データセク Research Memo(7):2024年3月期に「拡大投資」のフェーズへと移行(1)
■中長期の成長戦略
1. 成長戦略
データセクション<3905>は、「選択と集中」のフェーズ(2019年3月期~2023年3月期)から2024年3月期に「拡大投資」のフェーズへと移行した。「選択と集中」のフェーズで、同社は限定された資源を最大限に活用するために、特定の分野や事業に焦点を当て、限られた重要な領域に注力することで専門性や効率性を高め、競争優位性を構築し構造改革を行ってきた。自らの強みである「Data & AI」を中心に顧客のニーズに基づき、特定の製品やサービス、市場に焦点を当て、深い専門知識を構築しリソースを最適に活用することに集中してきた。結果として、2019年3月期に「リテールマーケティング事業」を選択し、その主力となるSaaS型サービス「FollowUP」に注力することで国内・海外双方でバランスの良い成長を遂げることができた。
2024年3月期からは、M&Aや新規事業開発へグローバルベースで積極的な投資を行い、成長ドライバーである「自社プロダクト強化」「ターゲット市場拡大」「進出国拡大」の3つの要素をバランス良く推進しながら、今後3年間はCAGR35%を目標に、7~8年後の2020年代後半に向けて売上高100億円以上を目指す計画である。2024年3月期第3四半期以降、中期経営計画を発表する予定である。
2. 進捗状況
各成長ドライバーの進捗状況を見ると、「自社プロダクト強化」は、2020年9月より購買率の向上、予測機能、欠品検知のステップまで推し進めてきており、今後は送客※1支援やOMO※2に注力する。2023年6月にスーパーマーケット向け商品棚解析ソリューション「FollowUP Shelf Analytics」をリリースしたが、同製品により、リアルタイムに商品棚上の欠品、誤配置、フェイス数違い、価格違いをAIで検知し、顧客側の機会損失を削減できるサービスを提供できるようになった。「ターゲット市場拡大」は、小売(アパレル)、商業施設、スーパーマーケット、医療業界等へと拡大を推進しており、さらにメーカー、ドラッグストア、百貨店、デベロッパー、不動産など多岐にわたる業界への進出を検討している。2023年12月には、同社の資本業務提携先である、医療ICTベンチャーのアルムより委託を受け、一部開発を担当した概念実証(PoC)を開始した。「進出国拡大」は、これまでに日本、インド、オーストラリア、ニュージーランド、チリ、コロンビア、ペルー、アルゼンチン、エクアドル、ボリビア、ブラジル、ウルグアイ、パナマ、グアテマラ、ホンジュラス、エル・サルバドル、コスタリカ、スペイン、メキシコ、米国といった、南米を中心とした20ヶ国に進出している。2024年3月期第2四半期には、同社の海外連結子会社はチリ、コロンビア、ペルーの4社に、スペイン、パナマの連結子会社2社を加え、合計6社となった。新型コロナウイルス感染症拡大(以下、コロナ禍)の影響で進出が遅れていたメキシコ、エクアドル、アルゼンチン(すべてスペイン語圏)に対し優先的に注力し、その延長線上でスペインにて、日系のパブリックセクターや現地のショッピングモールへアプローチしていく。
※1 集客した顧客を実店舗などに誘導して売上につなげていくこと。
※2 オンラインとオフラインを区別せずに融合させた状態でマーケティング戦略を推進していく考え方。
2023年9月のThe ROOM4DからのAIエンジニアの受け入れを含めた事業譲受は、同社の体制強化だけではなく、競争力の向上にもつながる。将来的には新規の自社プロダクト開発やグローバル展開、データサイエンスから保守運用までの一気通貫の体制づくりなど、既存の事業基盤を活用したシナジーまで展望できる。またThe ROOM4Dは既に大手優良企業を中心とした顧客や開発実績を保有しており、今後も継続して有効な関係を築き上げることで、同社はAI・システム開発の受託事業を強化できると見ている。
3. KPIの進捗状況
同社が中期的な売上高のKPIとして重視しているのは、導入店舗数とカメラ設置台数である。2024年3月期第2四半期において、連結ベースで導入店舗数は、前年同期比28.5%増の8,212店、カメラ設置台数は前年同期比30.0%増の12,996台へ伸長した。チリでの大型ショッピングモールへの全店導入が寄与した。従来どおり、導入店舗数に連動してカメラ設置台数も増加している。近年では、南米などの大型店舗への導入が進むことで、カメラ台数の設置数が導入店舗数以上に伸びている。
一方で、前々年同期から前年同期までの増加率を見ると、導入店舗数は53.7%増、カメラ設置台数は60.7%増である。前年同期から2024年3月期第2四半期までの増加率と比較すると、成長が鈍化しているように見えるが、これは同社の海外子会社買収における「M&Aグロース」が大きな要因である。それに対し、前年同期から2024年3月期第2四半期までの増加要因は「オーガニックグロース」であり、同社は中長期的な成長につながるものと見ている。海外事業では案件が大型化していること、顧客に上場会社が多いことなどから、今後も前期比増加率は30%以上の成長を見込んでいる。国内事業におけるキャッシュ・フローや投資家等からの資金調達に寄与すれば、さらに南米の周辺国へ成長を拡大することができる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 中山博詞)
《SI》
提供:フィスコ