TOKAI Research Memo(8):2026年3月期の業績目標は売上高2,600億円、営業利益175億円(2)
■TOKAIホールディングス<3167>の業績動向
(3) 事業セグメント別戦略と業績目標
a) エネルギー事業
エネルギー事業は2026年3月期に売上高1,087億円、営業利益78億円を目指す。年平均成長率では2%の増収増益となる。M&A・アライアンスの推進と営業エリアの拡大により、LPガスと都市ガス合わせて顧客件数を2023年3月期末の82万件から94万件に拡大するほか、DXによる業務効率化、顧客満足度の向上によって他社との差別化を図り、シェア拡大を目指す。LPガス等の販売価格は2024年3月期以降、横ばいで推移することを前提とする。顧客件数は新型コロナウイルス感染症拡大(以下、コロナ禍)の影響でM&A交渉が難航した直近3期間でも11万件増加していることから、12万件の積み上げは可能と弊社では見ている。
b) 情報通信事業
法人向け情報通信事業は2026年3月期に売上高390億円、営業利益51億円を目指す。年平均成長率では10%増収、3%増益となる。旺盛なDXニーズや行政も含めたクラウドサービスの拡大が見込まれるなか、ネットワークインフラの拡充を進めることでストックビジネスの拡大を図る。光通信ネットワークの拡張(九州エリアへの延伸)と既存ネットワークの能力増強を図るため減価償却負担増により利益成長率は一時的に低くなるが、ストックビジネスの積み上げにより中長期的な利益貢献が期待される。
個人向け情報通信事業は2026年3月期に売上高259億円、営業利益14億円を目指す。年平均成長率では2%増収、33%増益となり、利益改善を大きく見込んでいる。従来と同様、販売チャネルの連携強化やサービスラインアップの拡充に取り組むことで、顧客件数を2023年3月期末の84万件から93万件に拡大する。利益率の上昇は販売ミックスの改善や減価償却の負担軽減が要因と見られる。
c) CATV事業
CATV事業は2026年3月期に売上高379億円、営業利益64億円を目指す。年平均成長率では3%増収、1%増益と安定成長を見込む。顧客件数を2023年3月期末の129万件から135万件に積み上げていくほか、グループ各社において地域のニーズに合わせた新事業・新サービスを展開し、新たな収益の創出を図る。具体的には、ネットオプションサービス(訪問サポート、遠隔サポート、ネットセキュリティサービス等)や家電のサブスク・空き家管理サービス、フィットネスジム起点の健康系事業、シェアサイクル起点の地産電気活用事業など各種サービスを企画開発して取り組んでいる。引き続きM&Aも検討しているようで、成約すれば上乗せ要因となる。
d) 建築設備不動産事業
建築設備不動産事業は2026年3月期に売上高373億円、営業利益30億円を目指す。年平均成長率では12%増収、14%増益と事業セグメントのなかで唯一2ケタ台の収益成長を計画している。2019年以降、土木建築工事をメインに展開する日産工業や電気設備工事を行う中央電機工事、大規模修繕工事を行うマルコオ・ポーロ化工など、建築分野における様々な事業会社をグループ化しており、これらグループ会社のリソースを結集、総合建築事業会社として中京エリアで事業を拡大する戦略だ。従来はグループ各社が単独で受注活動を展開してきたため、売上の伸びも限定されていたが、グループとして一括受注する案件を増やすことで売上規模の最大化が可能となり、グループシナジーも顕在化すると期待される。
e) アクア事業
アクア事業は2026年3月期に売上高87億円、営業利益8億円を目指す。年平均成長率では5%増収、17%増益となる。静岡・関東・中京エリアにおける販売強化を推進し、特に静岡県内については今までリターナブルシステムでサービスを提供してきたが、物流コスト上昇を受けてワンウェイシステムでの販売も開始する。2023年4月からは給水型浄水ウォーターサーバーの販売も全国で開始し、飲料水に関する多様なニーズを取り込んでいる。顧客件数は2023年3月期末の17万件から19万件と2万件の純増を目指すが、直近3期間では競争激化もあって0.4万件の増加に留まっていることから考えると目標達成のハードルはやや高い印象だ。顧客獲得を優先するか利益を重視するかで業績も変わると予想される。
(4) DX戦略
DX戦略として、社内業務のDXによる業務効率の向上に取り組んでいるほか、営業面ではデジタルマーケティング施策の効果を高めるツールとなる会員アプリの登録数を拡大し顧客接点を強化することで、顧客件数の拡大、並びに顧客のLTV最大化に取り組む。会員アプリを通じて最適なタイミングで最適な提案や最新の情報を発信することで、サービスの解約防止やグループのほかのサービスの契約獲得機会が増えるといった効果が期待できる。2023年9月末時点で会員アプリの登録数は36.5万件だが、これを2026年3月期末に100万件まで拡大する。
また、LPガス事業においてスマートメーター(遠隔検針システム)の設置を進めている。スマートメーターを顧客先に設置することで、検針業務の自動化、LPガスタンクの残量の可視化が実現し、最適なタイミングや最適ルートで顧客へ配送可能となり、物流コスト等のコスト低減効果が期待される。2023年9月時点で65%の設置比率を2026年3月末までに100%にすることを目標としている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
《SO》
提供:フィスコ