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師走IPO始まる、「宇宙」「ドローン」「インパクト投資」など焦点に <株探トップ特集>


―例年より少なめの15社が登場、年内最後の注目イベントを飾る銘柄は何か―

 師走相場を迎えるとともに、 12月IPOがスタートした。東京市場は、日経平均株価は高値圏にあるが、中小型株は伸び悩む状況となっている。そんななか、年内最後の注目イベントと呼ばれる師走のIPOが本格化する。今月は15社が登場。宇宙やドローン関連銘柄などの登場が関心を集めている。ただ、赤字企業や資金吸収額がそこそこの規模の銘柄も少なくなく、パフォーマンスには格差がつく展開も考えられる。

●22年師走に比べ10社の減少、中小型株への見直しあるか

 例年12月は、IPO企業数が3月と並び最も増える時期だ。今年も15社の登場が予定されているが、昨年に比べ10社の減少で12月としては控え目の数となっている。その内訳は、東証グロース市場への上場が11社、同スタンダード市場が4社といったものだ。このうち3社は上場予定日に幅を持たせた。東証プライム市場への上場企業はないが、宇宙、ドローン関連銘柄などが登場する。個別では、赤字企業も少なくなく、資金吸収額がそこそこの規模の銘柄も目立つ。

 2023年を通じてみると、IPO企業数は96社前後となる見通しで昨年の91社から5社ほど増加しそうだ。21年の125社からは減少するが高水準を維持する。もっとも、かつてのようなIPO銘柄に対する熱気は薄れており、10月に新規上場した12社のうち5社の初値は公開価格を割り込んだ。11月も3社のうち1社の初値が公開価格割れとなった。23年の株式相場の特徴は、海外投資家の買いで東証プライム市場に上場する大型株が買われた一方、中小型株は物色の対象外となったことだ。IPO銘柄も東証プライムに上場したKOKUSAI ELECTRIC <6525> [東証P]や楽天銀行 <5838> [東証P]などの堅調な値動きが目立ったが、中小型株は初値が飛んでもセカンダリー(流通)市場では失速する銘柄も少なくなかった。ただ、足もとでは東証グロース銘柄を見直す動きも出つつあり、この流れが本格化するかが、12月IPOを左右することになりそうだ。

●宇宙ベンチャーのQPS研究所に関心集まる

 12月IPOの第1号である4日に上場したアスマーク <4197> [東証S]の初値は、公開価格を6%強下回った。同社はマーケティング・リサーチ事業が主力だが、東京プロマーケットからの上場だった。そんななか、市場の注目を集めているのが、6日に上場するQPS研究所 <5595> [東証G]だ。同社は小型合成開口レーダー(SAR)衛星の開発・製造、小型SAR衛星より取得した画像データの販売を手掛ける。人工衛星の開発・製造を行う「宇宙」ベンチャー銘柄として関心は高い。業績は赤字基調だが、公募株数は上場発表時に比べ増やされ資金吸収額は40億円程度となった。今年4月に新規上場した宇宙関連企業のispace <9348> [東証G]が人気化したことは記憶に新しいが「衛星製造の方が収益化の道筋も見えやすいかもしれない」(アナリスト)との声もあり、QPS研究所への関心が高まっている。

●ドローン関連のブルーイノベーションにも注目

 12日にはアウトルックコンサルティング <5596> [東証G]が上場する。同社は、経営管理システム「Sactona」の開発、導入とシステムコンサルティングなどを手掛ける。資金吸収額は40億円弱の見込みだ。同じく、12日に上場するブルーイノベーション <5597> [東証G]も関心を集めそうだ。12日から18日のいずれかの日の上場が予定されていたが、12日に決定した。同社は、複数の ドローン・ロボットを遠隔で制御し、統合管理するためのシステムを手掛けている。公開価格は仮条件を上振れて決定しており、資金吸収額は13億円程度だ。足もとの業績は赤字だが、その成長性が市場でどう評価されるかが関心を集めている。
 
●ラーメンチェーン「魁力屋」やインパクトIPO「雨風太陽」など

 15日には、魁力屋 <5891> [東証S]が登場する。同社はラーメンチェーンを展開しており、仮条件から弾いた資金吸収額は20億円強の見込み。業態に新鮮味はないが、「コロナ禍後で外食チェーンなどには見直し機運が高まっている」(アナリスト)だけに、着実な人気を集めることが期待されている。同じく15日にはコンサルティングサービスとサイバーセキュリティー事業を手掛けるS&J <5599> [東証G]が上場する。

 18日には、雨風太陽 <5616> [東証G]が登場する。同社は農産物や魚介類などの産地直送アプリ「ポケットマルシェ」などを運営する。NPO法人として設立され、利益を生みながら社会問題の解決を目指す初の「インパクトIPO」銘柄の上場として関心を集めている。足もとの業績は赤字で、資金吸収額は5億円程度の見込み。社会性と収益や成長性を市場がどう評価するかが焦点だ。19日には、財務・会計分野を中心にコンサルティングサービスを提供するエスネットワークス <5867> [東証G]が上場する。同社の資金吸収額は3億円程度の見込みと小さく値が飛ぶ展開が期待されている。

●ヒューマンテクノロジーズや早稲田学習研究会なども

 12月下旬にかけての主な銘柄では、20日に自動車産業DX(デジタルトランスフォーメーション)事業などを手掛けるナイル <5618> [東証G]が上場する。同社の業績は赤字基調で市場の評価が注目される。ITアウトソーシング・BPOサービスなどのロココ <5868> [東証S]は20日から26日のいずれかの日に上場する。22日に勤怠管理を中心にクラウドサービスを手掛けるヒューマンテクノロジーズ <5621> [東証G]が新規上場する。学習塾事業の運営を行う早稲田学習研究会 <5869> [東証S]は22日から28日のいずれかの日に登場。27日に衣料品や雑貨の企画などを手掛けるyutori <5892> [東証G]が上場する。

■12月IPO一覧
上場日 コード・上場市場 企業名  主幹事
12月4日  4197・東S アスマーク  SBI
6日   5595・東G QPS研究所  SMBC日興
12日   5596・東G アウトルックコンサルティング  SMBC日興
12日   5597・東G ブルーイノベーション  大和
15日   5891・東S 魁力屋  大和
15日   5599・東G S&J  東海東京
18日   5616・東G 雨風太陽  SMBC日興
19日   5867・東G エスネットワークス  SBI
20日   5618・東G ナイル  SMBC日興、SBI
20~26日 5868・東S ロココ  野村
21日   5619・東G マーソ  SBI
22~28日 5869・東S 早稲田学習研究会  野村
22日   5621・東G ヒューマンテクノロジーズ  みずほ
25日   5870・東G ナルネットコミュニケーションズ  みずほ
27日   5892・東G yutori  大和
(注)東Sは東証スタンダード、東Gは東証グロース


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