「脱炭素化」実現の急先鋒、世界を救う「メタネーション」関連妙味株6選 <株探トップ特集>
―メタン製造工程で「カーボンニュートラル」達成、エネルギーの自立性高める利点も―
大企業が中核的な先導者となる形で、脱炭素化を進める「カーボンニュートラル 」に向けた取り組みが進んでいる。その実現に向け、官民双方が熱視線を送る技術が、水素と二酸化炭素(CO2)を合成してメタンを製造する「メタネーション」だ。大きな将来性を秘めるメタネーション関連株を探った。
●メタンの生産過程でCO2を相殺
カーボンニュートラルとは「温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする」というもの。CO2に限らず、メタン、一酸化二窒素、フロンガスを含む温室効果ガスについて、「排出量から吸収量と除去量を差し引いた合計をゼロにする」ことを目指している。このカーボンニュートラルを進めていくにあたって、特に抜本的な革新・改革を求められている領域の一つが電気・エネルギー・資源などのいわゆるエネルギー転換部門だ。少なくとも温室効果ガス排出量の全体の約9割を占めるCO2については、エネルギー起源の排出がほとんどと言って差し支えない水準にあり、同部門が占める割合は電気・熱配分前排出量ベースで約4割となる。
そのエネルギー転換部門の多くの企業が、カーボンニュートラル実現に向け活路を見出している技術の一つが「メタネーション」だ。これは、端的に言えば水素とCO2を使ってメタンを合成する技術である。なぜ温室効果ガスの一種であるメタンをわざわざ作るのか、と疑問に思うかもしれない。メタンは天然ガス、つまり我々が日常的に使用している都市ガスの主成分なのだ。メタンは燃焼時にCO2を排出するが、工場などから回収したCO2を使ってメタンを作れば、メタンの燃焼時に排出されるCO2と相殺され、大気中のCO2は増加しない。つまり、メタンの生産の過程でカーボンニュートラルが実現されるというわけだ。
●大ガスとENEOSはe-メタンの大規模製造を検討
この人工的に生み出す「e-methane(e-メタン)」については、もちろん現段階ではコスト面などの諸課題が依然として横たわっている。とはいえ、天然資源が乏しく、輸入に依存していることでこれまで幾度も危機にさらされてきた日本にとっては、エネルギーの自立性を高めるという意味でも大変重要な技術と位置付けられている。
足もとでこのメタネーションに関して、取り組みを積極的に進めている企業の一角である大阪ガス <9532> [東証P]が新たな動きを見せた。ENEOSホールディングス <5020> [東証P]と、大阪港湾部におけるグリーン水素を活用した国内初となる国産e-メタンの大規模製造に関する共同検討を開始したと8月29日に発表したのだ。9月に入って更に続けて、e-メタンプロジェクトの開発を進めているベルギーのTree Energy Solutions(TES社)と包括的な共同検討を開始すると発表。メタネーションの取り組みを加速させていく機運が一気に高まっている。
また、日本全体のエネルギーという視点からのメタネーション導入の他にも、例えば直近の事例で言えばアイシン <7259> [東証P]のように、その場でe-メタンを作り、工場内燃料として活用する形式=「オンサイトメタネーション」の広がりも期待されている。同社の場合、愛知県西尾工場に独自設計した小型装置を設置。報道によれば、2025年度にも溶解炉1台から発生するCO2を全量回収する装置の開発を目指しているようだ。
「メタネーション」関連銘柄としては、東京ガス <9531> [東証P]、大ガス、関西電力 <9503> [東証P]など電力会社やガス会社、INPEX <1605> [東証P]やENEOSなどの石油会社、更に住友商事 <8053> [東証P]、三菱商事 <8058> [東証P]などの商社が挙げられる。以下では、メタネーションに関連する技術開発を進めている企業のほか、メタネーション設備、再生可能エネルギー発電設備や水電解装置などの関連設備を手掛けている注目の6社を選出した。
●IHI、千代建、日立造、横河電などを評価
IHI <7013> [東証P]~22年10月に小型メタネーション装置の販売を開始し、同年12月にはJFEホールディングス <5411> [東証P]傘下のJFEスチールの試験高炉向けに1時間に500N立方メートルのメタンを製造するメタネーション装置を受注した。触媒の高度化、反応器の大型化、反応熱の有効利用プロセス改善などに取り組んでおり、1時間に数千~数万N立方メートルの合成能力を持つメタネーション装置を、30年までに国内外にて商用化する予定である。
千代田化工建設 <6366> [東証S]~今年6月16日にINPEXから、メタネーション試験設備工事を受注したと発表した。INPEXと大ガスが共同で、INPEXがNEDOから採択された助成事業のもと進めるものであり、同社と設計・調達・建設の一括請負(EPC)契約をした。実際に建設工事が開始されたプロジェクトとしては、世界最大級となる家庭用1万戸分に相当する試験設備となる。
日立造船 <7004> [東証P]~独自の高性能触媒を用いた、試験用の小型メタネーション試験装置を販売しており、自社でのメタン化試験やPower to Gasの研究用途として提供。また、環境省委託事業として、神奈川県小田原市の清掃工場から回収したCO2の資源化による炭素循環モデルの構築実証事業を行った。
三菱重工業 <7011> [東証P]~同社と横浜市、東ガスは、横浜市鶴見区末広町において、ごみ焼却工場の排ガスから分離・回収したCO2を東ガスのメタネーション実証設備に輸送し、メタネーションの原料として利用する、国内初となる地域連携でのCCU(CO2の分離・回収、利用)共同実証を行っている。
岩谷産業 <8088> [東証P]~21年7月に関西電と共同で、液化水素製造プラント「ハイドロエッジ」を活用したCO2フリー水素の製造及びカーボンニュートラルメタンの製造に向け、NEDOの委託事業「水素社会構築技術開発事業/地域水素利活用技術開発」に応募し、採択されている。メタネーションによるカーボンリサイクルの最適手法の検討及びモデル構築などを検討。
横河電機 <6841> [東証P]~メタン生成菌という微生物を活用して、工場やプラントなどから排出されるCO2を水素と反応させることでメタンを生成する微生物的メタネーションの研究開発を行っている。レーザー分析技術やpHセンサーなど同社の得意とする「測る」を活用。
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