明日の株式相場に向けて=「トヨタ系自動車部品株」再攻の時
きょう(31日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比285円高の3万2619円と4日続伸。3万2000円台前半は滞留出来高が多く、戻り売り圧力の強いゾーンだったが、力ずくで75日移動平均線を踏み台によじ登ってきた感がある。売買代金は久しぶりに4兆円を上回った。
ここ世界株高局面が続いていたが、前日を振り返ると日経平均は3日続伸したものの、後場は一貫して上げ幅を縮小する展開を強いられた。その“ちょっと変調モード”が伝播したのか欧州株市場が上昇一服となり、その流れを引き継いで米国株市場もやや不安定な値動きを強いられた。前日はNYダウ、ナスダック指数いずれも高く引けたのだが、朝方に水準を切り上げた後いったん値を消しマイナスに転じる場面があった。ひところの上げ潮ムードは一巡した感もある。実際のところ、日付が変わった今日もアジア株市場は中国や香港株をはじめ軟調に推移し、日本株もそれに引きずられそうな雰囲気はあった。ところが思った以上に頑強で、後場に入ると日経平均は上げ幅を300円以上に広げる場面があった。
取引時間中の材料としては、午前中に発表された8月の中国製造業PMIがマーケットの予想を覆し前月から上昇、これがポジティブ視されたとの解釈がある。しかし、当の中国株市場の反応は薄く、上海総合指数はマイナス圏で軟調な動きが続いた。「日本株については月末のリバランス売りが想定される一方、今は空売り筋の買い戻しを誘発しやすいタイミングで、後場の一段高はショートカバーが反映されたもの」(中堅証券ストラテジスト)という説明が的を射ている。日本時間今晩発表の7月の米PCEデフレーターと明晩の8月米雇用統計を控えるなか、見切り発車の買いを入れるにせよ大口は無理で、打診買い程度にとどまるのは仕方のないところ。とすると、後場の水かさが増すような指数の上昇は空売り筋による先物絡みの買い戻しが作用した可能性が高そうだ。
明日からは名実ともに9月相場入りとなるが、前々日にも触れたように過去のデータでは外国人投資家は日本株を売り越す可能性が高い月である。ただ、株価動向とは必ずしも連動しておらず、9月の月間騰落率は過去10年でみると7勝3敗で、強気筋の拠りどころの一つにこのアノマリーがある。今後の展望としては、東京市場には色々な意味で中国リスクが立ちはだかるが、これがどの程度の売り圧力として顕在化するかは未知数だ。「中国リスクが囃(はや)される傍らで結構なショート(空売り玉)が積み上がっている」(中堅証券ストラテジスト)という指摘もあり、相場はどちらに転ぶのか見当がつかない。強気筋と弱気筋の思惑が入り乱れるなか、狐と狸の化かし合いのような9月相場が始まる。
個別株は、今日はトヨタ自動車<7203>が輝きを放った。株価は終始堅調で上場来高値更新にあと一歩と迫り、売買代金も上位に食い込んだ。半導体不足解消によって自動車生産の回復が順調に進み、同社が前日発表した1~7月の生産実績は570万3171台で前年同期比12.5%増と2ケタ伸長を達成。更に日本経済新聞が「(同社が)23年の『トヨタ・レクサス』ブランドの世界生産を1020万台とする計画を固めた」と報じ、これが人気を助長した。同社株もさることながら、ここで注目したいのは同社のグループ企業である。とりわけ、生産台数回復が収益機会に直結する自動車部品各社は“トヨタ効果”がかなりのフォローウインドとなることが期待される。
トヨタ系自部品会社への買いは、今の低PBR株物色の流れにも乗る。共和レザー<3553>、愛知製鋼<5482>、ジェイテクト<6473>、アイシン<7259>、愛三工業<7283>などが有力候補となる。特に愛知鋼のPBRは0.3倍台、共和レが0.4倍台とこの2銘柄の割安感が際立つ。このほかトヨタ関連ではないが、低PBRの好チャート銘柄としてカーリットホールディングス<4275>、日本高周波鋼業<5476>を挙げておきたい。
明日のスケジュールでは、4~6月期の法人企業統計が朝方取引開始前に開示されるほか、午後取引時間中に8月の新車販売台数、8月の軽自動車販売台数が発表される。また、3カ月物国庫短期証券の入札が午前中に実施される。海外では8月の米雇用統計に対するマーケットの関心が高い。このほか、8月の米サプライマネジメント協会(ISM)製造業景況感指数、7月の米建設支出なども注目される。なお、この日はシンガポール市場とベトナム市場が休場となる。(銀)
