあることを勘案すれば、持続的な利益成長・利益率向上の実現が同社グループの課題と考えられる。同社グループは中期経営計画でM&A・アライアンスも活用した新技術・新規領域への展開加速など、事業ポートフォリオの拡充やストック型ビジネスモデルへの転換という方向性を打ち出した。この点については一定の評価ができるだろうと弊社では考えている。さらに加えれば、DXの進展とともにセキュリティニーズが高まるなど同社グループを取り巻く事業環境は良好であるだけに、単なる売上拡大戦略にとどまらず、持続的な利益成長・利益率向上への取り組み(為替変動リスク低減策としての価格戦略や為替変動影響を受けにくいITサービス分野の拡大戦略、サブスク型や保守サービス収入などストック収益の拡大戦略、売上ミックス改善に向けた部門別戦略など)や、新たな成長ドライバーとなる製品・サービスなどがより具体的に示されれば、同社グループの成長シナリオに対する投資家の関心度も高まってくるだろうと弊社では考えている。
■Key Points
・産業や社会のDXに貢献するテクノロジー企業グループ
・セキュリティ部門とソリューションサービス部門が拡大基調
・2024年3月期第2四半期累計は円安影響を大幅増収効果で吸収
・2024年3月期通期大幅増益予想据え置き
・中期経営計画でポートフォリオ拡充・拡大などを推進
・持続的な利益成長・利益率向上を図る取り組みや新たな成長ドライバーに期待
(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田雅展)
《SO》
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