エヌ・シー・エヌ Research Memo(5):大規模木造建築(非住宅)の売上は3.2倍に成長(1)
■業績動向
1. 2024年3月期第1四半期の業績
エヌ・シー・エヌ<7057>の2024年3月期第1四半期(4-6月)業績は、売上高1,966百万円(前年同期比7.7%減)、売上総利益585百万円(同10.0%増)、営業利益33百万円(同66.4%減)、経常利益5百万円(同92.7%減)、親会社株主に帰属する四半期純損失9百万円(前年同期は49百万円の利益)となった。大口取引先である大手ハウスメーカーの受注高減少と販売単価の下落により住宅分野の売上高が前年同期比32.8%減少した。大規模木造建築(非住宅)分野の売上高が同3.2倍に成長したものの、全体では減収となった。利益面では、連結子会社4社(MAKE HOUSE、SE住宅ローンサービス、木構造デザイン、翠豊)の営業損失、及び持分法適用関連会社2社(MUJIHOUSE、N&S開発)の持分法による投資損失32百万円の計上により、大幅な減益となった。MUJI HOUSEは戸建て住宅販売において、2022年からの木材価格高騰(ウッドショック)の影響を受け、それ以前から受注していた案件の採算が取れなくなったことが主因で損失を計上した。
2. 事業セグメントとセグメント売上高
2024年3月期第1四半期における住宅業界の状況については、新設住宅着工戸数が2023年4月は前年同月比11.9%減となり3ヶ月連続で前年同月を下回った。5月は前年同月比で増加に転じ同3.5%増となったものの、6月は再び同4.8%減となり、7月も同6.7%減と連続で減少した。持家については、4月は同11.6%減、5月は同11.5%減、6月は同12.4%減と3ヶ月連続の減少となった。7月は同7.8%減、8月は同5.9%減と21ヶ月連続の減少が続くなど、住宅市場環境は逆風に晒されている。
一方、同社が手掛ける大規模木造建築では、2021年10月に改正された「脱炭素社会の実現に資する等のための建築物等における木材の利用の促進に関する法律」、さらに2022年6月には、同法の一部を改正する法律に基づき、大規模建築物について大断面材を活用した建物全体の木造化や、区画を活用した部分的な木造化を可能とするなど、脱炭素社会実現に向けた政府の動きが追い風になっている。同社は、SE構法以外の工法の構造計算、構造設計を行う木構造デザインの設立、大規模木造建築に必要な大断面集成材加工やその施工力に強みを持つ翠豊の子会社化等のインフラ整備を進めてきたことで、その事業領域が拡大している。さらに、SE構法の別荘など高付加価値住宅は完全注文住宅であるほか、新しいライフスタイルを提案するセカンドハウスマーケットの開拓などは、新たな生活様式の浸透によって需要拡大が見込まれる。
また、2022年6月の通常国会において、建築基準法の改正が決議された。これにより、2025年4月より木造住宅の省エネルギー性能の確保が義務となった。同社は創業以来木造住宅の構造設計を主業務としており、これまで国の政策に先駆けて取り組んできた様々な成長投資の成果が業績面に表れてきているなか、さらに2年後の構造計算ニーズ増大に対応すべく、脱炭素社会に向けた「建築物の木造化」「設計のDX」への準備を整えている。
(執筆:フィスコアナリスト 村瀬智一)
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提供:フィスコ