新晃工業 Research Memo(6):2025年3月期に売上高520億円、営業利益75億円を目指す
■中期経営計画
1. 中期経営計画「move.2025」
中期的にはコロナ禍で広がったテレワークの普及などにより、長期的には人口減少などにより、新規のオフィスビル建築が減少すると見られている。しかし、足元では東京オリンピック・パラリンピック特需後の端境期から脱し、都市再開発などを中心に産業空調への投資が回復、オフィスビルに加え工場や研究所、データセンター向けの需要も増加している。このため、2024年頃に新晃工業<6458>は需要拡大期に入ると見られている。2025年には新規のオフィスビルもピークアウトしてくる見通しだが、その頃になると新築物件に代わって、市場を退出した大手メーカーの分を含め、納入後20~30年を経過したAHUの更新工事などアフターサービス市場が徐々に拡大すると予測されている。長期的には、中小規模物件を中心に個別熱源の増加が続く一方、カーボンニュートラルを背景に水AHU(脱フロン)への期待も大きくなっていくと考えられている。
一方課題も多く、国内では、人手不足から案件を確保できなくなる恐れや、人件費の上昇で採算が悪化する恐れも指摘されており、現場での省力化が必須となる見込みである。海外では、アジア最大の市場で内需拡大が期待されていた中国で、景気停滞や地政学リスクが懸念されている。コロナ禍やウクライナ情勢を背景とした原材料高や半導体などの部材不足、円安といったリスクは一巡しつつあるが、建設業全般ではかつて経験したことのない価格高騰や納期・工期遅れが発生することとなった。同社はこうした課題に対し、中長期的に見込まれる新規案件の増加や工事・メンテナンス需要の拡大、特に原材料高や部材不足に対しては建設業界を挙げて価格改定を進め、人材不足などに対しては生産プロセスの効率化などにより対応しているところである。
具体的には、事業環境回復のトレンドに乗って既設工事につながる新築ビル向けAHUの受注などを拡大し、水AHUシェアトップの堅持とヒートポンプAHUにおけるシェアトップの奪取を目指す。既設工事では、手厚いサービスを強みとする新晃アトモスをさらに強化することで、10年~20年後には既設の更新需要を収益の柱とする方針である。そのために、デジタル化によって労働集約的な製販体制から脱却して生産性を向上し、様々なリスクを解消する考えである。そこで2021年5月に、中期経営計画「move.2025」を策定した。SIMAプロジェクトによって新しい製販一体の体制を構築し、そのうえで5つの重点取組項目を推進することで中期的な成長を持続する計画である。そして、2025年3月期に売上高520億円、営業利益75億円を目指すこととなった。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
《AS》
提供:フィスコ