澁澤倉庫 Research Memo(4):様々な物流サービスをトータルで提供
■事業概要
3. 物流事業のサービス
物流事業をサービス別に見ると、倉庫保管サービス、陸上運送サービス、輸出入フォワーディングサービス、海外事業、港湾運送事業、情報システムサービスなどに分けられ、内外問わず顧客ニーズに応じ、様々な物流サービスをトータルで提供している。
(1) 倉庫保管サービス
倉庫保管サービスは、倉庫保管と流通加工に分けられる。倉庫保管では、一般貨物向けの常温倉庫をはじめ可動式ラック倉庫や定温倉庫、危険物倉庫など万全の態勢で最適な保管環境を提供するとともに、顧客の商品特性に応じた多様な荷役機器を有している。また、自社開発した倉庫管理システム(WMS:Warehouse Management System)によるリアルタイムな在庫照会やEDI(電子データ交換)連携などを利用することで、入出庫や保管だけでなく、顧客の効率的な販売戦略をサポートするなど、顧客にとって最適な物流ソリューションを提供することができる。流通加工では、飲料や日用品は顧客の販促に合わせたセット組み、輸入食品の検品・ラベル貼り・アソート、アパレル製品は検品・検針・タグ付け、化粧品は化粧品製造許可・医薬部外品製造業許可を取得したうえで検品や成分ラベルの作成貼付など、煩雑で労力が必要な作業を顧客に代わって行い、商品の高付加価値化をサポートしている。このような保管場所における流通加工のワンストップサービスは、顧客にとって輸送費低減や管理の一元化につながるメリットがある。また、流通加工システムを顧客と共同開発しているため、顧客はより有機的なロジスティクス戦略を展開することができる。
(2) 陸上運送サービス
陸上運送サービスでは、東名阪や千葉地区といったドミナントエリアを地盤に、全国で輸配送、共同配送、モーダルシフトといったサービスを提供している。澁澤倉庫<9304>の陸上運送サービスにおける最大の特徴は、トレーラーや大型車など豊富な車両と全国ネットの営業網を生かした大量ラウンド運行※による「幹線輸送」、自社開発の自動配車・輸配送システムなどによる「地域内の地場配送」の連携にある。さらに、特殊車を使用したバラ貨物輸送など多種多様な要請に応じることができる。これまで蓄積してきた豊富な経験・ノウハウを生かし、あらゆるニーズに対応する輸送方法と輸送ネットワークを構築している。
※ ラウンド運行:複数の輸送ルートを組み合わせて空車区間を減らし、効率的に輸送する手法。
同社は、運行車両をメーカーごとに手配するという非効率性を解消するため共同配送を行っている。全国各地で共同配送の拠点を運営、車両の共同使用を進めることで、積載効率向上や車両台数の削減、荷受け作業の効率化によるローコストオペレーションを推進している。また、物流事業においてはCO2排出削減、物流業界の2024年問題、激甚災害発生時のBCP※といった観点から、モーダルシフトへの注目度が高まっている。同社はグループ内にフェリー輸送を事業の柱とする日正運輸(株)、鉄道輸送を柱とする大宮通運(株)を保有しており、グループの機能としてモーダルシフトを顧客に提供できる体制を整えている。政府の後押しもあり、今後、大きな強みになると見られている。
※ BCP(Business Continuity Planning):自然災害やテロ、システム障害などの緊急事態における事業継続計画。
(3) 輸出入フォワーディングサービス
輸出入フォワーディングサービスとは、通関・輸出入海貨業務、貿易代行、国際輸送、国際一貫輸送などのことである。通関・輸出入海貨業務では、AEO(Authorized Economic Operator)認定通関業者として、熟練したスタッフやベテラン通関士を全国の主要な港や空港に配置し、日用品・アパレル・化学品・食料品・機械類など様々な商品の通関を行っている。また、プラント輸出に加え自由貿易協定やその他法令、再輸出、免税手続き、戻し税手続きといった専門的なノウハウが必要な通関に関しても、相談から申告手続きまでサポートすることができる。システム面では、自社システムとNACCS(Nippon Automated Cargo And Port Consolidated System:輸出入・港湾関連情報処理システム)との連携のほか、国内外の顧客とオンライン化を進めることで迅速で効率的なサービスを提供している。海上貨物の業務では、輸入貨物については輸出元での貨物の引取りから指定納入先まで、輸出貨物については貨物の引取りから梱包、海外引き渡し場所での据え付けまで、様々なサービスを一括して行える体制を整えている。なお商品の輸出入には、受発注業務やインボイス、パッキングリストなどの書類の作成、現地取引先とのスケジュール調整、官庁手続き、銀行手続きなど、物の移動以外に煩雑な手続きが伴う。同社は長年にわたる豊富な貿易実務経験により、顧客に代わってこうした手続きを行う貿易代行サービスも提供している。