出所:MINKABU PRESS
最終更新日:2023年08月31日 17時31分
ここ世界株高局面が続いていたが、前日を振り返ると日経平均は3日続伸したものの、後場は一貫して上げ幅を縮小する展開を強いられた。その“ちょっと変調モード”が伝播したのか欧州株市場が上昇一服となり、その流れを引き継いで米国株市場もやや不安定な値動きを強いられた。前日はNYダウ、ナスダック指数いずれも高く引けたのだが、朝方に水準を切り上げた後いったん値を消しマイナスに転じる場面があった。ひところの上げ潮ムードは一巡した感もある。実際のところ、日付が変わった今日もアジア株市場は中国や香港株をはじめ軟調に推移し、日本株もそれに引きずられそうな雰囲気はあった。ところが思った以上に頑強で、後場に入ると日経平均は上げ幅を300円以上に広げる場面があった。
取引時間中の材料としては、午前中に発表された8月の中国製造業PMIがマーケットの予想を覆し前月から上昇、これがポジティブ視されたとの解釈がある。しかし、当の中国株市場の反応は薄く、上海総合指数はマイナス圏で軟調な動きが続いた。「日本株については月末のリバランス売りが想定される一方、今は空売り筋の買い戻しを誘発しやすいタイミングで、後場の一段高はショートカバーが反映されたもの」(中堅証券ストラテジスト)という説明が的を射ている。日本時間今晩発表の7月の米PCEデフレーターと明晩の8月米雇用統計を控えるなか、見切り発車の買いを入れるにせよ大口は無理で、打診買い程度にとどまるのは仕方のないところ。とすると、後場の水かさが増すような指数の上昇は空売り筋による先物絡みの買い戻しが作用した可能性が高そうだ。
明日からは名実ともに9月相場入りとなるが、前々日にも触れたように過去のデータでは外国人投資家は日本株を売り越す可能性が高い月である。ただ、株価動向とは必ずしも連動しておらず、9月の月間騰落率は過去10年でみると7勝3敗で、強気筋の拠りどころの一つにこのアノマリーがある。今後の展望としては、東京市場には色々な意味で中国リスクが立ちはだかるが、これがどの程度の売り圧力として顕在化するかは未知数だ。「中国リスクが囃(はや)される傍らで結構なショート(空売り玉)が積み上がっている」(中堅証券ストラテジスト)という指摘もあり、相場はどちらに転ぶのか見当がつかない。強気筋と弱気筋の思惑が入り乱れるなか、狐と狸の化かし合いのような9月相場が始まる。
個別株は、今日はトヨタ自動車<7203>が輝きを放った。株価は終始堅調で上場来高値更新にあと一歩と迫り、売買代金も上位に食い込んだ。半導体不足解消によって自動車生産の回復が順調に進み、同社が前日発表した1~7月の生産実績は570万3171台で前年同期比12.5%増と2ケタ伸長を達成。更に日本経済新聞が「(同社が)23年の『トヨタ・レクサス』ブランドの世界生産を1020万台とする計画を固めた」と報じ、これが人気を助長した。同社株もさることながら、ここで注目したいのは同社のグループ企業である。とりわけ、生産台数回復が収益機会に直結する自動車部品各社は“トヨタ効果”がかなりのフォローウインドとなることが期待される。
トヨタ系自部品会社への買いは、今の低PBR株物色の流れにも乗る。共和レザー<3553>、愛知製鋼<5482>、ジェイテクト<6473>、アイシン<7259>、愛三工業<7283>などが有力候補となる。特に愛知鋼のPBRは0.3倍台、共和レが0.4倍台とこの2銘柄の割安感が際立つ。このほかトヨタ関連ではないが、低PBRの好チャート銘柄としてカーリットホールディングス<4275>、日本高周波鋼業<5476>を挙げておきたい。
明日のスケジュールでは、4~6月期の法人企業統計が朝方取引開始前に開示されるほか、午後取引時間中に8月の新車販売台数、8月の軽自動車販売台数が発表される。また、3カ月物国庫短期証券の入札が午前中に実施される。海外では8月の米雇用統計に対するマーケットの関心が高い。このほか、8月の米サプライマネジメント協会(ISM)製造業景況感指数、7月の米建設支出なども注目される。なお、この日はシンガポール市場とベトナム市場が休場となる。(銀)
出所:MINKABU PRESS
最終更新日:2023年08月31日 17時31分