佐藤志樹氏【週明けの日経平均大幅反発、もみ合い上放れか】(2) <相場観特集>
―中銀ウィーク通過、ここからの相場展望と個別株戦略―
31日の東京株式市場は、日経平均株価が一時600円以上の上昇をみせるなど大幅反発し、フシ目の3万3000円ラインを突破した。前週末は取引時間中に800円を超える下落をみせるなど波乱含みの地合いだったが、大引けにかけ急速に下げ渋り、きょうは前週末の米ハイテク株高と為替の円安進行を受け一転してリスク選好ムードの強い相場となった。果たしてこの流れは続くのか。ここからの全体相場の見通しと個別物色の方向性について、先読みに定評のある市場関係者2人に聞いた。
●「好調な企業業績を背景に8月は上値指向」
佐藤志樹氏(東洋証券 ストラテジスト)
週明けの東京株式市場は、米株高と円安を追い風に大きく強気優勢に傾いたが、向こう1ヵ月を展望した場合、8月相場も基本的に上値指向の強い地合いが続くとみている。前週は日米欧の中央銀行が金融政策発表を相次いで行い、マーケットの視線が集中したが、日銀を除けば想定通りの結果で、全体株価への影響は限られた。一方、日銀の金融政策については現状維持を見込んでいた向きが大勢を占めていただけに株式市場や為替市場に波乱が及んだが、イールドカーブ・コントロール(YCC)の柔軟化は曖昧ながら政策変更まではいかない内容で、相場の大勢トレンドを揺るがすものではないと考えている。
日銀が同日に発表した展望リポートも先行きについてインフレの沈静化を示唆する内容だった。今後中期的にみた場合、企業による賃金引き上げ期待が徐々に高まるなか、継続的な2%のインフレとまではいかないものの、デフレから脱却したインフレ気味の経済環境が想定される。これは株式市場にとってはプラスに働きやすい環境といってよい。
国内企業の決算発表は概ね堅調が見込まれる。中国関連セクターは同国の景気減速が収益に影響を与えているが、中国政府の景気対策期待も日増しに高まっていることから、(24年3月期の)下期以降は政策効果が発現する可能性もある。全体相場は決算発表が一巡する8月中旬ごろまでは堅調な地合いが見込めるのではないか。日経平均はややボラティリティが高まっており、向こう1ヵ月のレンジとしては下値が3万2000円、上値が3万4500円程度を予想する。ただ、瞬間的には3万5000円をうかがうような強調展開もあり得るとみている。
個別の物色対象は生産回復が顕著となっている自動車とその周辺株をマーク。トヨタ自動車 <7203> [東証P]、ホンダ <7267> [東証P]のほか、ルネサスエレクトロニクス <6723> [東証P]、富士電機 <6504> [東証P]、デンソー <6902> [東証P]なども注目される。また、好決算の清水建設 <1803> [東証P]や鹿島 <1812> [東証P]など大手ゼネコン株にも目を配っておきたい。
(聞き手・中村潤一)
<プロフィール>(さとう・しき)
明治大学商学部卒。2013年東洋証券に入社。同年より、9年間個人投資家を中心とした資産アドバイザーを経験し、2022年4月より現職に。
株探ニュース