【杉村富生の短期相場観測】 ─キーワードは「分断」と「大国主義」の復活!
「キーワードは『分断』と『大国主義』の復活!」
●アメリカは栄え、チャイナは枯れる?
世界の経済、政治は劇的に変化している。先のジャクソンホール会合(8月24日~26日)での議題は「グローバル経済における構造的シフト」だった。ちょっと分かりづらいが、要するに東西「分断」である。西側先進国にとってのターゲットはロシア、そして中国だろう。
ロシアとの闘いは産業界ベースではほぼ終わった。世界最大手のスポンジチタン、 アルミ企業が締め出されたのが好例だ。結果的に大阪チタニウムテクノロジーズ <5726> [東証P]、大紀アルミニウム工業所 <5702> [東証P]などが潤う構図となっている。
中国に対しては半導体関連分野を中心にハイテク技術の輸出抑制措置が取られている。中国製ドローンはアメリカ、ヨーロッパ、インド、日本などでの排除の動きが強まっている。これを受け、ドローン関連のドーン <2303> [東証S]、ACSL <6232> [東証G]などが浮上する。
さらに、「大きな国家」の流れがある。アメリカはIRA法(インフレ抑制法)、CHIPS法(半導体業界の育成)を通じ、1.7兆ドル(約250兆円)を投じる。日本は台湾積体電路製造(TSMC)<TSM>の熊本工場、マイクロン・テクノロジー<MU>の広島工場に巨額の金融支援を行っている。いわゆる、大国主義の復活である。
日本の場合、ガバメント(政府)クラウドはアマゾン・ドット・コム<AMZN>、マイクロソフト<MSFT>、アルファベット<GOOG>、オラクル<ORCL>の海外勢4社が独占してきた。「これはおかしいし、安全保障上、問題じゃないか」との声が高まっている。当然だと思う。
政府クラウドの国産化に向け、最右翼の位置にいるのがさくらインターネット <3778> [東証P]だ。会社側はこの技術(GPUクラウド)開発のために100億円(今期32億円、来期約79億円)規模の投資を計画しているが、開発費の半額を政府が補助する予定という。
●基本は銘柄! ミクリード、クラダシなどを!
アメリカと中国の2大国のうち、アメリカは好景気→インフレ、中国は不景気→デフレに悩まされている。両極端な動きである。中国の富裕層の資金はシンガポール、東京に逃げ出している。青山財産ネットワークス <8929> [東証S]は不動産クラウドファンディングのクリアル <2998> [東証G]と提携、その受け皿になり得る。
福島原発関連の処理水の海洋放出が始まった。23年度の総量は全体の2.3%にすぎない。完了までには30年程度を要する。東北の海産物の風評被害を防ぐために、水産庁主導の「UMIUMA」キャンペーン第3弾が動き始めた。居酒屋向け食材卸のミクリード <7687> [東証G]はこのプロジェクトに参加している。
イメージワン <2667> [東証S]は汚染水に含まれるトリチウムを除去する技術を持っている。現在、東京電力ホールディングス <9501> [東証P]と適合性を検証中だ。採用となると、30年間もの長期ビジネスが期待できる。株価は6月19日に922円の高値を付けたあと、調整中だ。この押し目は買える。
このほか、都市鉱山(パソコン、携帯電話のリサイクル事業)のリネットジャパングループ <3556> [東証G]、フードロス削減に貢献しているクラダシ <5884> [東証G]などが動兆しきりである。全般相場は波乱含みだが、引き続いて個別銘柄対応の投資戦術が有効だ。基本は銘柄である。
2023年8月25日 記
株探ニュース