三和HD Research Memo(5):日本は堅調、海外も大幅増収増益で好決算に貢献
■三和ホールディングス<5929>の業績の動向
2. セクター別の動向
(1) 日本
グループの基幹事業を担う日本(三和シヤッター工業と国内子会社)の2023年3月期業績は、売上高2,529億円(前期比7.0%増)、営業利益247.1億円(同1.0%増)と堅調で、グループ全体の業績を下支えした。特に工場、物流倉庫向けの重量シャッターやドア等の基幹商品およびメンテ・サービスが堅調に推移した。鋼材価格や各種部材等の材料価格上昇が予想以上に大きかったが、価格上昇分の売価転嫁に注力したことにより小幅増益を確保した。この結果、日本の営業利益率は前期の10.4%から9.8%に低下したものの、引き続き高い利益率を維持している。日本では、製造、施工から、メンテ・サービスまでの事業を一貫して行っていることが、高い利益率の理由のようだ。
(2) 米州(ODC)
米国事業を担うODCの業績は、売上高2,192億円(前期比57.5%増)、営業利益290.5億円(同246.7%増)と、セクター内で最大の増収増益となり、利益水準は日本を上回った。サプライチェーン問題の改善による数量増と、原材料価格上昇分の売価転嫁が広く浸透した結果であった。原材料価格は既に値下がりに転じている一方、販売価格については想定していた下落は起きず、修正予想以上の結果を残すことがでた。米国では、日本と異なりサービス事業が少ないこと等から従来は利益率が低かったが、当期の営業利益率は13.3%と前期の6.0%から大きく上昇し、最も収益性の高いセクターとなった。
(3) 欧州(NF)
欧州事業を担うNFでは、売上高1,055億円(前期比22.9%増)、営業利益42.7億円(同8.5%増)と増収増益で、堅調な業績であった。欧州ではウクライナ問題等から市況が悪化し、厳しい受注環境となったが、原材料価格やエネルギーコスト上昇分の売価転嫁と数量増により増益を確保した。営業利益率は、前期の4.6%から4.0%へと低下した。欧州では国別にコストがかかることから、低めの利益率にとどまっているようだ。
(4) アジア
2020年3月期より連結対象となったアジアでは、売上高は110億円(前期比43.4%増)、営業利益2.6億円(同115.6%増)と、好調であった。アジアでは、コロナ禍により上海でのロックダウンがあったが、香港や台湾が順調に推移したことで、利益額は小さいものの大幅増益となった。営業利益率も前期の1.6%から2.3%に上昇したが、他セクターに比べて低水準である。
3. 財務状況と経営指標
2023年3月期末の総資産は、主に売上債権や棚卸資産の増加等により、前期末比56,037百万円増の442,274百万円となった。負債は、主に仕入債務やリース債務の増加等により、同16,998百万円増の199,923百万円となった。純資産は、主に利益剰余金と為替換算調整勘定の増加等により、同39,039百万円増の242,350百万円となった。
以上の結果、自己資本比率は前期末比2.2ポイント上昇の54.4%で、東証1部 2022年3月期決算短信集計の全産業平均31.0%を大きく上回る。加えてDEレシオも前期の0.23倍から0.20倍に低下しており、財務上は十分な安全性を確保している。また、同社のROA(総資産経常利益率)は12.7%、ROE(自己資本当期純利益率)も15.0%で、いずれも東証1部全産業平均の4.8%、7.2%を大きく上回り、高い収益力も兼ね備えていると評価できる。
2023年3月期のキャッシュ・フローの概況を見ると、2023年3月期末における現金及び現金同等物は、前期末に比べ9,756百万円増の71,153百万円となった。
営業活動によるキャッシュ・フローは、主に税金等調整前当期純利益の計上などにより34,425百万円の資金増加(前期は20,526百万円の資金増加)となった。投資活動によるキャッシュ・フローは、主に固定資産の取得により15,941百万円の資金減少(前期は21,353百万円の資金減少)であった。財務活動によるキャッシュ・フローは、主に配当金の支払などにより9,887百万円の資金減少(前期は27,363百万円の資金減少)となった。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)
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提供:フィスコ