明豊ファシリ Research Memo(9):発注者支援事業の進化と脱炭素化支援、DX支援で持続的成長を目指す
■今後の見通し
2. 中長期ビジョン
明豊ファシリティワークス<1717>は発注者支援事業の社会的貢献と同社の人的資本経営に関する考え方を踏まえ、事業創造会議「将来像セッション」を実施し、社員とともに10年後の明豊ビジョンを策定した。具体的なビジョンとして、事業面では「唯一無二の存在として」透明で納得感の高い社会へ導くこと、発注者に伴走して新しい価値を共創することを掲げた。また人の面では、正しいことをやり抜き生き生きと働く職場環境を形成し、個人の成長や成果に見合う高収入を得られる「家族が誇れる会社」を目指す。社会還元のテーマとしては、透明で納得感の高い社会への貢献や、ESG投資及び株主還元の充実を通じて社会に貢献する「発注者支援事業が社会還元」をビジョンに掲げた。
(1) 事業戦略
今後の事業戦略としては、「顧客側に立つプロ」という軸を貫き、発注者支援事業を多面的に進化させることで建設投資におけるCMシェアを一段と引き上げるとともに、建設外投資のマーケットとして需要が旺盛な脱炭素化支援やDX支援事業を推進することで持続的な成長を実現する方針だ。
難度の高い建設プロジェクトにおいてCMサービスの活用が広がっており、こうした需要を「フェアネス」と「透明性」、高い専門性を兼ね備えた高品質なサービスを提供し続けることで取り込んでいく。脱炭素化支援への取り組みを強化すべく、2023年4月より脱炭素CM部及びGXソリューションチームを組織化し、中立な立場で顧客側に立ち、顧客にとって最適な脱炭素化戦略の「立案、実行、成果の確認」までをワンストップで支援し、DXを活用することで脱炭素化のプロセス、成果を可視化し、顧客の脱炭素経営を支援していく。
また、「MPS」の活用により顧客の多拠点施設のライフサイクルコスト最適化し、安心・安全、効率的な施設管理を実現することで発注者の経営効率向上を支援していく。大企業や公共施設など老朽化した施設の改修・再開発に対する潜在需要は大きいと見られ、こうした需要を掘り起こしていく。
(2) 人的資本経営の取り組み
同社は成長の基盤となる人材の採用・育成を経営の重要課題と認識している。採用については、引き続きスキルの高いキャリア人材を採用していくほか、女性やCMの社会的意義並びに同社の経営理念(フェアネス、透明性)に共感する人材の採用に注力する。また、育成面では、OJTに加えて2021年から研修プログラムを体系化し拡充しているほか、資格取得奨励制度や同社独自のナレッジセンター※の活用により、組織能力の底上げを図っていく。社員のエンゲージメント向上に向けては、社員が効率の良い働き方を選択できるデジタルワークスタイルのさらなる進化や、男女育児休業制度活用の奨励、ダイバーシティ・インクルージョンを推進し、企業価値の向上につなげていく。
※デジタル基盤上に構築したナレッジセンターにおいて、業務上のベストプラクティスが共有できるほか、サービス品質向上に不可欠なドキュメントレベルの周知や学習が行えるようになっている。
(3) ESG/SDGsへの取り組み
同社は、企業理念である「フェアネス」「透明性」「顧客側に立つプロ」のもと、持続可能な社会の実現に向けて社会課題の解決に取り組んでいる。また、「環境CM方針」を定め、建築や設備のプロがオフィスやビルの環境負荷の低減、環境に配慮した施設の導入・運用支援(ZEB、オフグリッド等脱炭素化に資するCMの提供)や、施設の長寿命化のための各種提案、実現支援(MSPの運用等)を行うなど、発注者支援事業を通じて顧客のSDGs関連ニーズ(脱炭素化、環境共生、BCP、長寿命化等)やDXを活用した働き方改革の実現に貢献している。
さらに、同社は気候変動に関するリスク等への対応について、TCFD提言※の趣旨に賛同し、TCFDコンソーシアムに加盟し、気候変動に関する推奨されたフレームワークの整備と透明性向上に取り組んでいる。開示基礎項目であるガバナンス、戦略、リスク管理、指標と目標を策定しており、このうち二酸化炭素排出量削減に関しては2020年3月期比で2023年3月期は約43%の削減を達成しており、2031年3月期までに50%削減、2051年3月期までにカーボンニュートラルの達成を目指している。
※金融安定理事会(FSB)によって設立された気候関連財務情報開示タスクフォースの提言。気候変動に起因する財務的影響の分析、開示が推奨されている。
そのほか、ESG投資として東京都発行のグリーンボンド(2019年10月、2021年10月、2022年10月)への投資を実施している。同グリーンボンドは気候変動への適応、自然環境の保全、生活環境の向上に関連した事業等に充当されている。また、日本学生支援機構が奨学金事業の財源を目的に発行したソーシャルボンドにも、2021年5月に投資した。
一方、ダイバーシティやワークライフバランスの充実を図るため、多様性の確保に向けた人材育成やITを活用した職場環境の整備などに取り組んでいる。女性の活躍を重要テーマの1つとして産休・育休制度、時短勤務、健康活動支援、リフレッシュ休暇制度などを整備しており、2022年6月には「くるみん認定」※を受けた。
※「くるみん」は、仕事と家庭を両立しやすい職場環境づくりに取り組んでいる企業として、一定の基準を満たした場合に申請を行うことによって「子育てサポート企業」として、厚生労働省より認定を受けた証となる。認定を受けた企業は「くるみんマーク」を広告等に表示し、子育てサポート企業であることを公表できる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
《AS》
提供:フィスコ