森六 Research Memo(5):2023年3月期は客先の減産の影響を強く受ける
■業績動向
1. 2023年3月期の業績概要
(1) 損益状況
森六ホールディングス<4249>の2023年3月期の業績は、売上高142,019百万円(前期比10.2%増)、営業利益1,335百万円(前期比53.1%減)、経常利益1,596百万円(同46.2%減)、親会社株主に帰属する当期純利益1,346百万円(同68.4%減)となった。前期に特別利益として投資有価証券売却益を計上したことから、当期純利益の減益幅が大きくなっている。
事業セグメント別では、樹脂加工製品事業は半導体供給不足や中国のロックダウンの影響による主要顧客の減産があり、為替の影響を除くと、実質的には減収であった。利益面では、生産台数が減少するなか、北米を中心とした急激な生産変動による稼働ロスやインフレ(原材料やエネルギーコスト)の影響により、営業利益は大幅減となった。ケミカル事業は、売上高は堅調に推移したが、 ものづくり分野でエネルギーコストの上昇影響を受けたほか、 営業活動の再開に伴う販管費の増加などにより増収減益となった。
平均の為替レートは、135.5円/ドル(前期は112.4円)であった。
(2) 財務状況とキャッシュ・フローの状況
2023年3月期末における流動資産は73,679百万円(前期末比3,379百万円減)であったが、主に現金及び預金の減少128百万円、売上債権の減少243百万円、在庫の減少4,417百万円、その他流動資産の増加1,410百万円などによる。固定資産は58,117百万円(同1,948百万円減)であったが、主に設備投資による有形固定資産の増加1,529百万円、政策保有株式の売却等による投資その他の資産の減少3,444百万円などによる。これらの結果、資産合計は131,797百万円(同5,327百万円減)となった。
流動負債は53,502百万円(同2,459百万円減)であった。主に買入債務の減少2,642百万円、短期借入金等の増加617百万円などによる。固定負債は7,611百万円(同1,483百万円減)であった。主に長期借入金の減少753百万円、繰延税金負債の減少752百万円などによる。これらの結果、負債合計は61,114百万円(同3,943百万円減)となった。
純資産合計は70,683百万円(同1,384百万円減)であった。親会社株主に帰属する当期純利益の計上があったものの、配当金支払いなどによる利益剰余金の減少137百万円、その他有価証券評価差額金の減少1,881百万円、為替換算調整勘定の増加2,033百万円などによる。この結果、2023年3月期末の自己資本比率は52.6%(前期末51.6%)となり、50%を維持している。
2023年3月期の営業活動によるキャッシュ・フローは9,495百万円の収入となった。主な収入科目は、税金等調整前当期純利益の計上3,407百万円、減価償却費8,320百万円、減損損失978百万円、売上債権の減少1,346百万円、棚卸資産の減少5,502百万円などで、主な支出科目は、投資有価証券売却益2,501百万円、仕入債務の減少3,279百万円などとなっている。
投資活動によるキャッシュ・フローは、5,311百万円の支出となったが、主に設備投資による有形固定資産の取得による支出8,103百万円、投資有価証券の売却による収入3,847百万円であった。財務活動によるキャッシュ・フローは5,310百万円の支出だったが、主な支出科目は、長短借入金の減少(ネット)2,417百万円、配当金の支払額1,483百万円などであった。この結果、現金及び現金同等物は699百万円の減少となり、2023年3月期末残高は17,658百万円となった。
2. 事業セグメント別動向
(1) 樹脂加工製品事業
2023年3月期の樹脂加工製品事業の売上高は112,259百万円(前期比10.3%増)、営業利益は100百万円(同92.0%減)となった。半導体供給不足や中国ロックダウンの影響による主要顧客の減産があり、為替影響を除くと、実質的には減収であった。利益面では、生産台数が減少するなか、北米を中心とした急激な生産変動による稼働ロスやインフレの影響(原材料やエネルギー等)により、営業利益は大幅減となった。
営業利益の増減要因(前期比)を分析すると、外部要因としては、為替による業績への影響で182百万円減、生産変動による影響で1,632百万円減、金型の売上により840百万円増、自社調達品の影響で824百万円減、賃上げによる影響で293百万円減、エネルギー価格の高騰で301百万円減、運賃・保管料の上昇で114百万円減、頻繁な生産計画変動による原材料費の上昇で273百万円減、同様に生産計画の変動による労務費の上昇で230百万円減であった。この結果、外部要因の変動で3,008百万円の減益となった。
一方で、内部要因としては、研究開発強化により252百万円減、価格転嫁により1,110百万円増、コスト改善効果で466百万円増、減価償却費により356百万円増、特殊要因(前期にメキシコで発生した緊急対応)の消失で237百万円増、その他費用の増加で62百万円減などであった。この結果、内部要因の変動で1,855百万円の増益となった。以上により、営業利益は、前期比で1,511百万円減少した。
(2) ケミカル事業
2023年3月期のケミカル事業の売上高は29,759百万円(前期比10.0%増)、営業利益は1,575百万円(同14.2%減)となった。
営業利益の増減要因(前期比)を分析すると、モビリティでは自動車の減産の影響やスマホの低迷により122百万円の減益、ライフサイエンスは92百万円の増益、ファインケミカルは160百万円の減益となった。ライフサイエンスとファインケミカルは、顧客の在庫調整の影響により 下期にかけて需要が低迷した。ものづくりでは原材料費のアップに対して販売転嫁が遅れたことから120百万円の減益となった。また、販管費の増加で55百万円の減益となったが、その内訳は、人件費22百万円増、旅費交通費71百万円増、運賃保管料56百万円減、交際費16百万円増であった。さらに為替の影響(増益要因)が104百万円あったことから、営業利益は261百万円減となった。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)
《YI》
提供:フィスコ