来週の株式相場に向けて=マイナス金利解除前の「待降節」に終止符は打たれるか
「掉尾の一振」の期待とは裏腹に、日経平均株価は12月に入りここまで前月末比で516円安。FOMC後の利下げ観測の高まりと、日銀によるマイナス金利政策解除を巡る根強い思惑がドル安・円高の流れを誘発し、日本株の重荷となっている。
今週のハイライトとなったFOMCでは、メンバーによる2024年末の政策金利見通しの中央値が4.6%に切り下がり、0.25%幅で年3回の利下げを示唆する水準となった。7割近い確率で年6回の利下げが実施されるという市場参加者の見立て(日本時間15日夕方時点)を反映する形で、米長期金利は4%を下回る水準に急低下し、これを追い風にNYダウは連日で最高値を更新した。米フィラデルフィア半導体株指数(SOX)も水準を切り上げて史上最高値をつけ、日本株とは対照的な動きとなっている。
目先の最大の注目点が、18~19日に開かれる日銀の金融政策決定会合なのは言うまでもないだろう。植田和男総裁が国会答弁で「『年末』から来年にかけて一段とチャレンジングになる」と発言し、東京市場では早期のマイナス金利解除観測が浮上。外資系通信社が12月会合でのマイナス金利の撤廃について「急ぐ必要はほとんどない」との関係者の認識を伝えたが、株式市場ではこれを受けて上値を追う姿勢は限られている。果たして政策修正のアナウンスがあるのかどうか。市場の大方の予想は現状維持とはいえ「過去の経験からサプライズ的なマイナス金利解除に警戒しないわけにはいかない」(国内証券ストラテジスト)のが現実だ。
しかし、現状維持が株式市場にとって日銀の12月会合を巡るベストシナリオなのかというと、そうでもないようだ。来年にかけて米国が利下げに舵を切ることが有力視されるなか、円高による景気腰折れリスクを避けたい日銀にとっては、マイナス金利を解除したとしても、ゼロ金利政策を続けるのが精いっぱいのところだろう。「12月会合でマイナス金利が解除されれば金融政策面での不透明要因がなくなるため、日本株にとってはむしろウェルカム」(国内系ファンドマネジャー)との見方も出ている。
「植田サンタ」のプレゼント箱の中身がマイナス金利の解除となった場合の、一時的な円高・株安リスクの高まりには留意が必要だが、クリスマスはまだ終わりではない。SOXが最高値を更新し、半導体セクターへの注目度が高まりつつある状況にあって、米国時間20日に予定される米半導体大手マイクロン・テクノロジー<MU>の9~11月期決算に対する投資家の関心が高まっている。日本株が調整した際に、マイクロン決算を受けて半導体株全般にポジティブな見方が広がれば、関連銘柄には押し目買いの好機が到来することとなりそうだ。
15日の東京市場ではアドバンテスト<6857>や東京エレクトロン<8035>は朝高後に伸び悩み、レーザーテック<6920>とディスコ<6146>は下落するなど力強さを欠いた。一方で、半導体工場向けの超純水装置を手掛ける野村マイクロ・サイエンス<6254>の上値指向の強まりに潜む形で、同業で出遅れていた栗田工業<6370>とオルガノ<6368>が底入れの兆しをみせており、半導体セクター内での循環物色の更なる活発化に期待が膨らむ。
米国時間19日には11月の米住宅着工件数、20日には11月の米中古住宅販売件数も公表される予定だ。金利低下による米国の住宅市場への好影響を見越し、すでに東京市場では住友林業<1911>や、半導体シリコンウエハーとともに住宅用塩化ビニール樹脂を手掛ける信越化学工業<4063>が動意づいている。電動工具のマキタ<6586>やシャッターの三和ホールディングス<5929>、刈払機のやまびこ<6250>を含め、関連銘柄への物色意欲が更に高まるか注視されそうだ。
上記以外のスケジュールでは、国内では20日に11月貿易収支、22日に11月全国消費者物価指数と、10月開催分の日銀金融政策決定会合の議事要旨が公表される。19日にはツルハホールディングス<3391>の決算発表が予定されている。海外では20日に米12月コンファレンスボード消費者信頼感指数、21日に米12月フィラデルフィア連銀製造業景況指数、22日に米11月PCEデフレータと米11月耐久財受注などが公表されるほか、21日には米ナイキ<NKE>が9~11月期決算を発表する。(長田善行)
