サイバネット Research Memo(1):シミュレーション技術とAI等を組み合わせ、研究開発分野のDXを推進
■要約
サイバネットシステム<4312>は、製造業を中心に設計・研究開発などで利用されるCAE(コンピュータによる工学支援)ソフトウェアのソリューションサービス大手であり、クラウドセキュリティ製品なども取り扱っている。CAE製品で世界シェア約38%のトップ企業であるAnsys<ANSS>の製品を中心に、35社以上の製品を網羅的に取り扱っており、CAEソリューションのパイオニアとして約2,400の企業、350の大学・研究機関を顧客に抱える。また、欧米にソフトウェア開発会社3社を子会社に持つほか、中国、台湾を中心にアジア市場でもCAEソリューションビジネスを展開している。単体売上高の約6割をライセンス更新契約が占めるため、収益の安定性が比較的高く、手元金融資産が160億円超と潤沢にあることが特徴となっている。
1. 2023年12月期第2四半期累計業績の概要
2023年12月期第2四半期累計(2023年1月~6月)の連結業績は、売上高で前年同期比2.7%増の10,003百万円、営業利益で同38.0%減の640百万円と増収減益となった。売上高はシミュレーションソリューションサービス事業において国内の新規ライセンス販売及びアジアの販売子会社が低調だったものの、既存顧客の更新需要が好調に推移したほかセキュリティ対策製品を中心にITソリューションサービス事業が伸長したことで増収を確保した。一方、利益面では人材投資に伴う人件費や募集採用費の増加、並びに円安による仕入コスト高の影響等により減益となった。ただ、受注高は前年同期比7.1%増の11,317百万円と順調に推移し、第2四半期末の受注残高も前年同期末比12.9%増の9,504百万円と積み上がっていることから、下期は売上高も一段と拡大するものと予想される。
2. 2023年12月期の業績見通し
2023年12月期の連結業績は、売上高で前期比10.4%増の22,000百万円、営業利益で同5.2%増の1,850百万円と期初計画を据え置いた。中期経営計画に掲げた「自社開発製品の強化」「アジア事業の拡大」などを推進することで通期計画の達成を目指す。下期に120億円程度まで売上を伸ばす必要がありハードルはやや高くなるが、受注状況が堅調に推移しているほか、アジアで延伸になった案件も下期に計上される見込みであることから、射程圏内にあると見ている。利益面では140円台/ドルの為替水準が続くようだと仕入コスト高で厳しくなるが、同社はコストをコントロールしながら売上高を伸ばすことで計画達成を目指す意向である。
3. 中期経営計画
同社は、2022年12月期から5ヶ年の中期経営計画をスタートしている。成長戦略として「自社開発製品の強化」「アジア事業の拡大」「モノづくりのDX促進」「SDGs分野などでのシミュレーション技術の活用」に取り組み、売上成長を図るとともに、高付加価値事業の強化と成長投資のバランスを取りながら高水準の利益率を目指す。経営数値目標として2026年12月期に売上高30,000百万円(2022年12月期比50.5%増)、EBITDA(営業利益+減価償却費)3,800百万円(同23.7%増)を掲げている。目標達成の鍵を握るのは自社開発製品・サービスで、M&Aも活用しながら2022年12月期で30%の売上構成比を40%まで、金額ベースで約2倍に引き上げる計画である。M&A資金は160億円超と潤沢にある手元資金で賄えることから、今後の動向が注目される。
4. 株主還元策
株主還元策については、短期的に減益になったとしても安定した配当を実施することを目的に、「親会社株主に帰属する当期純利益」の範囲を原則として、DOE(純資産配当率)で6.0%の水準を配当の目安としている。2023年12月期の1株当たり配当金は前期比横ばいの29.0円を予定している。また、自己株式の取得についても手元資金や株価水準等を総合的に勘案しながら機動的に判断する方針であり、直近では2022年2~3月に実施している。
■Key Points
・CAEのリーディングカンパニーとして38年以上にわたり日本のモノづくりを支援
・2023年12月期第2四半期累計の売上高はライセンス更新需要とセキュリティ対策製品の好調により2年ぶりの増収に転じる
・2023年12月期業績は売上拡大とコストコントロールにより増収増益を目指す
・2026年12月期の売上高300億円、EBITDA38億円の目標達成に向けM&Aも積極的に検討を続ける
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
《YI》
提供:フィスコ