ドーン Research Memo(4):2023年5月期も増収増益。クラウドサービスの利用料・受託開発が堅調に増加
■業績動向
1. 2023年5月期通期の業績概要
ドーン<2303>の2023年5月期通期の売上高は1,368百万円(前期比12.0%増)、営業利益443百万円(同10.7%増)、経常利益451百万円(同11.6%増)、当期純利益321百万円(同13.2%増)と8年連続の増収増益を達成した。
売上高は、期初計画の1,320百万円を3.7%上回った。各種クラウドサービス・アプリの契約数が積み上がり、ストック型の利用料収入が順調に増加するとともに、クラウドサービスの初期構築やオンプレミス環境でのシステム開発等に係る受託開発も順調に推移したことが増収の要因である。クラウドサービスは、主力の「NET119緊急通報システム」が、両備システムズからの顧客の引き継ぎが進み、消防管轄人口カバー率7割を超えトップシェアを堅持した。次期主力の映像通報システム「Live119」は、東京消防庁や福岡市等の主要都市で本運用が始まるなど、今後の導入拡大に弾みがつき、人口カバー率が約3割に迫った。災害情報共有サービス「DMaCS」、自治体や警察が防災・防犯情報を配信するスマートフォンアプリは、デジタル庁が公開する「防災DXサービスカタログ」に掲載されたことも追い風になっている。同社のクラウドサービスは、防災・防犯分野の行政サービスの基盤であることなどから、解約率が低い(1%未満)ことが特長であり、結果として安定成長が可能である。
利益に関しては、営業利益で期初計画を1.9%上回った。売上高の増加が人件費等の売上原価・販売費及び一般管理費の増加を上回ったことがその要因である。売上総利益率が前期比2.1ポイント減の64.9%となったのは、個別の受託開発案件の利益率の違いの影響である。また、両備システムズから緊急通報システムの顧客(消防本部等)の引き継ぎを受けるための移行準備に一部開発リソースを投入した。この先行投資の成果としては、進行期の「NET119緊急通報システム」のクラウド利用料として確実に見込むことができる。販管費率は1.7ポイント減の32.5%である。営業利益率は32.4%と高い水準を維持しており、事業モデルとしてクラウドサービスの卓越性がわかる。
2. 財務状況と経営指標
2023年5月期末の総資産は前期末比127百万円増の2,495百万円となった。現預金が212百万円減少する一方で投資有価証券が401百万円増加したことなどが主な要因である。負債合計は同40百万円増の269百万円であり、長期前受収益及び前受収益の増加が主な要因である。有利子負債はなく、無借金経営を継続している。経営指標では、流動比率1,000.3%、自己資本比率が89.2%と非常に高く、安全性は極めて高い。収益性の高さ(売上高営業利益率で32.4%、ROEで14.7%)が盤石な財務基盤の源である。現預金残高は1,788百万円であり、将来的なM&Aのための原資は潤沢である。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田秀夫)
《SI》
提供:フィスコ