出所:MINKABU PRESS
今週のハイライトとなったFOMCでは、メンバーによる2024年末の政策金利見通しの中央値が4.6%に切り下がり、0.25%幅で年3回の利下げを示唆する水準となった。7割近い確率で年6回の利下げが実施されるという市場参加者の見立て(日本時間15日夕方時点)を反映する形で、米長期金利は4%を下回る水準に急低下し、これを追い風にNYダウは連日で最高値を更新した。米フィラデルフィア半導体株指数(SOX)も水準を切り上げて史上最高値をつけ、日本株とは対照的な動きとなっている。
目先の最大の注目点が、18~19日に開かれる日銀の金融政策決定会合なのは言うまでもないだろう。植田和男総裁が国会答弁で「『年末』から来年にかけて一段とチャレンジングになる」と発言し、東京市場では早期のマイナス金利解除観測が浮上。外資系通信社が12月会合でのマイナス金利の撤廃について「急ぐ必要はほとんどない」との関係者の認識を伝えたが、株式市場ではこれを受けて上値を追う姿勢は限られている。果たして政策修正のアナウンスがあるのかどうか。市場の大方の予想は現状維持とはいえ「過去の経験からサプライズ的なマイナス金利解除に警戒しないわけにはいかない」(国内証券ストラテジスト)のが現実だ。
しかし、現状維持が株式市場にとって日銀の12月会合を巡るベストシナリオなのかというと、そうでもないようだ。来年にかけて米国が利下げに舵を切ることが有力視されるなか、円高による景気腰折れリスクを避けたい日銀にとっては、マイナス金利を解除したとしても、ゼロ金利政策を続けるのが精いっぱいのところだろう。「12月会合でマイナス金利が解除されれば金融政策面での不透明要因がなくなるため、日本株にとってはむしろウェルカム」(国内系ファンドマネジャー)との見方も出ている。
「植田サンタ」のプレゼント箱の中身がマイナス金利の解除となった場合の、一時的な円高・株安リスクの高まりには留意が必要だが、クリスマスはまだ終わりではない。SOXが最高値を更新し、半導体セクターへの注目度が高まりつつある状況にあって、米国時間20日に予定される米半導体大手マイクロン・テクノロジー<MU>の9~11月期決算に対する投資家の関心が高まっている。日本株が調整した際に、マイクロン決算を受けて半導体株全般にポジティブな見方が広がれば、関連銘柄には押し目買いの好機が到来することとなりそうだ。
15日の東京市場ではアドバンテスト<6857>や東京エレクトロン<8035>は朝高後に伸び悩み、レーザーテック<6920>とディスコ<6146>は下落するなど力強さを欠いた。一方で、半導体工場向けの超純水装置を手掛ける野村マイクロ・サイエンス<6254>の上値指向の強まりに潜む形で、同業で出遅れていた栗田工業<6370>とオルガノ<6368>が底入れの兆しをみせており、半導体セクター内での循環物色の更なる活発化に期待が膨らむ。
米国時間19日には11月の米住宅着工件数、20日には11月の米中古住宅販売件数も公表される予定だ。金利低下による米国の住宅市場への好影響を見越し、すでに東京市場では住友林業<1911>や、半導体シリコンウエハーとともに住宅用塩化ビニール樹脂を手掛ける信越化学工業<4063>が動意づいている。電動工具のマキタ<6586>やシャッターの三和ホールディングス<5929>、刈払機のやまびこ<6250>を含め、関連銘柄への物色意欲が更に高まるか注視されそうだ。
上記以外のスケジュールでは、国内では20日に11月貿易収支、22日に11月全国消費者物価指数と、10月開催分の日銀金融政策決定会合の議事要旨が公表される。19日にはツルハホールディングス<3391>の決算発表が予定されている。海外では20日に米12月コンファレンスボード消費者信頼感指数、21日に米12月フィラデルフィア連銀製造業景況指数、22日に米11月PCEデフレータと米11月耐久財受注などが公表されるほか、21日には米ナイキ<NKE>が9~11月期決算を発表する。(長田善行)
出所:MINKABU PRESS