加藤製作所 Research Memo(4):構造改革効果で収益回復基調
■加藤製作所<6390>の事業概要
3. セグメント別推移
報告セグメントは地域別に日本、中国、その他(タイ、イタリア、オランダ、米国)としている。過去3期(2021年3月期~2023年3月期)の推移は次のとおりである。2021年3月期はコロナ禍の影響により経済活動が縮小したため、日本・中国・その他ともに売上高が大幅に減少し、営業損益も悪化した。2022年3月期はコロナ禍の影響が和らいで売上高が回復傾向となったが、構造改革の一環として計上した一過性損失(営業利益段階では長期滞留在庫の評価減計上、加藤(中国)工程机械有限公司における貸倒引当金計上、さらに特別損失で希望退職引当金計上、常陸那珂工場の減損計上、タイ工場の解散及び清算に伴う減損計上)により大幅な損失を計上した。2023年3月期はサプライチェーン混乱の影響で減収となったものの、前期に実施した構造改革の効果に加え、収益性を重視した販売戦略なども寄与して営業損益が大幅に改善した。収益は一過性損失を計上した前期をボトムに回復基調となっている。
品目別売上高及び海外仕向地別売上高の過去3期(2021年3月期~2023年3月期)の推移は次のとおりである。2021年3月期は、コロナ禍の影響により、品目別売上高では建設用クレーン、油圧ショベルとも減少、海外仕向地別では中国を中心とするアジアが大幅に減少した。2022年3月期は国内が小幅増収となったが、海外の北米・欧州向けが回復傾向となった。2023年3月期はサプライチェーン混乱の影響を受けたため、収益性や受注残を勘案して優先した建設用クレーンの国内、油圧ショベルの北米・欧州向けが増加したが、中国における油圧ショベルの需要減などによりアジア向けが大幅減収となった。なお過去3期の売上比では、品目別の売上高構成比は建設用クレーンが6割、油圧ショベルが4割弱、また全体の海外向け売上比率は3割前後で推移している。
外部要因により業績が大きく変動するため、収益性重視の戦略を推進
4. リスク要因・収益特性と課題・対策
建設機械業界の一般的なリスク要因としては、景気・感染症・地政学リスクなどに伴う需要変動、国内外マーケットにおける競争激化、グローバルサプライチェーンの混乱、為替影響、販売価格と原材料・エネルギー価格の動向、製品不具合に伴う賠償責任、環境規制や技術革新への対応遅れなどが挙げられる。
建設機械業界の市場競合については、最も市場規模の大きい油圧ショベルはコマツ<6301>、日立建機<6305>といった大手をはじめとする競合メーカーが多く、競争の激しさが知られているが、そのほかの建設機械(建設用クレーン、高所作業車、ブルドーザ、道路舗装機械など)については、それぞれ得意分野を持つメーカーが高い市場シェアを獲得するなど、ある程度のすみ分けができていることが多い。同社の市場におけるポジションとしては、建設用クレーンではタダノ<6395>とともに大手、油圧ショベルでは中堅という位置付けになっている。
また建設機械業界においては、需要変動・為替変動や競合激化の影響などで業績が大きく変動する傾向が見られる。同社の場合は、コロナ禍やサプライチェーン混乱の影響、さらに構造改革に伴う一過性費用計上などにより2020年3月期から2022年3月期にかけて業績が大きく落ち込んだが、利益回復を最優先とする中期経営計画を策定し、売上拡大よりも収益性重視の戦略を打ち出している。そして2023年3月期は減収ながら各利益とも黒字転換して収益回復基調となった。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田雅展)
《SI》
提供:フィスコ