海上国際輸送では、豊富なベース貨物と実績に基づき複数の船会社や混載会社、協力会社から競争力のある海上運賃を引き出し、出荷スケジュールに最適な輸送手段を提案している。B/L(船荷証券)は、同社が発行するHOUSE B/L、もしくは海上運賃の交渉・ブッキングを行うことで船会社が発行するB/L、いずれをも利用することが可能である。また、混載貨物(LCL)サービスとして、横浜から上海・香港向けの輸送サービスを提供している。航空国際輸送では、IATA(国際航空運送協会)の公認代理店として、精密機器から自動車部品、化学品原材料、食品・イベント輸送に至るまで幅広いサービスを提供している。また、(一社)国際フレイトフォワーダーズ協会(JIFFA)の正会員である同社は、中国・香港・ベトナム・フィリピンにある海外現地法人や提携代理店と連携しており、陸・海・空による複数の輸送手段を組み合わせることができる。このため、家電や精密機械、自動車部品などの輸送において、様々な企業に対して納期短縮やコスト低減を提案するなど、効率的で最適なDoor to Doorサービスを提供している。提携代理店は、北米、ヨーロッパ、アジア、オセアニア、ブラジル、サウジアラビア、南アフリカなどほぼ全世界をカバーしている。
(4) 海外事業
海外事業では中国、香港、ベトナム、フィリピンに現地法人を有する。中国では、自社車両や自社倉庫を有し、上海、広州、深?、武漢を基点に中国内陸部や北部の主要都市を結ぶネットワークを構築するなど、中国国内・域内物流の強化を進めている。中国大陸へのGate Way機能が低下している香港では、冷蔵・冷凍車両による日本食材のレストランや個人宅への宅配事業に入り込むなど、地場物流への参入を加速している。ベトナムでは、同社が90%出資する現地法人Shibusawa Logistics Vietnam Co.,Ltd.(SLV)がホーチミンを中心に輸出入フォワーディング業務を主に行っている。一方、約45%出資する持分法適用子会社VINAFCO JOINT STOCK CORPORATION(以下、VINAFCO)がカバーするベトナム全域の物流ネットワークを活用して、国内物流の強化も進めている。TDG-Shibusawa Logistics, Inc.は2022年6月にフィリピン・マニラで現地法人の営業を開始した。成長市場と言われる中国や東南アジアをドメインとする海外事業は、同社にとって一番の成長分野と言える。
(5) 港湾運送事業(船舶代理店/港湾荷役)
船舶代理店として船舶が効率的に入港できるよう、パイロット(水先案内人)やタグボートの手配から、海上保安庁、税関、検疫所、関係省庁等への諸手続き、B/L発行に至るまで広範囲にわたるサービスを提供することで、船会社をサポートしている。また、船内荷役やはしけ運送などの港湾運送業務でも多くの実績がある。特に在来船の船内荷役では、主要港での長年にわたる経験やノウハウを生かして、鋼材などの長尺物や穀物、重機、プラント貨物の積み卸しや積み付け、ラッシング(固縛)などの作業を安全かつ丁寧に行っている。
(6) 情報システムサービス
倉庫管理システム(WMS)、輸出入荷捌き・航空貨物システム、陸運配車システム、飲料専用WMSの4つのシステムをプラットフォーム化した高度な総合物流システムを有しており、陸・海・空ワンストップの総合物流サービスを提供している。このため、顧客の様々な物流特性や多様な要望、特殊な仕様に対して柔軟に対応することが可能で、それぞれの輸送モードや貨物管理に最適なシステムを提供している。倉庫管理システムは、様々な商品特性ごとに最適化されたシステムで、迅速確実かつ効率的に在庫管理を行うことができる。また、モバイル端末などを活用することで作業の効率化、低コスト化を実現している。顧客向けには、Webサービスによるリアルタイム在庫照会やダウンロード、各種EDI連携といった機能を標準で備えている。
輸出入荷捌き・航空貨物システムは、NVOCC(Non Vessel Operating Common Carrier:船舶や航空機を持たない貨物利用運送事業者)・海貨・航空貨物・通関業務の各システムを1つのシステムにシームレスに統合したもので、NACCSとも連携している。顧客の輸出入に関わる情報や進捗状況がリアルタイムで共有できるため、迅速で一元的なサービスを提供することが可能である。WebサービスによりNACCS実績情報(許可データなど)や各種トレース情報の提供も可能となっている。陸運配車システムでは、全国の配車情報を一括管理して無駄のない効率的な車両運行を行うことで、競争力のある運賃を提示することができる。さらに、貨物トレースシステム・GPS機能・自動配車システムなど最新機能と連携することで、顧客ニーズに即した高品質なサービスを提供している。
(7) その他のサービス
トランクルームサービス「シブサワトランクルーム」は、オフィス文書などの保管・閲覧・廃棄といったオフィス文書のライフサイクルを管理するサービスである。文書管理とオフィススペースマネジメントによるコスト削減を提案する一方、情報セキュリティマネジメントシステムの認証を取得するなどセキュリティも万全である。また、同社は引越優良認定事業者として長年の実績と経験を持っており、引越サービスでは安心・安全・確実・迅速かつ低コストでオフィス移転やオフィスレイアウト変更といったサービスを提供している。個人の引越や家財の保管も行っている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
《SI》
提供:フィスコ