加藤製作所 Research Memo(5):2023年3月期は減収ながら収益性重視の戦略により利益転換
■業績動向
1. 2023年3月期連結業績の概要
加藤製作所<6390>の2023年3月期の連結業績は、売上高が前期比9.5%減の57,530百万円、営業利益が1,258百万円(前期は7,222百万円の損失)、経常利益が1,865百万円(同6,929百万円の損失)、親会社株主に帰属する当期純利益が2,403百万円(同9,575百万円の損失)となった。
サプライチェーンの混乱などにより生産面に影響を受けたため減収となったが、収益性重視の戦略で販売価格見直しやコストダウンを推進するとともに、製品ミックス改善、アフター部品の拡販、前期に実施した希望退職に伴う人件費の減少、円安なども寄与し、損益は大幅に回復した。売上総利益は前期比37.2%増加し、売上総利益率は同5.4ポイント上昇して15.8%となった。販管費は同43.4%減少し、販管費比率は同8.2ポイント低下して13.6%となった。なお営業利益が前期比8,481百万円増益したうち、一過性損失を除く営業利益は2,225百万円である。この要因は、販売台数減少で621百万円減、売価見直し・コストダウン・製品構成改善で1,095百万円増、アフター部品拡販で367百万円増、販管費(人件費)減少で1,200百万円増、為替変動で523百万円増、貸倒引当金で339百万円減である。2022年3月期は一過性損失(棚卸資産評価損、貸倒引当金繰入額)で前期比6,255百万円の営業利益減益要因となっていた。特別利益では固定資産売却益が382百万円減少、特別損失では減損損失が2,822百万円減少した。
基礎事業の利益率低下傾向に歯止め
2. セグメント別の動向
報告セグメント別に見ると、日本は売上高が前期比6.3%減の50,974百万円、営業利益が1,845百万円(前期は2,303百万円の損失)となった。売上面は、国内向け建設用クレーンが緩やかな需要回復で増収(前期比2.0%増の31,521百万円)となったが、海外向け建設用クレーンがサプライチェーン混乱の影響で減収(同27.0%減の3,705百万円)となった。国内向け油圧ショベルがサプライチェーン混乱の影響で減収(同25.6%減の8,533百万円)となり、海外向け油圧ショベルがその他の伸び悩みを北米・欧州の堅調推移でカバーできず減収(同7.3%減の6,305百万円)となった。利益面は、利益率の高い大型機種やアフター部品の拡販、前期までの構造改革の効果などで営業損益が大幅に改善した。
中国は売上高が前期比50.6%減の2,968百万円、営業利益が972百万円の損失(前期は5,169百万円の損失)となった。売上面はインフラ投資鈍化や地場メーカーの販売攻勢などにより、油圧ショベルの販売が減少した。売上面は大幅減収となったが、利益面は一過性の損失を計上した前期から営業損失は大幅に縮小した。
その他は、売上高が同4.3%減の5,572百万円、営業利益が49百万円(同138百万円の損失)となった。売上面は北米や欧州が堅調であったが、それ以外の地域が伸び悩んだ。利益面は構造改革効果などでわずかながらも黒字転換した。
品目別売上高は、建設用クレーンの国内が前期比2.0%増の31,521百万円、海外が同41.5%減の3,669百万円、全体で同5.3%減の35,190百万円となった。建設用クレーンの国内は新機種投入効果などで堅調であったが、サプライチェーンが混乱したため収益性や受注状況を勘案し、国内受注残を優先したことで海外が大幅に減少した。国内では販売価格見直しなども寄与した。油圧ショベルは国内がサプライチェーン混乱の影響などにより同25.6%減の8,533百万円、海外が中国の需要減少を北米・欧州の増加でカバーできず同6.7%減の12,898百万円、全体で同15.3%減の21,431百万円となった。その他の売上高は同17.2%減の908百万円となった。合計では国内が同5.7%減の40,961百万円、海外が同17.6%減の16,569百万円となった。北米・中南米が同38.8%増収と大幅伸長したが、アジアが中国の需要減少で同47.0%減収となった。なお海外売上比率は28.8%となった。
財務の健全性を維持
3. 財務の状況
2023年3月期末の資産合計は前期末比3,846百万円減少して98,799百万円となった。主に現金及び預金が1,308百万円増加したが、受取手形が2,041百万円減少、売掛金が1,238百万円減少した。負債合計は6,507百万円減少して51,893百万円となった。有利子負債残高が5,850百万円減少して34,379百万円となった。純資産合計は2,660百万円増加して46,906百万円となった。利益剰余金が2,285百万円増加した。この結果、自己資本比率は同4.2ポイント上昇して46.2%となった。
同社は、2020年3月期から2022年3月期にかけて最終損失を計上したため、純資産が減少し、自己資本比率も低下したが、特に懸念されるほど財務内容が棄損したわけではない。そして2023年3月期は利益転換して純資産が増加に転じ、自己資本比率も上昇に転じた。借入金の返済で有利子負債残高も減少傾向となっている。中期的にはさらなる財務基盤の強化が望まれるものの、現状では特に懸念材料はなく財務面の健全性を維持していると弊社では考えている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田雅展)
《SI》
提供:フィスコ