GameWith Research Memo(1):新規事業の収益拡大で成長を狙う「ゲームのインフラ」企業
■要約
GameWith<6552>は、国内最大級のゲーム情報メディア「GameWith」を運営しており、2018年からは英語圏や繁体字圏向け攻略メディアなど海外事業を展開しているほか、NFT(非代替性トークン)ゲームやeスポーツなど新規事業への取り組みを近年積極化させている。同社の事業セグメントは3つに分かれており、ゲーム情報メディア「GameWith」等を展開する「メディア事業」、国内屈指のプロeスポーツチーム「DetonatioN FocusMe」の運営、所属クリエイターのマネジメント、GameWithCup等の社内外のゲーム大会イベントの企画運営などを行う「eスポーツ・エンタメ事業」、NFTゲーム、NFTゲーム紹介メディアの運営、ゲーマー向け光回線の提供などを行う「新規事業」となっている。
1. 2023年5月期の業績概要
2023年5月期の連結業績は、売上高3,512百万円(前期比12.5%増)、営業利益337百万円(同68.4%増)、経常利益313百万円(同40.1%増)、親会社株主に帰属する当期純利益179百万円(同51.0%増)となり、期初に発表した会社計画値の売上高3,573百万円はわずかに下回ったが、営業利益300百万円を超過達成した。売上高は2019年5月期以来、4期ぶりに過去最高を更新し、メディア、eスポーツ・エンタメ、新規事業のすべてにおいて増収を達成した。新規領域拡大のための先行投資などにより506百万円の減益要因となったが、既存のメディア事業におけるコスト効率化が進展し、利益についても期初計画を超過達成できた。また、メディア事業の成長率鈍化に対応した事業ポートフォリオの転換が順調に進み、会社の第2創業期として本格的に中長期的な成長が始まっている。
2. 2024年5月期の業績見通し
2024年5月期の連結業績は、売上高3,750百万円(前期比6.8%増)、営業利益350百万円(同3.7%増)、経常利益320百万円(同2.1%増)、親会社株主に帰属する当期純利益190百万円(同6.1%増)を見込んでいる。同社は2023年5月期にメディア事業において利益率の改善を実施し、より安定的に利益を生み出す体制が構築されていることから、2024年5月期においてもメディアで安定した利益を確保しつつ、新規事業への先行投資を引き続き強化し、短期的な利益の確保よりもさらなる中長期的な成長を目指すことに注力する方針である。メディア事業においては、ゲームメディア「GameWith」を中心に、アプリゲームだけでなく、家庭用ゲームやPCゲームなどのコンシューマーゲームのコンテンツを拡充することで収益の拡大を狙う計画である。特に、タイアップ広告における有料攻略記事の拡販が直近で順調に進んでおり、広告市況の影響を受けやすいネットワーク広告依存からの脱却を進めている。eスポーツ・エンタメ事業においては、日本のeスポーツ業界のけん引役として、運営強化によるチーム価値向上、利益率の高いスポンサー収入単価の上昇、ファンビジネスの強化の3つに注力していく。新規事業については、NFTゲーム「EGGRYPTO」の大型アップデート版である「EGGRYPTO X」のティザー動画を既に発表しており、誰でもカジュアルに始められるNFTゲームとして成長を目指していく方針である。
3. 中長期成長戦略
同社は、既存事業であるメディア事業及びクリエイターマネジメント事業の安定した収益基盤の確立に加え、新たにeスポーツ及び新規事業(NFT・回線等)で売上高を拡大させていく戦略を掲げている。eスポーツ・エンタメ事業においては、政府によるeスポーツの強化支援、五輪採用に向けた検討が進むなど、競技シーンは今後大きく盛り上がる可能性があり、同社は日本を代表するeスポーツチームとして認知度の向上、チームの価値強化、さらなるファンの獲得などを進める方針である。新規事業については、NFTゲーム、回線事業の双方が急成長しており、事業として軌道に乗り始めている。今後、中長期的にスポンサー収入や、大会賞金、ファングッズの販売増加などが期待されよう。また、NFTゲームについては売上高、新規ユーザーともに順調に成長しており、アプリの累計ダウンロード数も2022年12月時点で150万を突破、直近のユーザー継続率(ユーザー1ヶ月後継続率)も2022年4月の3.8%から2023年4月には19.0%と大幅に上昇しており、ロイヤルユーザーの確保が可能になってきている。回線事業についても、同社のメディアとしての高い知名度を生かしていかに潜在ユーザーの取り込みができるかがカギになるだろう。
■Key Points
・国内最大級のゲーム情報メディア「GameWith」を運営。eスポーツやNFTゲーム、回線事業といった新規事業の創出にも積極的に取り組む
・2023年5月期は既存のメディア事業での収益改善策を実施、計画通りに利益率の改善が進み、新規事業への先行投資負担を吸収して期初計画を達成
・2024年5月期もメディア事業の安定した収益体質を維持しつつ、引き続き新規事業への先行投資を実施。そのうえで増収増益が続く計画
・新たに取り組むeスポーツやNFTゲーム、回線事業は、同社がメディア「GameWith」で培ったユニークユーザー基盤をいかに取り込めるかがカギに
(執筆:フィスコ客員アナリスト 永岡宏樹)
《SI》
提供:フィスコ