戸田工業 Research Memo(1):酸化鉄で培った微粒子合成技術を深化させ、新素材、新製品で事業拡大
■要約
戸田工業<4100>は、磁器の絵付け、歴史的建造物などに欠かせない顔料である弁柄製造業として創業、2023年11月に創業200周年を迎える化学メーカーである。創業以来、酸化鉄トップ企業として酸化鉄で培った微粒子合成技術を深化させ、光学レンズ研磨剤用高純度酸化鉄、オーディオテープ等で使われる磁性酸化鉄、複写機・プリンター向けのトナー用材料、スマートフォンで多用される積層セラミックコンデンサー(以下、MLCC)向けに誘電体材料、電気自動車(以下、EV)等で利用拡大が続くリチウムイオン電池(以下、LIB)用材料などで事業を拡大してきた。現在、機能性顔料事業(各種着色材料、環境関連材料)と電子素材事業(磁石材料、誘電体材料、軟磁性材料、LIB用材料等)の2事業で事業展開している。
1. 2023年3月期の業績概要
2023年3月期の連結業績は売上高34,934百万円(前期比1.1%減)、営業利益1,367百万円(同45.7%減)、経常利益3,349百万円(同20.0%減)、親会社株主に帰属する当期純利益3,268百万円(同4.9%増)となった。機能性顔料事業は新型コロナウイルス感染症拡大(以下、コロナ禍)からの回復で複写機・プリンター向けの材料、塗料向け材料、触媒向け材料が好調に推移、売上高は14,723百万円(同8.6%増)と拡大したが、セグメント営業利益は2,001百万円(同5.8%減)と原材料・エネルギー価格高騰などで減益となった。電子素材事業は半導体不足による自動車市場の生産調整やICT機器関連の需要低迷による在庫調整などで、売上高20,210百万円(同7.2%減)、セグメント営業利益2,389百万円(同27.3%減)に留まった。2事業でのセグメント利益は4,391百万円(同18.8%減)、全社費用が3,023百万円(同4.6%増)と嵩み、減益率が高まった。なお経常利益は持分法による投資利益が1,704百万円(同12.1%増)と好調に推移、円安による為替差益224百万円(同73百万円増、48.3%増)などもあり、営業外収支が317百万円改善、経常利益は20.0%の減益に止まった。さらに親会社株主に帰属する当期純利益は、連結子会社であった戸田聯合実業(浙江)有限公司(以下、戸田聯合)の出資持分を同社持分法適用関連会社である浙江華源顔料股フン有限公司(以下、浙江華源)へ譲渡したことによる関係会社出資金売却益933百万円の計上があり前期比で増益を確保した。
2. 2024年3月期の業績見通し
2024年3月期会社予想は売上高32,000百万円(前期比8.4%減)、営業利益900百万円(同34.2%減)、経常利益2,000百万円(同40.3%減)、親会社株主に帰属する当期純利益1,400百万円(同57.2%減)とした。売上高、営業利益で戸田聯合の連結除外影響が大きいものの、この影響を除くと実質的に増収かつ、営業利益横ばいを確保できると想定される。なお経常利益は持分法による投資利益の減少を見込み減益幅が営業利益を上回り、親会社株主に帰属する当期純利益は出資金売却益がなくなり、半減以下に落ち込む見通しとしている。
3. 中期事業計画の進捗
2022年3月期~2024年3月期の中期事業計画「Vision2023」は営業利益で2022年3月期に最終年度の計画値を上回ったが、2023年3月期は原材料高騰、自動車生産の回復遅延、電子・情報機器の不振などで、厳しい営業減益を余儀なくされた。また2024年3月期も厳しい環境が続くとみられ、計画期間において想定していなかった戸田聯合の連結除外の影響を考慮した場合売上高はほぼ達成する予想であるが、利益面では連結除外の影響を考慮しても計画の9割に止まる見通し。同社は、2024年3月期から3カ年の次期中期事業計画の策定を2024年5月に行い、新事業分野の本格拡大で新たな成長を目指す。
■Key Points
・2023年3月期は1.1%減収、20.0%経常減益と自動車、ICT機器関連の伸び悩みで収益は足踏み
・2024年3月期は8.4%減収、40.3%経常減益予想も連結除外の影響を除くと実質増収かつ営業利益は横ばいの見通し
・パーパス「微粒子の可能性を、世界の可能性に変えていく。」を掲げ、次期中期事業計画(2024年5月開示予定)で新たな成長を目指す
(執筆:フィスコ客員アナリスト 岡本 弘)
《SI》
提供:フィスコ