明日の株式相場に向けて=まだ見えない超金融緩和ロードの終着点
きょう(19日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比402円高の3万2896円と大幅高で続伸した。大引けにかけ先物主導で一気に上げ足を強め、400円を超える上昇をみせ高値引けとなった。取引終盤の値幅拡大は特に材料がでたわけではないが、市場ではデルタヘッジ(オプションを絡め上下どちらに振れても利益を得る手法)による先物買いとの観測が出ていた。
前日の欧州株市場は文字通りの全面高だった。この欧州時間のリスク選好の地合いを米国株市場も引き継ぐ形で、NYダウが久しぶりに1%を超える上昇を示し7連騰と気を吐いた。振り返って5月から6月中旬にかけては日本株への海外資金流入がクローズアップされ、日経平均も急速に水準を切り上げたわけだが、ここ最近は米国株に資金が還流している印象がある。その背景には、FRBによる利上げ打ち止めが目前ということと、4~6月期の米企業の決算が良好という2つの共通認識が投資家に広がったことが挙げられる。
もちろん、東京市場もこれに追随する動きが期待できる。日本株買いを標榜していた海外マネーがいきなり売り姿勢に変わるとは考えにくい。増税路線を覆い隠せない岸田政権の支持率が低下の一途にあるのは避けられない現実としても、株式市場的にはリスク許容度の高まった海外投資家の評価が維持されれば強調展開が見込める。「対中政策に躍起の米国から見た場合、今の日本との関係はバブル期以前の子飼いの時代を想起させる蜜月にあり、である以上“株高戦線異状なし”というのが年後半に向けてのメインシナリオ」(中堅証券ストラテジスト)という。きょうは中国や香港株安を横目に日経平均は3万2000円台後半で頑強に売り物をこなし、ゴール手前でラストスパートをかけたような相場だった。
来週に予定されるFOMCとECB理事会ではともに0.25%の利上げをマーケットはほぼ100%織り込んでいる状況で、FOMCについては今回の利上げでターミナルレートに到達、つまり最終的な利上げという見方が強い。一方、国内では日銀の大規模金融緩和策について外野は騒がしいが、実際は動かざること山の如しというのが現状だ。中央銀行の立場としては周回遅れというレベルではなく、FRBが金融引き締めのゴールテープを切ろうかという時に、マイナス金利の解除はおろか、イールドカーブ・コントロール(YCC)の解除もなされていない、いわばスタート地点にも立っていないような状況である。
マーケットの目先の関心は、日銀が最終ランナーとしてそのスタート地点に立つのかどうか。YCCの解除もしくは許容変動幅拡大といった政策変更を来週の政策決定会合で決めるのかどうかということ。そのなか、前日にインドで行われたG20財務相・中央銀行総裁会議での植田日銀総裁の発言が少なからず波紋を呼んだ。持続的かつ安定的に2%のインフレが定着するまでには「まだ距離がある」との認識を改めて示したからだ。市場筋は「今の日本の物価動向は米国とのCPI逆転を見るまでもなく、明らかにインフレモードのスイッチが入った状態で、日銀の政策変更は待ったなしというのが海外投資家の見方。おそらく、この発言はカモフラージュで当日(28日)に政策変更を決めるのではないかという意見が海外筋の間では今も根強い」(ネット証券マーケットアナリスト)とする。
しかし、これまでの植田日銀総裁を見る限りにおいて、パネルディスカッションでジョークは飛ばしても、こと政策に関わる言動で行間にブラフ的な思惑が漂うことは一切見られなかった。今はあくまで「インフレもどきであってインフレではない」という意見を貫いている。かつての豹変前のパウエルFRB議長の言動を思い起こさせ、あとで慌てることになりそうな気配もあるが、日本の場合は長期にわたりデフレの深淵に引きずり込まれた過去が欧米とは異なる。YCCはともかくマイナス金利を解除するまでには相当な時間を要するはずで、それは株式市場にとってはこの上ない良好な時間帯が続くことを意味する。
あすのスケジュールでは、6月の貿易統計、6月の首都圏マンション販売、6月の主要コンビニエンスストア売上高、7月の主要銀行貸出動向アンケート調査など。なお、国内主要企業の決算発表ではニデック<6594>、ディスコ<6146>が予定されている。海外では7月の中国最優遇貸出金利、トルコ中銀の金融政策委員会、南アフリカ中銀の政策金利発表、6月の豪雇用統計、6月の米中古住宅販売件数、6月の米景気先行指数、7月のフィラデルフィア連銀製造業景況指数、週間の米新規失業保険申請件数など。(銀)
