ステップ Research Memo(5):横浜・川崎シフトにより資金需要が減少しネットキャッシュが積み上がる
■業績動向
2. 財務状況と経営指標
ステップ<9795>の2023年9月期末の財務状況を見ると、資産合計は前期末比1,060百万円増加の28,634百万円となった。主な変動要因を見ると、流動資産では現金及び預金が371百万円増加、固定資産では土地が466百万円減少、投資有価証券が1,148百万円増加した。
負債合計は前期末比76百万円減少の2,698百万円となった。未払費用が110百万円増加した一方で、有利子負債が116百万円、未払法人税等が239百万円それぞれ減少した。純資産は同1,137百万円増加の25,936百万円となった。配当金の支出780百万円と自己株式の増加532百万円(減少要因)があったものの、当期純利益2,405百万円の計上により利益剰余金が増加した。
経営指標を見ると、自己資本比率は90.6%と前期末比で0.7ポイント上昇し、有利子負債比率も0.9%まで低下するなど実質無借金経営である。ネットキャッシュ(現金及び預金-有利子負債)も同488百万円増加の9,480百万円と過去最高水準に積み上げ、財務基盤の強化が一段と進んだ。ここ数年、校舎展開を横浜・川崎エリア中心に展開していることが、ネットキャッシュ増加の一因である。同社は安定した教育サービスを提供するためには、校舎を自社保有することが好ましいとの考えから、極力自社物件化して展開してきたが、地価や不動産価格が高い横浜・川崎エリアではコスト面でバランスが取れないため、賃貸物件で展開を進めている。このため、校舎開設のための初期投資額も少なくて済み、結果として有形固定資産が増えず、キャッシュとして積み上がる格好となった。実際、有形固定資産については2020年9月期の16,989百万円をピークに緩やかながら減少傾向となっているのに対して、現金及び預金は増加傾向が続いている。今後も校舎展開については横浜・川崎エリアが中心となるため、同様の傾向が続くと予想し、同社では積み上がったキャッシュの使途として人的資本への投資と株主還元の強化に振り向ける新経営方針※を2023年5月に発表した。
※新経営方針の骨格
1.「学習塾は人材産業であり、魅力ある教師陣とそれを支えるスタッフの充実こそ前進の原動力である」という認識の下、インフレ傾向のなかで従業員の処遇改善(給与引き上げ)に積極的に取り組んでいく。
2. 生徒にとって、魅力的な学習塾であり続けるため、学習環境の整備に積極的に取り組んでいく。
3. 従来、危機管理資金として約100億円の内部蓄積を目標としてきたが、ほぼ達成の見込みが立ったのを機に株主還元を強化し、配当性向を従来の「30%目安」から「50%目安」に引き上げる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
《AS》
提供:フィスコ