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9331 キャスター

東証G
929円
前日比
-17
-1.80%
PTS
929.3円
11:17 11/26
業績
単位
100株
PER PBR 利回り 信用倍率
1.65
時価総額 18.2億円
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キャスター Research Memo(7):既存事業の強化とセグメント拡大の両輪により成長を加速する方針


■キャスター<9331>の今後の成長戦略

1. 環境認識と成長ポテンシャル
(1) 環境認識
中小企業を中心に人手不足問題が深刻化※1する一方、コロナ禍をきっかけとしたリモートワークの浸透とそれに伴う働き方に対する考え方の変化などを背景に、同社サービスに対するニーズは求人側(顧客企業)及び求職側(ワーカー)の双方から高まっていくことが予想される。特に中小企業の場合は、大きなロットが必要となるBPOの利用も進んでいない※2。人手不足による倒産件数はここ数年高い水準にあるうえ、雇用人員判断指数(DI)※3では、コロナ禍で一旦緩和された需給関係も、コロナ禍からの回復とともに再び厳しい状況になっている。人材不足に伴うニーズの増大は同社サービス(WaaS)にとっては追い風となる。

※1 大卒求人倍率は大企業(従業員数5,000名以上)が0.41倍であるのに対して中小企業(従業員数300名未満)は6.19倍となっており、中小企業における人材確保は非常に厳しい状況にある(出所:リクルートワークス研究所「第40回ワークス大卒求人倍率調査」)
※2 同社アンケート調査(2022年8月実施、サンプル数2,810社、Fastaskを利用)によると、BPOの利用状況は、大企業(従業員数300名超)が61.0%、中小企業(従業員数300名未満)が39.9%となっている(出所:事業計画及び成長可能性に関する事項)
※3 日銀短観(2023年6月調査)


(2) 対象市場と成長ポテンシャル
同社は全国の中小企業を対象として、現在のバックオフィス中心の領域から、さらに企画業務領域全般へ、そして市場の大きなIT業務領域にまで拡張していく方針であり、同社試算によれば、同社サービスへのアウトソーシングニーズのTAM(可能性のある最大市場規模)は2.7兆円、SAM(対応可能な市場規模)は1.1兆円、SOM(既存領域の市場規模)は8,000億円、コアターゲットは1,700億円に及ぶ。もちろん一定の前提を置いたフェルミ推定の域を出ないが、同社の視野(見ているところ)や方向性を知るうえで参考になるとともに、中小企業の多くが人手不足(IT人材はさらに深刻)に悩み、DX化の流れにも十分にも対応できない状況を踏まえれば、1つの考え方としての合理性はあると判断できる。

2. 成長戦略の方向性
同社は、具体的な中期経営計画を現時点で公表していないが、成長戦略の方向性として、1) 既存事業の拡張、2) セグメントの拡大の両輪で売上成長を加速させる方針を打ち出している。すなわち、既存事業の拡張→セグメントの拡大(追加・育成)といったサイクルを繰り返すことにより、複数の直線的な成長を積み上げ、成長の角度を引き上げていく戦略と捉えることができる。また、セグメント間のシナジー創出による各KPIの改善や収益性の向上にも取り組む。もっとも、この成長モデル自体はこれまでのものと大きく変わらない。今後は、さらなる業務改善・効率化や既存領域の深掘りを始め、市場が大きく付加価値の高い領域への拡張を目指していく。

3. 具体的な戦略テーマ
(1) 既存事業の拡張
継続的な広告投資及び営業体制確立による受注力向上、タスクの型化やキャストのアサインプロセスの自動化などのオペレーション改善による生産性向上に取り組む。

(2) セグメントの拡大
1) 対象領域の拡大
現在のバックオフィス領域から、コンサルティング領域やマーケティング領域、エンジニアリング領域など、既に顧客からのニーズを寄せられている領域への進出を検討する。なお、検討にあたっては、市場の規模・成長性や労働集約、リモートワーク化の容易さなどを考慮する。また、将来的にはサービス業や医療・介護業、不動産業などのリモートワーク化を先取りすることで、様々な業界を開拓していく構想である。

2) 海外展開(エリアの拡大)
ドイツ、UAEを足掛かりとした既存サービスの海外展開による規模拡大にも取り組んでいく。既に2022年9月にドイツ(ベルリン)、2022年12月にUAE(ドバイ)に支店を開設し、「CASTER BIZ アシスタント」をヨーロッパ各国向けに開始しているが、従業員はドイツ、ドバイに限らず、複数国から登用しており、まさにクロスボーダーでリモートアシスタントを提供する格好となっている。特にドイツにおいては、中小企業の多さや人手不足問題は日本に近い状況にあることから、日本での成功モデルを横展開することへの勝算が見込まれ、既に黒字化の目途も立ってきたようだ。また、1)で掲げたエンジニアリング領域への進出にあたっては、ドバイ近郊国・中東や東欧などのリソースを日本企業に結び付けるサービスも想定しているようだ。

3) M&Aの活用
セグメントの拡大にあたっては、積極的にM&Aも視野に入れていく方針である。これまでも、(株)働き方ファームの子会社化により「CASTER BIZ 採用」を開始(2018年2月)したほか、(株)wibのコンサルティング事業の譲受により「bizhike」(現在のCASTER BIZセールスマーケ)を開始(2020年8月)した実績があるが、今後もリモートワークへの順応性が高く、セグメント拡大に資する企業を探っていく考えだ。

4. 弊社アナリストによる中長期的な注目点
弊社でも、対象領域の拡大により新たな市場を切り開き、成長の角度を引き上げていく戦略は、「リモートワークを当たり前にする」というミッションの実現に向けて必然的な方向性と捉えている。これまでもセグメントの拡大が同社業績を押し上げてきたことを勘案すれば、理にかなっていると言えるだろう。ただ、現在のバックオフィス領域から、コンサルティング、マーケティング、エンジニアリングとより専門性が高い領域へ展開するにあたって、これまでの成功体験やノウハウがどの程度生かせるのか、ビジネスモデル自体をいかにチューニングさせていくのかがポイントになると考えられる。もちろん、創業以来、細かい経験値を積み重ねることで、ビジネスモデルの精度を高めてきた同社にとっては十分承知のうえだろう。また、中長期的には、それこそリモートワークが当たり前の時代になったときに、大手企業からも必要とされている、これら領域に属する人材が、同社プラットフォームに加入するインセンティブをどう設計していくのか、さらには予算規模の小さい中小企業とどう折り合いをつけていくのかが、非常に興味深いところである。そういう意味では、海外人材(特にエンジニア)の確保が重要な切り札になる可能性もあると見ている。同社では上場前から海外事業への先行投資を行うなど、既に将来を見据えた動きをとっており、マネジメントの先見性や実行力、スピード感を窺い知ることができる。いずれにしても、着眼点の良さと強い信念で市場を切り開いてきた同社ではあるが、今後さらに事業を発展させ、社会にインパクトを与えるためには、ここからが経営手腕の見せどころと言えるだろう。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)

《SI》

 提供:フィスコ

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