Jトラスト Research Memo(2):2023年12月期第3四半期の利益項目は通期予想を超過(1)
■Jトラスト<8508>の業績動向
1. 2023年12月期第3四半期の業績概要
2023年12月期第3四半期の営業収益は84,577百万円(前年同期比48.4%増)、営業利益は11,134百万円(同25.5%減)、税引前利益は13,099百万円(同27.4%減)、親会社の所有者に帰属する四半期利益は18,340百万円(同28.6%増)となった。営業収益は増収となったが、営業利益は前期にJT親愛貯蓄銀行(株)やJトラストグローバル証券の株式取得により生じた負ののれん益剥落と、韓国での預金利息費用や貸倒引当金の増加などの影響から減益となった。親会社の所有者に帰属する四半期利益は、Nexus Bankの吸収合併に伴い繰延税金負債を取崩し戻し入れを行ったことなどにより増益となった。この結果、利益項目はすべて第2四半期決算発表時に上方修正した通期予想を超過し、順調な推移となった。特に、事業セグメント別営業損益では、コア事業である金融3事業の営業利益は、30億円と順調である。
2. 事業セグメント別動向
(1) 日本金融事業
2023年12月期第3四半期の営業収益は10,246百万円(前年同期比22.1%増)、営業利益は3,469百万円(同5.0%増)となった。営業収益は前年同期に連結対象としたJトラストグローバル証券やNexus Cardの業績が期初から寄与したこと、証券業務やクレジット・信販業務に係る手数料収益が増加したことから増収となった。営業利益は債権回収が好調に進捗したこと、保証事業が安定的に推移したことなどにより増益となった。営業利益率は33.9%と引き続き高水準であることから、同社グループの業績を下支えする主力事業であることに変わりはない。
2023年9月末の保証残高合計は2,237億円と、2022年以降は緩やかながら増加傾向に転じている。保証残高の8割を占めるアパートローン保証のうち、2020年11月から開始した中古アパートローンの保証残高は320億円と、前年同期の約2.2倍に急増し、保証残高全体を押し上げた。マーケットは活況で、富裕層のニーズが高く、競合する中古アパートローンの保証会社が少ないことが好調の理由のようだ。また、Jトラストグローバル証券、提携銀行、日本保証の協業による富裕層向けの有価証券担保ローンは好調である。さらに、Jトラストグローバル証券では新社長を招聘したほか、ウェルスマネジメント業務拡大に向けて人材獲得を推進している。Nexus Cardでは男性脱毛業界最大手の「メンズクリア」((株)クリアが展開)をはじめとした提携先を通じた割賦取扱高が、2023年12月期第3四半期には前年同期の6.3倍となる91億円に急増した。この割賦売掛金残高の増大も、日本保証の保証残高を押し上げる見込みである。
サービサー(債権回収)業務全体の請求債権残高は2022年12月末の9,060億円から2023年9月末には9,163億円に増加し、依然として高水準を維持している。このうち、日本保証がTFK(株)(旧 (株)武富士)より継承した簿外債権(請求可能債権)に大きな動きはないが、パルティール債権回収(株)が取り扱う債権については、回収が好調な一方で買取も順調に進んだ。
(2) 韓国及びモンゴル金融事業
2023年12月期第3四半期の営業収益は35,674百万円(前年同期比31.6%増)、営業損失は1,652百万円(前年同期は14,127百万円の利益)となった。営業収益は前第2四半期に連結対象となったJT親愛貯蓄銀行の業績が期初から寄与したこと、貯蓄銀行業務における利息収益の増加により、大幅増収を記録した。前年同期はJT親愛貯蓄銀行の取得に伴う負ののれん発生益を計上したこと、2023年12月期は韓国中央銀行による基準金利の段階的引上げに伴う預金金利の上昇及び新型コロナウイルス感染症拡大(以下、コロナ禍)に伴う経済悪化による貸倒引当金(損失評価引当金)繰入額が増加したことなどにより、営業損失を計上した。四半期別の営業損益の推移では損失を続けているが、第3四半期には4億円の損失まで縮小し、9月には単月黒字となるなど、業績回復の兆しが見える。
JT親愛貯蓄銀行の貸出残高は、不良債権増加やBIS規制遵守のために戦略的に抑制したことで、2022年12月末の2,700億円から2023年9月末には2,586億円に減少した。米国西海岸のシリコンバレー銀行が2023年3月に経営破綻したことを受け、金融当局の今後の対応が不透明なこともあり、アクセルを踏む状況ではないとの判断から、量より質を重視した結果だ。90日以上延滞債権比率は2022年12月末の5.62%から2023年9月末には8.68%に上昇したものの、貸倒引当金を控除したネットでは2.64%と低水準である。JT貯蓄銀行(株)では、2022年12月末の貸出残高1,938億円から減少したが、2023年4月を底に反転し、9月末には2,315億円に増加した。90日以上延滞債権比率は2022年12月末の4.96%から2023年9月末には5.58%に上昇したが、貸倒引当金を控除したネットでは2.43%と低水準に留まる。JT親愛貯蓄銀行は個人向け貸出の比率が高く、JT貯蓄銀行は中小企業取引に強いことが、両銀行の延滞債権比率の差になっている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)
《SI》
提供:フィスコ