出所:MINKABU PRESS
前日の欧州株市場は文字通りの全面高だった。この欧州時間のリスク選好の地合いを米国株市場も引き継ぐ形で、NYダウが久しぶりに1%を超える上昇を示し7連騰と気を吐いた。振り返って5月から6月中旬にかけては日本株への海外資金流入がクローズアップされ、日経平均も急速に水準を切り上げたわけだが、ここ最近は米国株に資金が還流している印象がある。その背景には、FRBによる利上げ打ち止めが目前ということと、4~6月期の米企業の決算が良好という2つの共通認識が投資家に広がったことが挙げられる。
もちろん、東京市場もこれに追随する動きが期待できる。日本株買いを標榜していた海外マネーがいきなり売り姿勢に変わるとは考えにくい。増税路線を覆い隠せない岸田政権の支持率が低下の一途にあるのは避けられない現実としても、株式市場的にはリスク許容度の高まった海外投資家の評価が維持されれば強調展開が見込める。「対中政策に躍起の米国から見た場合、今の日本との関係はバブル期以前の子飼いの時代を想起させる蜜月にあり、である以上“株高戦線異状なし”というのが年後半に向けてのメインシナリオ」(中堅証券ストラテジスト)という。きょうは中国や香港株安を横目に日経平均は3万2000円台後半で頑強に売り物をこなし、ゴール手前でラストスパートをかけたような相場だった。
来週に予定されるFOMCとECB理事会ではともに0.25%の利上げをマーケットはほぼ100%織り込んでいる状況で、FOMCについては今回の利上げでターミナルレートに到達、つまり最終的な利上げという見方が強い。一方、国内では日銀の大規模金融緩和策について外野は騒がしいが、実際は動かざること山の如しというのが現状だ。中央銀行の立場としては周回遅れというレベルではなく、FRBが金融引き締めのゴールテープを切ろうかという時に、マイナス金利の解除はおろか、イールドカーブ・コントロール(YCC)の解除もなされていない、いわばスタート地点にも立っていないような状況である。
マーケットの目先の関心は、日銀が最終ランナーとしてそのスタート地点に立つのかどうか。YCCの解除もしくは許容変動幅拡大といった政策変更を来週の政策決定会合で決めるのかどうかということ。そのなか、前日にインドで行われたG20財務相・中央銀行総裁会議での植田日銀総裁の発言が少なからず波紋を呼んだ。持続的かつ安定的に2%のインフレが定着するまでには「まだ距離がある」との認識を改めて示したからだ。市場筋は「今の日本の物価動向は米国とのCPI逆転を見るまでもなく、明らかにインフレモードのスイッチが入った状態で、日銀の政策変更は待ったなしというのが海外投資家の見方。おそらく、この発言はカモフラージュで当日(28日)に政策変更を決めるのではないかという意見が海外筋の間では今も根強い」(ネット証券マーケットアナリスト)とする。
しかし、これまでの植田日銀総裁を見る限りにおいて、パネルディスカッションでジョークは飛ばしても、こと政策に関わる言動で行間にブラフ的な思惑が漂うことは一切見られなかった。今はあくまで「インフレもどきであってインフレではない」という意見を貫いている。かつての豹変前のパウエルFRB議長の言動を思い起こさせ、あとで慌てることになりそうな気配もあるが、日本の場合は長期にわたりデフレの深淵に引きずり込まれた過去が欧米とは異なる。YCCはともかくマイナス金利を解除するまでには相当な時間を要するはずで、それは株式市場にとってはこの上ない良好な時間帯が続くことを意味する。
あすのスケジュールでは、6月の貿易統計、6月の首都圏マンション販売、6月の主要コンビニエンスストア売上高、7月の主要銀行貸出動向アンケート調査など。なお、国内主要企業の決算発表ではニデック<6594>、ディスコ<6146>が予定されている。海外では7月の中国最優遇貸出金利、トルコ中銀の金融政策委員会、南アフリカ中銀の政策金利発表、6月の豪雇用統計、6月の米中古住宅販売件数、6月の米景気先行指数、7月のフィラデルフィア連銀製造業景況指数、週間の米新規失業保険申請件数など。(銀)
出所:MINKABU PRESS