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10月スタート迫り評価本番、好決算相次ぐ「インボイス関連」株を徹底追跡 <株探トップ特集>


―駆け込み需要にも期待、改正電子帳簿保存法の完全施行も控え一気にデジタル化へ―

 10月1日に「インボイス制度(適格請求書等保存方式)」がスタートするのを控え、株式市場では改めて関連銘柄への関心が高まっている。既に業績へ反映されている企業も多いが、駆け込み需要も予想され、今後更なる業績への期待も大きい。また、制度スタートが間近に迫ることで、メディアなどで同制度に関する話題が増えてこよう。これらを控えて、関連銘柄は改めて物色される可能性もあり、再点検が必要だろう。

●改めてインボイス制度とは

 インボイス制度とは、企業など事業者間の取引において、従来の請求書に適用税率や消費税額などの記載を追加した「適格請求書(インボイス)」を使用するというルールのこと。事業者が課税売り上げにかかる消費税額から、仕入れなどにかかった消費税額を差し引く「仕入税額控除」を行う際にこの適格請求書が必要となり、従来の請求書では控除を受けられなくなる。

 新制度では仕入税額の控除を受けるには、仕入先にインボイスの交付を求め保存しておく必要があり、交付する側もこれに応じ、写しを保存する必要がある。経理業務の煩雑化が予想されるなか、2024年1月からは改正電子帳簿保存法(電帳法)が完全施行され、電子取引に係る請求書・領収書・契約書・見積書などの紙保存が認められなくなる。そのため、インボイス制度の開始に伴い、適格請求書を電子データ化したデジタルインボイスの導入やひいては経理業務全般のデジタル化を進める企業も多く、これが関連銘柄のビジネスチャンスにつながっている。

●9割近くが対応進めるも受領側の対応には遅れも

 では、企業側の対応はどうだろうか。Sansan <4443> [東証P]が請求書関連業務に携わる1000人のビジネスパーソンに対して今年7月に行ったインボイス制度に関する実態調査によると、インボイス制度開始に向けた対応を「進めている」と答えたのは88.3%に上り、9割近くが何らかの対応を進めていることが明らかになった。

 ただ、適格請求書の受領に関わる準備を「完了している」と答えた人は22.5%にとどまったという。つまり、インボイス制度に従った請求書を発行する準備を進めている企業は多いものの、請求書を受け取る業務への対応は遅れている実情が見てとれる。こうした対応の遅れは、今後駆け込み需要となって関連企業に向かいそうだ。

●関連企業に好決算相次ぐ

 既にインボイス制度に伴う需要が業績に反映されている企業も出始めた。

 インフォマート <2492> [東証P]の第2四半期累計(1~6月)連結決算は、事業拡大に向けたコスト投下により、営業利益が3億6500万円(前年同期比17.3%減)となったが、23年12月期通期予想を営業利益で3億円から6億4000万円(前期比21.6%増)へ引き上げている。インボイス制度の開始と改正電帳法の施行に向けた顧客ニーズの大きな高まりにより、「BtoBプラットフォーム 請求書」の発注側・受注側の利用企業数が順調に増加していることが要因だ。

 ラクス <3923> [東証P]の第1四半期(4~6月)連結決算は、営業利益が10億3100万円(前年同期比3.6倍)となった。同社は、電子請求書発行システム「楽楽明細」でインボイスの発行側、経費精算システム「楽楽精算」で受領側に対応しており、「楽楽明細」は第1四半期の新規導入社数が918社(前年同期375社)、「楽楽精算」は同961社(同487社)と急増。両サービスの新規受注が順調に積み上がっていることで売上高が好調に推移する。

 ROBOT PAYMENT <4374> [東証G]は、第2四半期累計(1~6月)単独決算の発表と同時に、23年12月期通期業績予想を営業利益で1億100万円から1億4000万円(前期5800万円の赤字)へ上方修正した。請求・債権管理クラウド「請求管理ロボ」、サブスクリプション決済サービス「サブスクぺイ」ともに新規顧客獲得が好調だが、特に「請求管理ロボ」はインボイス制度開始を控えてアカウント数が前年同期比19.8%増の806アカウントに増えている。

 ウイングアーク1st <4432> [東証P]の第1四半期(3~5月)連結決算は、営業利益が25億7800万円(前年同期比33.2%増)となった。インボイス制度開始を控えて請求書の送受信から管理までを一括運用する「invoiceAgent」が好調に推移しており、同サービスのクラウド契約社数は前期末の432社から495社へ増加した。それに伴い売上高も好調に推移し業績を牽引している。

 オービックビジネスコンサルタント <4733> [東証P]の第1四半期(4~6月)単独決算は、営業利益が37億4100万円(前年同期比1.8%増)だった。今年5月にはインボイス制度・電帳法対応に必要な業務が会計システム一つで完結できるようリニューアルした「勘定奉行クラウド」を発売したことも寄与しクラウド売り上げが増加しており業績を牽引。更に24年3月期は営業利益159億5000万円(前期比8.4%増)を見込む。

 Sansanは、23年5月期の調整後営業利益が9億4200万円(前の期比28.9%増)となったが、インボイス管理サービス「Bill One」の高成長が業績拡大に貢献した。24年5月期は「Bill One」の年間固定収入70億円以上(前期37億9800万円)を目指すとしており、調整後営業利益12億4000万~18億5200万円(前期比31.7~96.6%増)を見込む。

 TKC <9746> [東証P]は今年6月に、インボイス制度に完全対応した財務会計システム「FXクラウドシリーズ」の提供を開始したが、第3四半期累計(22年10月~23年6月)連結決算ではこの「FXクラウドシリーズ」を新規に利用開始する関与先企業が増加しソフトウェア売上高が伸長した。23年9月期業績予想で営業利益を134億円から136億円(前期比1.9%増)へ上方修正した要因の一つにもなっている。

 このほか、「マネーフォワード クラウド」シリーズでインボイス制度に対応した機能を提供するマネーフォワード <3994> [東証P]や、デジタルインボイス送受信・インボイス電子化対応サービス「MJS e-Invoice」のミロク情報サービス <9928> [東証P]などにも注目したい。

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